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第 6 章 結論と今後の研究課題

第 1 節 結論

これまで日本の政府が企画してきた地域振興政策は、結果的にそのほとんどが有効では なかったが、ただ1つ「道の駅」事業だけは、有意義かつ効果的に運営されているように 見受けられる。

しかしながらその中には、抜群の集客力と売上高を達成して地域を活性化させ、マスコ ミに報道されるところがある一方で、低迷しているところもある。

本論文の目的は、「道の駅」が展開すべき地域振興に有効なマーケティング戦略のあり方 を探求し、そこで得られた知見に基づいて、事例地域の低迷する地域振興事業の改善策を 具体的に提案することにある。そのため関連する内外の文献を調査し、また実際の「道の 駅」に対する経営実態調査を行い、得られたデータを分析することにより、その方策につ いて考察した。

「道の駅」事業は「農山村地域の振興」という目標を有するものである。そこでまず、

国や地域の経済活性化に貢献するとされている、マーケティングやマーケティング戦略の、

意義と特性について考察した。マーケティングとは端的に定義付けると、「商品やサービス が売れて健全な長期最大利潤が得られるようになるための条件作りをして売ること」であ る。それゆえに農産物を対象にマーケティングを展開すると、それがよく売れるようにな るであろう。ついでながらマーケティング戦略とは、「経営目標を達成するための長期的・

総合的なマーケティング上の方策」という意味である。

地域振興は一朝一夕に達成できるものではない。それには、何年もの年月を要するので、

長期的取り組みが必要である。しかもそれは、たとえば役場の産業振興課のみで達成でき るものではない。地域が総力をあげて地域ぐるみで取り組むべきものである。したがって 農産物がよく売れて農家の所得が増え、彼らの農業に対する就業意欲が高まるような地域 振興を図るには、農産物を対象とするマーケティング戦略の展開が求められる。

マーケティングには、大別して、その主体者の営利追求・蓄積型のマネジリアル・マー ケティングと、営利追求は二の次とし、社会問題の解決(ミッション追求)を主目的とす るソーシャル・マーケティングの 2 種類がある。したがって地域振興というミッションの 達成を追求するには、ソーシャル・マーケティングの精神を基盤とするマーケティング戦

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上記のようなマーケティング戦略を展開する企業は、売上高が伸び、そのライバル企業 も「競争戦略」を追求するため売上高が拡大する。かくてそれらの企業が属する特定産業 が発展することになる。他の産業においても、その産業内の各企業によって知恵に満ちた マーティングやマーケティング戦略が展開されると、その産業も発展することになる。こ れがマーケティングやマーケティング戦略が、国や地域の産業振興をもたらすメカニズム である。

レディとキャンベルは、日本が高度経済成長に成功した要因を、マーケティング戦略の 視点から追求し、その成功のメカニズムを示す 9 つの構成要素からなる「統合的マクロ・

行動学的モデル」を構築した。このモデルは地域振興のためにも援用できるものであると 判断し、このモデルのメカニズムを日本の農山村地域の振興に適用した場合の展開手法に ついて考察した。その結果、事例分析により、このモデルの「地域振興」に対する有効性 が実証された。

なお上記モデルの中で、レディとキャンベルが提示する、優れた日本人経営者に見られ る 3 種類の行動特性、すなわち彼らの用語によると、①「態度」、②「達成志向」、③「応 用力」が、九州における過疎農山村の地域振興に成功している 3 地域のリーダー(すなわ ち、宮崎県綾町の郷田實町長、同県南郷村の田原正人村長、大分県大山町の八幡治美町長)

に共通していることが判明した。

しかしながら、上記 3 首長は上記の 3 行動特性に加え、①「当該地域に対する強烈な思 い入れと危機感」、②「洞察力・決断力とリーダーシップ」、③「チャレンジ精神と粘り強 さ」、そして④「マ-ティング戦略的発想」という 4 種類の資質・行動特性に富んでいるこ とも判明した。したがって日本における「農山村地域」の地域振興を図るためには、その 事業の推進機関のリーダー(通常は首長)に、上記の合計 7 つの資質・行動特性が備わっ ていることが必要である(望ましい)ということになる。

日本の農山村地域における産業の振興手段としては、①外部から企業を誘致する「外発 型」と、②地域の内部から地域の産業を創出する型、すなわち、地域内に顕在的あるいは 潜在的に存在する特産品事業や観光事業につながる資源を活用して地域産業の創出・振興 を図る「内発型」、の 2 つの手法が知られている。

外発型の場合は、結果的に長い目でみると、地域の産業経済に対する貢献度が極めて低 いといった重大な欠点を持つ場合が多い。それに対して「内発型」は、地域内に存在する

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農産品や観光資源等を活用して産業起こしを図るものであるだけに、それが活発化してく ると農家収入が増加し、彼らの農業に対する取り組み意欲も向上し、地域経済の活性化が もたらされることになる。

したがって地域振興を図るためには、「内発型の産業振興」をモットーとし、経済の地域 内波及効果と地域内の各産業の長期的発展を図るべきである。ここで大切なことは、その 企画・実践に際し、①宮本や保母が提示する内発的発展論に求められる要件やそれが内包 する課題をクリアし、②かつ守友の提示するような地域振興に関する実践理論を踏まえた うえで、地域振興機能を有するマーケティング戦略の概念・手法を盛り込んだ「内発型地 域振興策」を展開すべきであるということである。

本論文では、そのような規範に基づく地域振興モデルを「農山村向け戦略的内発型発展 論」と呼んでいる。より具体的には、「農山村向け戦略的内発型発展論」とは、以下の 4 項 目の要件を備えたものである。

①自治体の長をリーダーとする地域ぐるみの組織的展開

②地域内の顕在的・潜在的資源の活用による自前の発展努力

③政府による支援策の積極活用

④大都市等をターゲットにし農家に大幅な所得増をもたらす「戦略的6次産業」の創設

ここでいう④の「戦略的 6 次産業」は、通常の「第 6 次産業」(すなわち単に当該地域内 における第1次産業、第 2 次産業、第 3 次産業を組み合わせたもの)とは異なり、農産物 が多く売れて農家により多くの収入がもたらされ農家の生きがいがより高揚し、そして地 域の経済がより一層活性化するように、マーケティング戦略の概念と手法を織り込んで組 み立てた「第6次産業」である。

すなわち上記の「戦略的6次産業」は次の 6 項目の特徴を有する。○第 3 次産業を「核 的事業主体」とし、「特産品事業」と「地域観光事業」の同時展開、○大都市をターゲット にする、○「競争戦略」と「成長戦略」の同時展開、○ソーシャル・マーケティングの見 地に立ったマーケティング戦略、○地域内の自然環境保全を図る、○必要な運営資金は「戦 略的 6 次産業」からの収益金で賄う。

本論文でとりあげている「道の駅」が有効に機能するためには、それが「農山村向け戦 略的内発型発展論」および「戦略的 6 次産業」の概念に即したものであるべきである。そ れを検証するために、実際に「道の駅」の経営実態について調査を行った。その結果は次

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実態調査の対象は、福岡県の旧産炭地で過疎化が進む筑豊地域における、3 つの「道の駅」

である。それらは平成 21 年、22 年、23 年と、ほぼ同時期に設置された若い「道の駅」で あり、筑豊地域のほぼ中心部に、正三角形の頂点に当るような位置関係で設立されている。

その経営実態を調べてみると次のことが判明した。

「道の駅」は地方自治体の長によって企画され、国土交通省との共同出資で、その敷地、

建物、および付随施設が用意される。「道の駅」を利用した地域振興事業は、その中に設け られた「直売所」の事業主体がリーダーとなり、農家群との有機的な連携の下で、主とし て当該地域内で取れた農産品およびその加工品の販売事業を自前で展開するものである。

実態調査によると、上記 3 駅ともその手法がとられている。そして確かに 3 駅とも「戦略 的 6 次産業」を構築し、その推進を図っている。

以上より、上記 3 つの「道の駅」の事業は「農山村向け戦略的内発型発展論」に則った ものであるといえる。ただし「戦略的 6 次産業」の中身については、3 駅の間に開きがあり、

マーケティング戦略に巧拙がみられるのである。

すなわち平成 22 年にできた「道の駅」「おおとう桜街道」X は他の 2 駅、Y と Z に比べ、

群を抜く経営業績を達成している。若干の課題はあるが、その秘訣は以下の通りである。

1、卓越した事業コンセプトと、その的確な具現化

「おおとう桜街道」は事業コンセプトを「オール年代の家族みんなで楽しめるミニ観光 スポット」とし、そのために地域特産品事業(農産物直売事業)と、地域観光事業(温泉 事業と子供向け電動遊具事業)を併業することにした。

2、魅力的かつ的確な小売マーケティング・ミックス

「おおとう桜街道」は、その事業コンセプトに最適で競争優位性のある小売マーケティ ング・ミックスを、次のように構築している。

(1)立地

農産物直売事業と地域観光事業と、その駐車場スペース用に安くて広い土地が必要であ るため、幹線道路から離れたところに広大な用地を確保した。

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