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本研究では従来までの電力制御システムであるHEMS の課題を改善し,簡易性・堅牢 性・柔軟性をコンセプトとした新たなアルゴリズムを考案した。そのアルゴリズムを制御 する手段として,スマートメーターから家電に対して目標上限値𝑃𝑡と測定値𝑃𝑚をひとまと めとしたパケットを一方向通信として送信し,各家電が受信したパケットに基づいて独自 の判断で制御方法を決めるシステムとした。制御方法として,家電が電力削減を強いられ る要因から「起動時」と「稼働中」の二つにアルゴリズムを分け,その要因ごとの制御方 法を区別化した。次に家電の運転終了をユーザーが待望しているか否かによって家電を分 類し,前者をPower Control Type,後者をTime Control Type と名付け,それぞれのア ルゴリズムを示した。特にPower Control Type では,人間が持つ感覚と実際の物理量の 違いを利用して,「人間に気付かれにくい電力制御」を提案した。最後に,提案したアル ゴリズムをシミュレータと実験の両方から検証し,アルゴリズム通りの結果が得られたこ とから,このアルゴリズムを用いることで家庭内の瞬間総消費電力を抑えられることが明 らかとなった。

今後の課題として,発電装置や蓄電装置など様々な因子が加わってきたときのアルゴリ ズムの考案や,家庭内の電力制御に固執せず,工場や農業の工場栽培に応用していくこと を考えている。

IoT を用いた

インテリジェント農作物育成環境解析

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1. 序論

近年,日本の農業は衰退産業と言われている。図1.1をみると分かるように農業就業者の 高齢化や就業者数の減少が大変深刻になってきているのは一目瞭然である。しかし,こうい った事態を引き起こしているのには原因がある。それは,農作物の育成方法にあると筆者は 考えている。現在の育成方法は生産者の経験と勘に依存しており,農作物を育成するための マニュアルが存在しない。そのため,ひとたび農業に参入したとしても,農作物育成を効率 的に行えるようになるのには長い年月を要してしまう。これが,新たな就業者を加わり辛く させる原因になっている。この状況を変えるには,経験や勘に依存しない合理的なマニュア ルが必要不可欠であると考えられる。

そこで我々の研究では,JA全農ぐんま様よりきゅうりの栽培環境データを提供いただき,

それらを多変量解析および人工知能(AI)を用いて統計的に解析していくことで,農作物育 成において必要な環境因子を見つける。加えて,それらの環境因子の最適値を求めることで 高収量化を目指す。このように,栽培環境を定量的に評価することで経験や勘に依存しない 合理的な作物育成環境を構築していく。

図1.1:農業就業人口と平均年齢の推移

(農林水産省HPよりデータを引用)

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