第七章 結論
本研究では,鋼製薄板を耐震要素兼新規外装材として用いる耐震補強工法について,2013年度 補強例への適用に際して行った工法の性能評価を実験と解析の両面から行った。また,経済性,
施工性の向上を目的とした改良案の提案を行い,改良後の工法の有限要素法を用いて性能を解析 的に評価した。以降に,本研究で得られた知見をまとめる。
1)開発工法の実大耐震壁水平耐力試験では,木架構に鋼板を留め付けた試験体が壁倍率4.5であ ることを確認した。また,木架構に合板,石膏ボード,鋼板を留め付けた試験体は壁倍率の算 出は不可能であったが,壁倍率7相当を有していると推定された。
2)耐震壁の有限要素法を用いた静的増分解析では,壁実験結果と比べて初期剛性が低い値にな った。一方,接合部の変形を無視した解析結果の初期剛性は実験値によく一致することを確認 し,同接合部の再評価の必要性を示した。
3)耐震壁の有限要素法を用いた準静的解析では,変形角7.0%まで検討できており,概ね良好な 精度で評価できることを確認した。実験と同様の崩壊形を示し,座屈モードも概ね一致してい ることが確認できた。また,ビス接合部の耐力を2倍にした場合,γ=7.0%時の耐震壁耐力が34%
大きくなることを確認した。鋼板のヤング係数を80%に低減させた場合,及び降伏強度を20%
割増させた場合はそれぞれ,耐力が5%低下,6%増加することを確認した。
4)工法の改良を行うために,開発工法の適用対象の整理を目的とした既存木造住宅の耐震化に 関する既往文献調査及び木造密集地域における住宅劣化状態調査を行った。耐震性能が不足し ている住宅においても構造的な劣化又は破損を有する住宅は比較的少数であり,経済的な理由 で耐震補強が行えない傾向にあること,開発工法の適用対象になりうる住宅はモルタル外装仕 上げである場合が多いこと,基礎の割裂等の損傷が見られる住宅は比較的少数であり,立ち上 がりが200㎜以上確保できている場合が多いこと等を確認した。
5)調査結果を踏まえて,経済性,施工性向上を図った工法の改良案を提示した。建物外周に架 構及び基礎を新設せずに鋼板を直接既存架構及び基礎に留め付けることを考え,既存仕上げの 上から防水テープでゴムスペーサーを貼り付け,鋼板を施工する工法とした。
6)改良案における鋼製薄板について有限要素法による解析を行い,断面の諸寸法の違いが鋼板 のせん断耐力に及ぼす影響を確認した。検討断面例の範囲内においては,断面の凸部の幅を小 さくする,波高を低くする等の操作により,鋼板全体のせん断耐力が向上することが確認でき た。その知見に基づいて,改良後工法で用いる働き巾909㎜の鋼板の断面設計を行い,性能評 価を行った。
7)既存仕上げを含めた改良案耐震壁の地震水平力作用時の挙動を解析的に評価した。既存仕上 げの状態に関わらず,耐震壁モデル解析結果は既往のモルタル壁耐力実験結果と比べて,高い 耐力を有していることが確認でき,開発工法によって補強効果が得られる可能性を示した。ま た,モルタル壁の典型的な崩壊形であるタッカー釘の破断によるモルタルの剥落を防止するこ とで,モルタル壁の耐力向上が望める可能性を示した。
参考文献
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pp981-982,1970.9
謝辞
本研究を進めるにあたり,多くの方のご指導,ご助言を頂きました。ここに感謝の意を表しま す。
指導教員である高木次郎准教授に心より感謝致します。研究内容だけでなく,物事への取り組 み方,考え方,資料作成方法や他人への説明方法など,研究に取り組むための基本的なことから ご指導頂きました。日々のご指導の中で得たことは今後私が社会人となるうえでの礎となってい くと思います。また,進路に迷っていたときに親身に相談に載って頂き,且つお力を貸して頂き,
ありがとうございました。また,遠藤俊貴助教授には,実験計画等において,より学生に近い立 場で相談に載って頂き,的確な助言を頂きました。ありがとうございました。
日本鐵板株式会社様には,研究を通して多くのご協力を頂きました。特に営業総括部技術企画 グループ飯野和近様,湯本茂樹様には定期的に勉強会の機会を設けて頂き,多くの貴重な意見を 頂きました。心より感謝致します。
高木研究室の先輩方,同期,後輩には,実験等でご協力頂いただいただけでなく,日々の研究 室生活でも大変お世話になりました。特に先輩方にはいつも弱音を吐いては励まされてばかりで,
ご迷惑をおかけしましたが,真面目で,笑いの絶えないこの研究室で過ごせて幸せな 3 年間でし た。また,本年度,共同部屋となった多幾山研究室の皆様にもお世話になりました。おかげで,
昼夜問わず,楽しい研究室生活を送ることができました。
本年度共同で研究を進めてくれた安田裕俊君と大津達郎君には心より感謝致します。安田君と は 2 年間共に研究を進めてきました。日々成長する姿が嬉しく,いつも頼りにしていました。大 津君とは 1 年間共に研究を進めてきました。私の拙い指示を真剣に聞いてくれる姿に何度も救わ れました。本年度共同で研究を進めてくれたのが,逞しく,頼れる 2 人だったおかげで,私は楽 しく,自分自身のやりたい研究ができました。本当に感謝しております。
3 年間という短い期間でしたが,研究を通して,物事を追求して考える楽しさや大変さを経験 することができました。本研究を通して関わった全ての方に感謝致します。
最後に大学院に通いたいという私のわがままを受け入れてくれて,いつも遠い地元で温かく見 守り,支えてくれた両親,祖父母に感謝の意を記し,結びと致します。ありがとうございました。
2015 年 2 月 9 日 浅沼愛実
付録 1.実大耐震壁耐力評価試験図面
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