5.1. まとめ
本研究では基礎律動を用いたユーザの楽曲に対する印象の類似性に基づく音楽分類 の方法の確立を目的に、楽曲聴取中の基礎律動データに対してSVMを用いて分類した。
内挿予測では脳波計museの4電極を用いて、ラジアル基底関数カーネルを用いた場合 が多くの被験者で最も高い分類精度となった。その分類精度は平均 92.81[%]標準偏差 2.14と非常に高かった。このことからSVMによる分類は有効であることが示唆された。
また、各電極の単位時間あたりのパワーの総和で各周波数のパワーを割る正規化が有効 であるということが、分類精度に変化が見られなかったことから示唆された。
実際に音楽鑑賞の際の利用を想定し、学習データに含まれない楽曲を用いた外挿予測 を検討した。Track1-Track5 を聴取した際の基礎律動データを学習した学習器を用いて Track6,Track7 を聴取した際の基礎律動データを分類した。分類精度は被験者ごと、楽 曲ごとにおおきく異なった。この要因として学習データのパターンが不足していた事が あげられる。そのため楽曲数を 15 楽曲に増加させて検証したが分類精度の向上は見ら れなかった。学習データの 15 楽曲では不十分であり、更に楽曲を増加させることで分 類精度が向上する事が予想される。
5.2. 今後の課題
5.2.1. 聴取回数の削減、必要学習データ数の検討
Track1-Track5 を聴取する際、被験者は 3 回ずつ聴取した。これは学習データ数を十 分に確保するためであったが、複数回聴取した際に毎回同じ印象を受けるとは限らない。
そのため、アンケートで楽曲の印象を正しく取得できなかった可能性がある。また、実 際の利用を想定した際にはユーザに複数回楽曲を聴取させることは望ましくない。楽曲 の聴取回数は 1 回とし、楽曲数を増加することで学習データ数を確保する事が今後の課 題としてあげられる。
5.2.2. 聴取楽曲数の増加
外挿予測の結果から分類器が学習するデータのパターンが不足しており、15 楽曲で は不十分であることが、分類精度が高くないことの要因であると考えられる。そのため 学習器を生成する際の学習データはより多くの楽曲を聴取した際の基礎律動データを 用いることで外挿予測でも高い分類精度を得ることができると予測される。
5.2.3. 他生体情報を追加した解析
本研究では基礎律動を用いて楽曲に対する印象の類似性に基づく楽曲分類を検討し た。基礎律動を用いた理由は、ユーザの音楽聴取を妨げることなく記録でき、生起する 情動反応を最も効率的に観測できる生体情報であると考えたためである。しかし、この 他にも心拍や鼻部温度などの生体情報もユーザの音楽聴取を妨げることなく記録でき る。瞳孔径と基礎律動を用いて映像の視聴時の視聴者の感情の推定が可能である[10]こ とが報告されている。ここでは瞳孔径、基礎律動いずれかを用いた場合では感情の推定 はできず、2つの生体情報を組み合わせた場合に感情の推定が可能となったと報告され ている。音楽に対する印象も基礎律動だけでなく他の生体情報を組み合わせることで高 い分類精度が得られる可能性がある。
謝辞
3 年間に渡りご指導いただいた亀山先生、菅沼先生に御礼申し上げます。また、多く の助言を下さった研究室のメンバーに感謝いたします。
参考文献一覧
[1]三木亮祐, 亀山渉, 菅沼睦, “基礎律動を用いた音楽分類に関する基礎的検討”, 電子
情報通信学会技術報告, HCS, 114(67), pp.211-216, 2014年5月
[2]河野悠平, 村中徳明, “脳波測定による感性評価に関する脳活動部位の推定”, 電子情
報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング, 110(355), pp.69-72, 2010年12月
[3]
砂原 一輝
,柴田 啓司
,稲積 泰宏
, “視覚の空間周波数が脳波に与える影響”, 電 子情報通信学会技術研究報告. IMQ, イメージ・メディア・クオリティ, 111(35), pp.25-28, 2011年5月[4]小川 宣洋, 満倉 靖恵, “ニューラルネットワークを用いた音楽聴取時の脳波解析(機
械学習によるバイオデータマインニング,一般)”, 電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング, 107(92), pp.5-9, 2007年6月
[5]http://www.choosemuse.com/(2016年2月1日最終確認)
[6]http://www.hmix.net/music_gallery/image/asian.htm(2016年2月1日最終確認)
[7]植草里奈, “基礎律動と印象評価を用いた楽曲の分類に関する研究”, 早稲田大学基幹
理工学部情報理工学科亀山研究室卒業論文, 2015年2月7日
[8]https://cran.r-project.org/web/packages/kernlab/kernlab.pdf(2016年2月1日最終 確認)
[9] 三木亮祐, 亀山渉, 菅沼睦, “基礎律動を楽曲印象の類似性に基づく楽曲分類”, 電子 情報通信学会, 2016年総合大会, 2016年3月(発表予定)
[10]犬束美咲, “映像視聴時の瞳孔径と基礎律動を用いた視聴者の反応と映像カテゴリ の対応関係分析に関する研究”, 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科亀山研究室卒業 論文, 2015年2月7日