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ルの作成方法や、カスタマイズを依頼した連成解析についての説明を述べた。5章での実験 内容を模擬した解析を行った。結果として、FEM解析により求めた変位量は実験値の4分 の1程度となってしまったが、変位拘束条件によるものだと判断できる。また、印加電流と 振動変位の関係性の傾向が同様であったため、解析結果は妥当であると判断できる。

第7章では、弾性係数のみ異なるRC供試体とモルタル供試体において加振レーダ法を適 応し振動変位を算出した。モルタル供試体については、かぶりと鉄筋径が同一で弾性係数の み異なる3種類の供試体を作成し、各々で振動変位を算出した。圧縮強度から算出した弾性 係数と鉄筋振動変位が逆比例する関係性を示した。また、仮説式に適当なパラメータを代入 し、W/C 35 %の弾性係数にフィッティングさせることで、他の2種類の弾性係数とも近似 する値となった。しかし、フィッティングするための定数を使用しない場合、推定弾性係数 は真値と比較して約1/200となってしまった。RC供試体については、かぶりと鉄筋径を変 えた8種類の供試体を作成し、振動変位を算出した。8種類の供試体のうち、6種類で概ね 振動変位と弾性係数が反比例の関係性をもつことが示された。結果より、とくにモルタルの ような均質な媒質では、加振レーダ法の振動変位から非接触的に弾性係数を推定できる可 能性が示唆された。

第8章では、FEM解析を用いて、モルタル供試体に対する加振レーダ法を模擬した解析 を行った。鉄筋径やかぶりを変更しての解析を予定していたが、健全状態モデルの解析結果 で得られた変位量はnmオーダとなった。つまり、仮説式のたて方としては正しいと考えら れる。しかし、加振レーダ法で算出される振動変位はμmオーダであるため、解析との結果 に大きな差がある。そこで、鉄筋とコンクリートの界面に 300 μm 程の界面層を作成した。

また、振動変位のオーダにフィッティングするべく、弾性係数をモルタルに対して1/105と した。これを脆弱層のある界面モデルと呼ぶ。結果として、変位量は数μmオーダとなり加 振レーダ法で算出される振動変位とオーダが一致した。これにより、弾性係数の変化により、

気泡や鉄筋とコンクリートの密着度といった鉄筋周囲の状況に依存するモデルが考えられ る。今後、界面状況を考慮していく必要がある。相対的には、FEM 解析においても弾性係 数と変位量に逆比例の関係があったことから、振動変位によって弾性係数を推定できる可 能性の示唆となった。

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9-2 今後の課題

加振レーダ法を用いて、実験的に算出される鉄筋振動変位と、コンクリートの弾性係数の 関係性を確認した。また、FEM 解析を用いて鉄筋変位量と弾性係数の関係を確認した。上 記より生じた課題は以下の通りである。

・ 鉄筋とコンクリートの界面状況の確認

本論文では、かぶりの部分での弾性係数と振動変位の関係性について検討を行った。し かし、FEM 解析により振動変位に影響を与えているものは、さらに微小な範囲での弾性係 数に依存する界面状況であることが考えられる。そこで、鉄筋の引き抜き試験により求めら れる密着度との関係性や、弾性係数によって変化する実際の界面状況をマイクロスコープ などで観察することが必要である。また、実験的には圧縮試験においてミクロンオーダで変 位が生じる荷重をかけたときの挙動の調査や、金属の界面がある状態での圧縮試験を行う ことで界面状況を明らかにしていく。

・ 弾性係数推定のための仮説式におけるパラメータの検証

実験とFEM解析において仮説式の妥当性は確認された。しかし、かぶりとして用いてい るパラメータは実際には鉄筋周囲の微小範囲であること、励磁コイルから力を受ける鉄筋 の等価断面積の値が確定していない問題点がある。後者においては、かぶりと鉄筋径が異な るモデルにおけるFEM解析により応力分布を確認することで検討していく必要がある。

・ 鉄筋径やかぶりを変えての連成解析

かぶりや鉄筋径を変更しての実験は供試体作成に手間がかかり効率が悪い。そこでFEM 解析を用いることで、自由にパラメータを変更して励磁コイルの加振力による鉄筋変位量 を求めることができる。しかし現状では、健全状態での解析で算出されるオーダが加振レー ダ法と一致しないためモデルの構築が必要である。界面状況等のパラメータを確認し、モデ ルを確定した上で鉄筋径やかぶりを変えての解析を行い、振動変位との関係性を検討して いく必要がある。

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参考文献

【1】碓氷淳,” 励磁コイル加振によるコンクリート内配線のドップラ映像系に関する基礎的 研究”,平成27年度群馬大学修士論文

【2】本多秀聡,” 加振レーダ法によるRC構造物内鉄筋腐食評価の基礎的研究”,平成29年度 群馬大学修士論文

【3】堀内亮太,” 加振レーダを用いたイメージングによる鉄筋部位の高精度振動変位推定”, 第18回コンクリート構造物の補修、補強、アップグレード論文報告集

謝辞

本研究を行うにあたり基礎から応用にわたる丁寧なご指導、ご協力を賜りました群馬大 学理工学部電子情報部門、三輪 空司 准教授に心より感謝申し上げます。

本研究を行うにあたり、群馬大学大学院理工学府電子情報部門 山越 芳樹教授、群馬大学 理工学府知能機械創製部門 丸山 真一 准教授から懇切丁寧なご指導、ご協力を賜りまし た。深く感謝申し上げます。

本研究を進める上で、供試体の打設にご協力いただきました群馬大学理工学府環境創生 理工学部門 小澤 満津雄 准教授、山本 哲 氏に心より感謝申し上げます。

本研究を進める上で、供試体の打設にご協力いただきました八戸工業大学土木建築工学 科コンクリート工学研究室 迫井 裕樹 准教授に心より感謝申し上げます。

本研究を進める上で、計測システム作成にあたり貴重なご意見を賜りました群馬大学、

遠坂 俊昭 客員教授に心より感謝申し上げます。

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