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結   論

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仙  田  幸  子

6.  結   論

本研究では,総じてみると,法律の成立や改正にともない,企業が仕事と育児の両立支援 制度を導入する動きが確認できた。しかし,現行の育児・介護休業法には限界があることも

21 子の看護休暇の最長利用期間

〜小学校就学前

就学の始期に小学校の 達するまで

小学校入学〜

小学校低学年

(3年生又は

10歳まで)

小学校低学年

〜小学校卒業

(又は12歳)

まで

小学校卒業

利用可能以降も 無回答・不明

2002 29.6 27.9 0.5 2.0 39.6 0.5

2003 30.9 26.0 3.4 1.2 38.1 0.4

2005 87.2 1.4 1.7 9.6 0.0 0.1

2008 91.4 2.2 2.0 4.1 0.3

2012 88.7 4.0 3.0 4.3

注) 「–」はその年次には選択肢がなかったことを示す

22 子の看護休暇の最長利用期間(制度の導入割合調整済み)

〜小学校就学前

小学校の就学の 始期に達する

まで

小学校入学〜

小学校低学年

(3年生又は

10歳まで)

低学年〜小学校 小学校卒業

(又は12歳)

まで

小学校卒業 利用可能以降も

無回答・不明 法定

以上 制度導入 企業割合

2002 3.1 2.9 0.0 0.2 4.1 0.1 4.3 10.3

2003 5.2 4.4 0.6 0.2 6.4 0.1 7.2 16.9

2005 30.0 0.5 0.6 3.3 0.0 0.0 3.9 34.4

2008 61.4 1.5 1.3 2.8 0.2 5.6 67.2

2012 68.7 3.1 2.3 3.3 8.8 77.5

同時にみえてきた。端的にいうと,ある仕事と育児の両立支援策を持つことが法律上は義務 であっても,施行規則でそれを念押ししても,やる気のない企業はやらないということ,そ のような企業に義務を果たさせる仕組みを,今のところ日本政府は持っていないということ だ。

たとえば,1991年というもっとも早い時点で義務となり,2009年に規則作成と就業規則 への明記が施行規則で定められた育児・介護休業法についてみてみよう。2012年に育児休 業制度の規定のある企業は94.2%である(表5)。言い換えると,5.8%の企業は,義務化か ら20年以上たとうと施行規則で念押ししようとも,育児・介護休業制度を導入しないので ある。約6%というのは,無視できるほど少なくはないだろう9

それでも育児休業制度は一番ましである。2004年に義務となり,2009年に規則作成と就 業規則への明記が施行規則で定められた子の看護休暇について制度を持つ企業は,2012年

で77.5%である。さらに,2009年に義務となった(が規則作成と就業規則への明記が施行

規則で定められていない)短時間勤務の措置を制度として持つ企業は2012年で81.7%,所 定外労働の免除の措置を制度として持つ企業は78.8%である。いずれも義務である子の看 護休暇,短時間勤務,所定外労働の免除を制度として持つ企業は,全体の8割程度で,2割 もの企業が,現時点では制度を持っていないのだ。

育休・介護休業法は,ながらく罰則規定を持たなかった。したがって,企業には,法律が あっても,それに従わないという選択肢があり得た。育休・介護休業法が罰則規定を持った のは2009年の改正時である。この改正で,勧告に従わない企業名の公表・虚偽報告等に対 する過料という罰則規定が設けられた。しかし,これらの罰則が適用された例は寡聞にして 知らない。事実上,現在でも,法律に従いたくなければ従わないことのリスクはほとんどな いといってよい。

むしろ,政府は,「くるみんマーク」のように,法律10によって義務付けられた基準を満 たしたことに対して,あたかも褒賞のように認定を与え(厚生労働省a),事業者名を公表 する(厚生労働省b)という方法で,企業に仕事と育児の両立を可能にする環境整備を動機 付けようとしているようだ。しかし,くるみんマークの認定を受けているのは,2015年で

2,398社である。一方,民間事業者は,従業員30人以上の事業所に限定しても323,729(平

成26年経済センサス─基礎調査 第5表)ある。くるみんマークの認定を受けるために,

従業員の仕事と家庭の両立支援策を講じようと動機づけられる企業は,企業全体に占める割

9 たとえば,義務教育ではない高等学校への進学率は2012年に98.4%である(平成25年度 学校基 本調査)。法律で義務とされている制度の普及率がそれよりも低いのである。

10 ここでは「次世代育成支援対策推進法」

合という点でいえば,ほとんどいない。

政府は,法律やさまざまな政治的動きによって企業に仕事と家庭の両立支援制度を持たせ ることに,おおまかにいえば成功している11。しかし,ここに仕事と家庭の両立支援制度を 持とうとしない企業が一定数いる。これらの企業に対しては,現在のところ,政府は,法律 を遵守させるための有効な手立てを持っていないように見える。少なくとも,罰則規定を設 けても実行しないこと,法律を遵守した制度を持つことに対して認定を与える仕組みを設け ることでは,これらの企業が育児・介護休業法を遵守するにはならないようである。

引用文献

Senda, Yukiko (2015) “Childbearing and careers of Japanese women born in the 1960s : a life course that brought unintended low fertility” Springer

大村賢三(2011) 『こうして法律は成長した 回想 育児休業法(後編)』早稲田出版 神田遵(2008) 『均等法・母性保護・育児介護休業 Q&A』労務行政

厚生労働省a「くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/(2016 年5月5日閲覧)

厚生労働省b「くるみん認定及びプラチナくるみん認定企業名都道府県別一覧」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/jisedai/kijun tekigou/index.html(2016年5月5日閲覧)

産業総合研究所(1995) 『介護休業ハンドブック』経営書院

仙田幸子(2016) 「企業が女性を活用しない理由(1)女性雇用管理基本調査の結果から」『人 間情報学研究』21, 19-45

野城尚代(2013) 「育児休業取得率をめぐる動向: 政策的な観点から」『東洋大学人間科学総 合研究所紀要』15, 101-113

矢辺学(1994) 「育児休業をめぐる諸問題」『比較法制研究』17, 33-45 吉川照芳(2006) 『わかりやすい育児・介護休業法』経営書院

労働基準調査会(1986) 『決定版 男女雇用機会均等法と改正労働基準法』労働基準調査会 労働省女性局女性政策課(1997) 『改正 男女雇用機会均等法 労働基準法 育児・介護休業

法』労働基準調査会

労働省女性局(1998) 『改正 男女雇用機会均等法 労働基準法 育児・介護休業法 決定版』

労働基準調査会

労働新聞社(2010) 『わかりやすい育児介護休業法』労働新聞社 労働省婦人局婦人福祉課(1991) 『わかりやすい育児休業法』有斐閣

労働省婦人局婦人福祉課(1996) 『育児・介護休業法によるよくわかる介護休業制度』労働新 聞社

労働法令研究会(2002) 『新訂 育児・介護休業法便覧』労働法令教会

11 各種制度の導入率という観点からいえば,8割ほどの企業については,といえるかもしれない。

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