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本研究により、Suv39h1-CD が強い核酸結合能を持つことを見出した。さらに 培養細胞を用いた解析から、Suv39h1 が実際に CD を介してセントロメア近傍か ら発現している major satellite RNA と結合することを見出した。Suv39h1 のタ ーゲティング機能はこれまでにほとんど報告がされていないことから、本研究 は哺乳類の構成的ヘテロクロマチン形成の確立機構の解明の糸口になることが 期待される。また、本研究によって、過去にほとんど明らかになっていなかっ た、セントロメア近傍から発現する major satellite RNA の新たな機能を発見 することができたと考えられる。

クロマチン分画法によって Suv39h1 の大半はクロマチン画分に存在するとい うことを見出した(図 2-5)。すなわち Suv39h1 と結合している major satellite RNA の大半もクロマチン上に存在しているということが考えられる。また、

Suv39h1-CD の RNA 結合能が安定的にヘテロクロマチン領域に結合するために重 要な役割を果たすことを出した。これらのことから Suv39-CD の RNA 結合能及び クロマチン上の major satellite RNA は、へテロクロマチンの維持機構にも重 要な役割を果たしていることが明らかになった。

Suv39h1 の RNA 結合能が自身の標的クロマチン領域へのターゲティングに重要 であることを見出したが、RNA 結合変異体を発現させた細胞の DAPI-dense 領域 の H3K9me3 は、発現 6 日後には野生型と同等まで回復するということが分かっ た。しかし今回の解析は major satellite 領域以外の領域にどのような影響が あるのかは解析をしていない。すなわち RNA もしくは H3K9me3 と結合できない 変異体はセントロメア近傍を正確に認識できず、それ以外の領域の H3K9 をメチ ル化している可能性があると考えられる。事実、図 2-6 で RNA 結合及び H3K9me3 結合変異体 Suv39h1 は野生型とは異なり、ユークロマチン領域にも局在すると いう結果を得た。今回は解析を遂行しなかったが、変異体を用いた ChIP-seq 等 でゲノムワイドに Suv39h1 及び H3K9me3 の局在を解析することによって、

Suv39h1-CD の RNA 結合能のさらなる重要性が見出されるであろう。また、以上 のことから Suv39h1-CD の major satellite RNA との結合はセントロメア近傍領 域だけに正確にメチル化を導入するために必須な機能であることが考えられる。

今後、Suv39h1 だけに限らずへテロクロマチン因子の標的クロマチン領域への結 合の分子機構を解析する上で、major satellite RNA との結合を解析することが 重要視されるであろう。

本研究で CBX2 の SR 領域が CK2 によってリン酸化され、さらにそのリン酸化

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が H3K27me3 ペプチド及びヌクレオソームへの結合特異性を高めることを見出し た。また、当研究室の以前の報告で、HP1αの CK2 によるリン酸化が同様な制御 機構を持つことを見出している。これらのことから、CD タンパク質が核酸結合 能を持ち、リン酸化によってヌクレオソームへの結合特異性を制御するという 分子機構は非常に保存されていると考えられる。また、本研究では HEK293T 細 胞株を用いて解析を行ったが、リン酸化されていない CBX2 はほとんど確認をす ることができなかった(図 3-2)。しかし、他の細胞種やマウスの組織ではリン 酸化状態は異なることが予想される(Noguchi et al., 2002)。したがって CBX2 のリン酸化抗体等で詳細な解析を行えば CBX2 の分子機能のさらなる解明につな がることが期待できる。

CBX2 は、一般的に PRC2 が導入した H3K27me3 に CD を介して結合することによ って PRC1 タンパク質群を呼び込み、条件的へテロクロマチン構造を形成すると 考えられている。しかし、過去の生化学的な研究結果では、CBX2 の H3K27me3 結 合は HP1 の H3K9me3 結合と比較して非常に弱く、CD の結合だけでは不十分だと いうことが示唆されていた。本研究によって明らかになった AT の核酸結合能は CBX2-CD の弱いメチル化ヒストン結合能を補い、協調的に働いて標的クロマチン 領域に結合しているということが示唆されている。また、図 3-6 のゲルシフト アッセイの結果より、CBX2 は RNA と相互作用をすることを見出した。実際に細 胞内で RNA と結合するかの検討は行っていないが、CD タンパク質がノンコーデ ィング RNA と結合することがいくつも報告されていることから、CBX2 が細胞内 で RNA と結合していることは十分に考えられる。今後、CBX2 と RNA との結合が 明らかになることで CBX2 のクロマチン結合のさらなる解明につながることが期 待される。

構成的及び条件的へテロクロマチンは一般的には同じ領域で構造を取ること はない。しかし過去の興味深い報告で、Suv39h 欠損細胞ではセントロメア近傍 の major satellite 領域に H3K27me3 が集積し、Cbx2 も結合していることが報告 されている (Tardat et al., 2015)。この現象は Suv39h 欠損によるへテロクロ マチンの破綻から凝縮構造を維持しようとする機能が働いているため引き起こ されると考えられるが、詳細な分子機構は不明である。本研究によって Suv39h1 が major satellite RNA によってリクルートされること、CBX2 が RNA 結合能を 持つことが見出された。したがって Suv39h 欠損細胞では Cbx2 が major satellite RNA と結合し、セントロメア近傍にリクルートされている可能性は十分にあると

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考えられる。本研究は Suv39h1、PRC タンパク質、major satellite RNA の関係 性を明らかにする糸口になることが期待される。

本研究によって marjor satellite RNA 及び H3K9me3 結合能が Suv39h1 のクロ マチン結合に重要な役割を果たしていることを見出した。一方で、発生や分化 段階で形成される条件的ヘテロクロマチン形成に必須である H3K27 のトリメチ ル化酵素群の PRC2 も、ノンコーディング RNA によって標的領域にリクルートさ れると考えられている (Aranda et al., 2015)。さらに本研究によって、CBX2 は HP1αと同様に、CK2 によるリン酸化がメチル化された H3 を含むヌクレオソー ムの結合特異性に重要な役割を果たしていることを明らかにした。これらのこ とから、構成的及び条件的ヘテロクロマチンは、因子は異なるが、共通の分子 機構によって凝縮構造を形成していると考えられる。今後、ヘテロクロマチン 形成の分子機構の解析には核酸結合やタンパク質の化学修飾を考慮することが 重要であると考えられる。

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研究業績

参加学会一覧

1. 川口隆之、町田晋一、村越大夢、胡桃坂仁志、中山潤一 CBX2によるH3K27me3ヌクレオソーム認識の分子機構

名市大エピジェネティクス研究会 合同リトリート、2016年9月、愛知、口 頭発表

2. 川口隆之、白井温子、村松大輔、石田真由美、眞貝洋一、中山潤一 ヒストンメチル化酵素Suv39h1によるクロマチン制御機構の解明 第 7 回高次クロマチン研究会、島根大学、2016 年 8 月、口頭発表

3. 川口隆之、町田晋一、村越大夢、胡桃坂仁志、中山潤一

クロモドメインタンパク質 CBX2 の核酸結合能とその機能の解析 第 38 回日本分子生物学会、神戸、2015 年 12 月、1P0622

4. 川口隆之、町田晋一、村越大夢、胡桃坂仁志、中山潤一 CBX2 による H3K27me3 ヌクレオソーム認識の分子機構

名市大エピジェネティクス研究会 合同リトリート、豊田、2015 年 10 月、

口頭発表

5. 川口隆之、町田晋一、村越大夢、胡桃坂仁志、中山潤一 CBX2 による H3K27me3 ヌクレオソーム認識の分子機構

第 6 回高次クロマチン研究会、明星大学、2015 年 9 月、口頭発表

6. Takayuki Kawaguchi, Shinichi Machida, Hiromu Murakoshi, Hitoshi Kurumizaka, and Jun-ichi Nakayama

Mechanisms of H3K27me3-nucleosome binding by CBX2

International Symposium『Non-coding DNA and Chromosomal Integrity』

August 2015, Awaji island, Japan, P-21

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7. 川口隆之、町田晋一、村越大夢、胡桃坂仁志、中山潤一 クロモドメインタンパク質 CBX2 の機能解析

第 5 回高次クロマチン研究会、北海道大学、2014 年 9 月、口頭発表

8. 川口隆之、町田晋一、村越大夢、胡桃坂仁志、中山潤一 クロモドメインタンパク質 hsCBX2 の機能解析

第 1 回名市大エピジェネティクス研究会、長野、2014 年 9 月、口頭発表

9. 川口隆之、白井温子、村松大輔、石田真由美、眞貝洋一、中山潤一

Suv39h1のヘテロクロマチン局在には自身のクロモドメインを介した核酸 結合が重要な役割を果たす

第8回日本エピジェネティクス研究会、2014年5月、一橋講堂、P-114

関連発表論文一覧

Shirai A*, Kawaguchi T*, Shimojo H, Muramatsu D, Ishida-Yonetani M, Nishimura Y, Kimura H, Nakayama JI and Shinkai Y. Impact of nucleic acid and methylated H3K9 binding activities of Suv39h1 on its heterochromatin assembly. eLIFE, accepted. *Equal contribution.

Kawaguchi T, Machida S, Kurumizaka H, Hideaki Tagami and Nakayama J.

Phosphorylation of CBX2 controls its nucleosome-binding specificity.

Journal of Biochemistry, in press.

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