に対して指摘されている事項について検討した。さらに、実際に国際財務報告基準が適用 されている企業について実態調査を行い、研究開発投資の一部を資産計上するにあたって、
企業ごと業種ごとに一定の研究開発投資の資産化に傾向があるのか、そのような傾向があ るとすればなぜなのかについて検討した。そして、この実態調査を踏まえ、研究開発投資 の一部を資産化する会計処理についてどのような問題点が考えられるのかについて考察を 行った。
この考察から、研究開発投資のうち、資産性を有する一定のものを資産計上すべきであ ると明確に結論付けることはできないという結論に至った。
資産計上すると結論付けできない理由としては、将来の経済的便益の不確実性や、研究 開発投資のうち資産性を有する部分が存在すると考えられても、その部分をどのように取 り出すのかという問題に対して、明確な答えを導くことができなかったためである。国際 財務報告基準においては、研究開発投資に資産性を認め、一定の要件を定め、その要件を 満たす開発活動については、資産計上すると定めている。しかし、この要件についても、
経営者の恣意性が介入する余地が十分に存在し、会計的操作に使われる恐れがあるとの指 摘もある。
また、実際に適用している企業を見てみると、①高い割合で資産化できている企業、② 資産化している企業や資産化していない企業が混在しその資産化割合も混在化している業 種、③資産化していてもほぼ0に近いか資産化していない業種分類されることがわかった。
これを見る限り、業種ごとの研究開発投資の性質の違いが、財務諸表に反映され、IAS第 38号が定める要件は、適切に機能しているようにも見られる。しかし、アニュアルレポー トの会計方針の開示情報や、企業・業種ごとの製品の特徴などから更なる考察を加えると、
既存の製品等の改良のための開発を行い、その製品を自ら販売している Automobiles &
parts のような企業、業種が研究開発投資の資産計上割合が高いのではないかという結論 に至った。
こ の よ う に 、 一 定 の 業 態 の 企 業 に の み に し か 適 用 す る こ と が で き な い 要 件 で は 、 Pharmaceuticals業界のように、多額の研究開発投資が行われ、それによって、内部創出 の資産が多く生み出されているような企業であっても資産計上がほとんど行われていない といったように、研究開発投資を資産計上しようとする本来の趣旨が反映されないとの指 摘も考えられる。このように、資産計上するための、要件についても、明確さが保たれて いるとは言い難いのである。以上のことから、本論文では、研究開発投資の会計処理につ
いて、資産計上すべきとする明確な結論を、現段階では出すことができなかった。
上記のように、両会計処理はともに解決しなければならない問題点を抱えており、明確 にどちらの会計処理が良いか結論を出すことができなかった。しかし、いずれの会計処理 が望ましいのかについて明確なことがいえないことは、一部資産計上のオンバランス処理 と発生時費用処理との間に一切の優劣をいうことができない、というのを意味しているわ けではない。先に述べたとおり、発生時費用処理のほうは、もともと積極的な理論的裏づ けを欠いている。これに対し一部資産計上のオンバランス処理を妨げているのは、資産計 上すべきケースと資産計上すべきでないケースを区分するための客観的な基準を設けられ ない、という事情に過ぎない。
改めて考えてみれば、上記のような客観的基準を設けられないのは、オンバランス化が 認めておらず、「区分」の経験が蓄積されていないためかもしれない。とすれば、ある程度 の客観的な分類を定め、ともかく一部資産のオンバランスを試みれば、「区分」の経験を通 じてより良い、より客観的な判断基準への改善が期待できそうである。
こういう考えから、筆者は一定の要件を満たした一部無形資産について、より積極的に 資産計上を行っていく必要性を痛感し、そのような会計処理が促進されることを期待して いる。これが冒頭に掲げた問題意識に関する本論文の最終的な結論である。
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