本研究では,まず,コンクリートの凍害に対して特に影響を及ぼす要因を明らかに することを目的として,北海道に約40年間供用された水路施設を対象とした詳細調査 を実施した。その結果,凍害による劣化が確認される部位では,健全な部位よりも空 気量が少なく,気泡間隔係数が大きい傾向が確認された。このことより,水路施設に おける凍害の顕在化には,コンクリートの打込みの際のエアの巻込みや締固めによる エアの抜出しなどによって生じた不均一な気泡組織が多大な影響を及ぼすことを考察 した。
次に,得られた傾向を基に,凍害環境における水路施設の相対動弾性係数の経年変 化に対して,硬化コンクリートの空気量および気泡間隔係数が及ぼす影響を評価する ことが可能な式(7.1)の凍害モデルを提案した。
( )
( )
{ }
[
cV d FT e]
t b FT L P a
d
p + − − +
−
= −
・
・
・
・ exp 1
exp
100 (7.1)
ここで,PP:相対動弾性係数(%)
L:気泡間隔係数(µm)
FT:凍結融解履歴の影響を表す指標 t:供用期間(年)
Vd:飽水されていない空気量(%)
a,b,c,d,e:係数
提案した凍害モデルにより,北海道の空知地区における水路施設の相対動弾性係数 を再現できることを確認した。また,最低温度を-18℃とする促進凍結融解試験結果を 基に凍害モデルの係数を推定し,得られた予測式を用いて最低温度を-10℃とした促進 凍結融解試験の相対動弾性係数を再現することが可能であることを確認することによ って,凍害モデルを検証した。
以上のとおり,本研究で提案した凍害モデルにより,対象構造物の設計耐用期間お
よび要求される相対動弾性係数に応じて,コンクリートに要求される空気量および気 泡間隔係数を提示することが可能となった。
あとがき
本研究では,凍害環境におけるコンクリート構造物の相対動弾性係数の経年変化に 対して,硬化コンクリートの空気量および気泡間隔係数が及ぼす影響を評価すること が可能な凍害モデルを提案した。提案したモデルによれば,これらの気泡組織の影響 に加え,外気温および相対湿度の影響についても検討することが可能である。
しかし,セメントや骨材などの材料特性の影響を考慮できるモデル化までには至っ ておらず,今後,実構造物を中心としたデータの蓄積を図り,材料特性の影響につい ても評価できるモデルとして発展させていきたいと考えている。
さらに,将来的には,本研究のテーマであるコンクリートの凍害予測に関する知見 が集約され,性能規定による設計,施工および維持管理のシステムが確立されること により,より確実かつ合理的に構造物の耐久性が確保されていくことが望まれる。