この戦時急造の造艦技術は海防艦にも採用され、丙型海防艦は53隻、丁型海防艦では63隻が 就役した。これらの多数の建造を可能としたのは、電気溶接、ブロック工法であり、健在の造 船技術に受け継がれているものである。
区画配置では、松型(丁型)駆逐艦は、日本海軍の駆逐艦としては初めて缶室の分離が採用さ れ、機関区画は前方より前部缶室、前部機械室、後部缶室、後部機械室の配置となり、左右の 軸系をそれぞれ独立させることで被害時の行動力喪失を防ぐことをはかっている。しかし、こ の方式では、軸系が左右対称ではなくなり工作の手間が増えるなど、戦時急造に適さないとい う意見もあったようではあるが、戦訓から必要とされる意見にしたがって採用された。このよ うな区画配置は、ダメージコントロールに対して非常に有効であり、現在の艦艇にも受け継が れているものである。
このように松型(丁型)駆逐艦は、戦時急造であるということに甘んじず、必要とされるもの は取り入れ、また一方簡易化できるものに関してはそれを実行し建造における工数を減らし、
建造、運用面上ともに従来型駆逐艦よりも実用に適するものとなったと考える。
日本海軍の艦艇に関しては、多くの書籍が出版されているが、戦艦「大和」や高馬力タービ ンを採用し40.37knotの高速を発揮した駆逐艦「島風」などに代表される艦艇に注目がいきが ちである。もちろん、これらの有名な艦艇の造艦技術は、戦後の日本の造船技術に多分に貢献 したことは明らかであると考える。
しかし、本研究の松型(丁型)駆逐艦のような戦時急造で量産された艦艇は、これらの有名な 艦艇の影に隠れてしまい注目されることが少ないと考える。しかし、前述したように電気溶接、
ブロック工法、特殊な区画配置などの当時としては先進的な技術が取り入れられている。これ らの技術は戦後、造船工程の簡略化や建造期間の短縮化に大きく貢献したものであり、日本の 造船産業を支える重要な技術になったと考えられる。
このように、現在の造船技術に大きく貢献した考えられる松型(丁型)駆逐艦に関する本研究 は、緒言でも述べた通り、現在の日本の造船史、とりわけ造艦史関連の資料として有意義なも のであると考える。
謝辞
本研究を進めるにあたり、東京海洋大学海洋工学部、庄司邦昭教授、三田重雄助手に適切な ご指導、ご助言をいただき、謹んで御礼申し上げます。
大学院進学に関して、また数々のご助言をいただきました、東海大学時代の恩師である、中 部学院大学短期大学部、花房元顕准教授に、謹んで御礼申し上げます。
本論文執筆に関して、数々のご助言をいただきました、独立行政法人海上技術安全研究所、
三友信夫氏に謹んで御礼申し上げます。
本研究の実験に、快くご協力いただきました東京海洋大学海洋科学部、海洋環境学科、海上 安全工学研究室、博士後期課程の溝口弘泰氏をはじめとする同研究室の学生の皆様に深く感謝 申し上げます。
本研究の実験に、快くご協力いただきました、東京海洋大学海洋工学部、井関俊夫研究室、
博士前期課程(平成19年度修了)、木下恵介氏に深く感謝申し上げます。
本研究を進めるにあたり、日々ご助言、ご協力を頂きました庄司邦昭研究室の学生諸氏に深 く感謝申し上げます。
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