付編2 2019-1 桜ケ丘 H・I-10・11 区ポンプ室新営その他工事に伴う発掘調査
(4)広葉樹
道管や放射組織は確認できたが、試料の劣化が著しく、広葉樹までの同定に留めた。
3-2.種実同定
同定の結果、炭化種実は、モモ核であった。
以下に、同定された試料の特徴を記載し、図版 2 に実体顕微鏡写真を示す。
(1)モモ Amygdalus persica L. 炭化核 バラ科
完形ならば上面観は両凸レンズ形、側面観は楕円形〜紡錘形で先が尖る。下端に大きな着点がある。表面には不 規則な深い皺があり、片側側面には縫合線に沿って深い溝が入る。残存高 10.8mm、残存幅 9.6mm。
4.考察
A 区の住居跡から出土した弥生時代前期後半〜中期前半の炭化材は 3 点ともクスノキ科、炭化種実はモモ核で あった。また、同じ時期の暦年代を示した A 区の土坑出土の炭化材も、クスノキ科であった。炭化材の用途は不 明である。炭化種実で確認されたモモは、食用として利用された後に、被熱によって核が炭化した可能性が考えら れる。クスノキ科は比較的堅硬な樹種であり、薪炭材としても普通に利用される(平井,1996)。遺跡周辺に生育 していたクスノキ科が伐採利用されたと考えられる。
縄文時代晩期後葉〜弥生時代前期前半の暦年代を示した A 区のピット出土の炭化材は、クワ属であった。クワ 属は堅硬で、保存性が高く、薪炭材としても普通に利用される(伊東ほか,2011)。遺跡周辺に生育していたクワ 属が伐採利用されたと考えられる。
縄文時代後期後葉の暦年代を示した C1 区 3b 層の炭化材は、アカガシ亜属であった。アカガシ亜属は非常に堅 硬な樹種で、薪炭材としても好んで利用される(伊東ほか,2011)。遺跡周辺に生育していたアカガシ亜属が伐採 利用されたと考えられる。
縄文時代草創期の暦年代を示した C1 区 6b 層下の炭化材は、広葉樹であった。
引用文献
平井信二(1996)木の大百科-解説編-.642p,朝倉書房.
伊東隆夫・佐野雄三・安部 久・内海泰弘・山口和穂(2011)日本有用樹木誌.238p,海青社.
伊東隆夫・山田昌久編(2012)木の考古学―出土木製品用材データベース―.449p,海青社.
表1 脇田亀ヶ原遺跡出土炭化材の樹種同定結果一覧
鹿児島大学埋蔵文化財調査センター年報 35
3c 3b
3a
2c 2b
2a
1c 1b
1a
図1 脇田亀ヶ原遺跡出土炭化材の走査型電子顕微鏡写真
1a-1c. クスノキ科 (No.1)、2a-2c. クワ属 (No.5)、3a-3c. コナラ属アカガシ亜属 (No.6) a: 横断面、b: 接線断面、c: 放射断面
図2 脇田亀ヶ原遺跡から出土した炭化種実
1.モモ炭化核(A 区・住居跡、埋土、PLD-40165)
スケール 1:5mm