最初に、液晶性ナノシートのコロイドと細菌の適合性を検討した。SH-培地はバクテ リアセルロースの生産培養のために必要であるが、培地の成分の中の、特に塩は、ナ ノシートのコロイドの液晶相の安定性に影響を与える可能性がある。一般に塩の添加 はコロイド粒子間の二重層反発の遮蔽を起こし、コロイドの凝集または構造の変化を 起こす原因になる。Figure1にSH培地にFHT(4wt%)を添加したPOM像を示す。液 晶相の複屈折を示す様々な色の干渉色が観察された。FHTコロイドの凝集物は見られ ず、高濃度のSH培地に分散したFHTコロイドも同様の結果を示した(Fig. 1b)。以上よ り FHTナノシートのコロイドの分散性及び液晶相は、SH-培地でも保持されているこ とがわかる。
さらにSH培地で液晶相の形成を確認するために、FHT/ SH 培地コロイドの相分離 挙動を検討した。種々の FHT 濃度のコロイドをガラスキャピラリー内に封入し、24 時間静置した。クロスニコルにより(Figure. 2a,b)下段の液晶相(明)と上段の等方相(暗)
に明確に分離した分散液を観察した。Figure2c にまとめたようにナノシートの体積分 率の増加に伴い液晶相も増加した。この現象はすべてのナノシート液晶の系において 一般的である25。したがって、SH 培地は分散性と FHT ナノシートコロイドの液晶相 に影響を及ぼさないことが確認された。
Figure. 1 The polarized optical microscope images of the fluorohectorite/SH-medium mixtures (a)(b) before and (a’)(b’) after cultivation of the acetic bacteria observed with crossed polarizers and a waveplate. The fluorohectorite concentration is (a) 2.0 and (b) 4.0 wt%.
Figure. 2 The photographs (a)(b) of the phase-separated fluorohectorite/SH-medium
colloid after standing for 24 h in a capillary tube observed with crossed polarizers. The
fluorohectorite concentration is (a)0.75 and (b) 1.5 wt %. The diagram (c) is the
relationship between the nanosheet concentration and the volume fraction of the liquid
crystal as determined from the the observation of the phase separation behavior for the
samples with varied fluorohectorite concentration.
上述のFHTとSH培地の混合物において、酢酸菌が正常に培養され、バクテリアセ ルロース繊維/ナノシート複合体の形成を生じた。培養する前のサンプルは、流体のゾ ルであった。しかし、培養した試料は、培地中のバクテリアセルロース繊維の合成を 示し、加えたFHTの量に応じてゲルもしくは、強い粘性のゾルだった。Fig3aはFHT
の 1.0wt%で培養して得られたゲル試料の写真を示す。我々の実験系では、FHT 濃度
0.7〜1.0wt%の範囲内においてゲル試料を得た。対照的にFHT濃度が1.0 wt%以上0.7
wt%未満である場合には粘性ゾルを得た。
Figure.3Bと3Cに、培養後の凍結乾燥サンプルのSEM像を示す。FHTナノシートコ
ロイド単相には見られない多くの繊維状の像が観察された。これらの繊維状の像は、
バクテリアによって生産されたセルロース繊維であることは明らかである。バクテリ ア培養後においてもFHTナノシートの液晶相が保持されることは注目に値する。これ は偏光顕微鏡像からも明らかになっており、10日間の培養前後においても類似の複屈 折のテクスチャが観察された(Fig. 1a' , b')。