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40 遠方での21cm線と[Oiii]輝線の空間相関

のように三つの項に書き下せる。ただし、

t(r)≡ Ts(r)−TCMB

Ts(r) (5.13)

T0 26 (Ωbh2

0.022

)(1 +z 10

0.15 ΩMh2

)1/2

mK (5.14)

とした。これより、温度 T0 で規格化した相互パワースペクトルは

P21,OIII(k) =⟨xHI[Ptx,OIII(k) +Ptρ,OIII(k) +Ptxρ,OIII(k)] (5.15) と書き下すことができる。以下では、無次元パワースペクトル

221,OIII(k) = k3

2P21,OIII(k) (5.16)

= ⟨xHI[∆2tx,OIII(k) + ∆2tρ,OIII(k) + ∆2txρ,OIII(k)] (5.17) を用いる。また、相関の強さを見るために相関係数

r21,OIII(k) P21,OIII(k)

√P21POIII (5.18)

も計算する。これらは、∆k = 0.2h cMpc1 でビンわけして計算する。

5.3 結果41

図 5.2: 銀河のハロー質量と [Oiii] 5007 ˚A輝線強度の関係。

   

図5.3: シミュレーション銀河で見られる星形成史の例。点線は z = 7 においてハロー質 量 1011 M 程度の銀河、実線は 1010 M 程度の銀河に対応する。特にハロー質量の小 さい銀河では断続的な星形成活動が顕著に見られる。

   

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図 5.4: 左:LOIII,5007 >1042 erg s1 の銀河個数密度と21cm強度の相互パワースペクト ルと相関係数。右:中性水素密度のスライスマップ(カラーマップ)と、そのスライス から厚み ±1h1 Mpc 以内にある LOIII,5007 >1042 erg s1 の銀河の分布(赤点)。

⟨x⟩= 0.46がかかっていることに注意する。また、小スケール(k ≳1h Mpc1)でも同 様に ∆2x,OIII 2x,OIII となっている。これは、∆2x,OIII 以外の項の和∆2ρ,OIII+ ∆2ρx,OIII を 考えることで以下のように説明できる(Lidz et al. 2009)。フーリエ変換をFT と表すと、

2ρ,OIII+ ∆2ρx,OIII FT[⟨δρ(r1x(r1OIII(r2) +δρ(r1OIII(r2)] (5.19)

= FT[⟨δρ(r1)xHI(r1OIII(r2)] (5.20)

= FT[⟨δρ(r1)xHI(r1)nOIII(r2)]/⟨n⟩ (5.21) と書ける。ただし、任意の関数X(r)に対してk ̸= 0 の時FT[X(r) + const.] = FT[X(r)]

が成り立つことを用いた。r=|r1r2|が十分小さい時、点 r1 と点 r2 の組み合わせと しては (i) いずれもバブル内にある場合と (ii)いずれもバブル外にある場合のみを考え れば良い。(i)r1,r2 がいずれもバブル内にある時は、バブル内はほとんど完全電離して いるためx(r1)0 であり、(ii) r1,r2 がいずれもバブル外にある時は、バブル外には明 るい銀河が存在しないため nOIII(r2) = 0 である。結局、小スケールでは

⟨δρ(r1)x(r1)nOIII(r2)⟩ ∼0 (5.22) となり、 ∆2ρ,OIII と ∆2ρx,OIII は打ち消し合う。このため、∆221,OIII 2xHI,OIII となる。

そこで、∆2x,OIII の振る舞いを理解するために、全ての LOIII,5007 > Lmin = 1042 erg/s の銀河の周りに半径 RS の電離バブルが形成され、それ以外の電離源は電離バブルの 形成に一切かかわらない場合を考える。簡単のため電離バブルに被りがある場合にも特

5.3 結果43

図 5.5: 左:実線はLOIII,5007 > 1042 erg s1 の銀河の周りに半径 5h1 Mpc の一様な 電離バブルができたとした時の銀河個数密度と中性度 xHI の相関パワースペクトル。

また、実際の中性度を用いたものを点線で示す。右:中性度のスライスマップ(青)と

∆z = 1h−1 Mpc 内の銀河の分布(赤)の分布。

に電離バブルの広がりは考慮しない。RS = 5h1 Mpc とすると ⟨xHI = 0.52 となり、

z = 7.5 における ⟨xHI = 0.46 と同程度である。この時の電離バブルと銀河のパワー

スペクトル ∆2x,OIII とそれらの空間分布は図 5.5に示したようになる。参考のため、実

際の ∆2x,OIII を点線で示す。単一バブルサイズの場合、パワースペクトルや相関係数は

k∼kS 2π/RS= 1.25h Mpc1 で極大値をとって、それ以下のスケールでは周期 kS で 振動する。異なるRS を用いても同様の振る舞いが見られる。Wiersma et al. (2013) で も単一のバブルサイズのみが存在するモデルを用いた議論がなされており、パワースペ クトルに同様の振動が見られている。

実際には明るい銀河(LOIII,5007 > Lmin)以外の銀河も電離に寄与しており、図5.4右 でも確認できるように明るい銀河を囲むバブルは様々なサイズを持つ。様々なバブルサ イズの寄与が重なりあうために、実際のパワースペクトルは小スケールでノイズ的に振 る舞う。明確な振動は見えないものの、∆221,OIII 0 となるスケールは何らかの形でバ ブルサイズに対応していると考えられる。このようなスケールを以下ではturnoverと呼 ぶ。 図5.4左では k ≳ 1h cMpc1 でパワースペクトルにノイズが見られており、これ はr 6h−1 cMpc に対応する。図5.4右では、特に孤立した銀河を取り囲むバブルの半 径が 6h1 cMpc 程度であることがわかる。turnover スケールが実際に電離バブルのど のようなスケール(最小のバブルサイズ、典型的なバブルサイズ、など)に対応してい るかを議論するには、Zahn et al. (2007)で採用されている手法などを用いて銀河を取り 囲むバブルサイズの個数の分布を調べる必要がある。

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図 5.6: 図5.4 と同様。ただし、LOIII,5007 >1036 erg s1 の銀河の個数密度を用いている。

Vrbanec et al. (2016) など多くの先行研究では LAE の個数密度と 21 cm 強度のパ ワースペクトルにはノイズ的振る舞いはみられず、小スケールで ∆2 >0 となっている。

しかし、こういった先行研究では銀河からの電離光子数やき輝線強度をハロー質量に比 例させて計算するなどの解析的な手法を用いており、そのような簡単な取り扱いによっ てより明確なturnover が見えているのだと考えられる。

次に、より小さい銀河も個々に観測できた場合を考える。Lmin = 1036 erg/s の場合の パワースペクトルは、図5.6左 のようになる。∆2x,OIII(青)のノイズの見られるスケール は、銀河の含まれる最小のバブルサイズがより小さくなるため、それに伴って小スケー ル側に動く。実際、これらの銀河の分布は図5.6右に示したようになり、より暗い銀河は 小さいハローにも存在することがわかる。しかし、先ほどと違って∆221,OIII は ∆2x,OIII と 振る舞いが異なる。これは、より小さな電離バブルの中の銀河も考慮しているために式

(5.21)において r1r2 がバブルの内外に分かれるような状況も考えなくてはならず、

2ρ,OIII と ∆2ρx,OIII が打ち消し合わないことに起因している。つまり、小さなバブル中に

ある銀河と21 cm 線強度の間の正の相関が小スケールで現れていることになる。これに よって、Lmin = 1042 erg/s の時に見られたようなバブルサイズの情報が消えている。

いろいろな Lmin に対応するパワースペクトルを図5.7 に示す。まず大スケールで は Lmin が大きいほど大スケールでのパワースペクトルの絶対値が大きいことがわか る。これは明るい銀河ほど電離バブルとの相関が強いことを示している。次に、小ス ケールで見られる、∆2 < 0 から ∆ = 0 に切り替わる点 (turnover) に着目すると、

Lmin = Lth 1040 erg/s を境にその振る舞いが変わることがわかる。Lmin > Lth では

turnover のスケールが Lmin とともに大きくなる。これは銀河を囲む最小のバブルサイ

ズがどんどん大きくなるためである。一方、Lmin < Lth では逆に turnover のスケール

5.3 結果45

図5.7: Lmin をいろいろにとった時の銀河個数密度と21cm強度の相互パワースペクトル と相関係数。

   

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Lmin とともに小さくなる。これは、Lmin が小さいほどよりバブル外にある銀河が多 くなるためである。このようなLmin に依存した turnoverスケールの振る舞いの違いは Lidz et al. (2009)でも指摘されており、LOIII,5007 < Lth の銀河が単体では大きな電離バ ブルを形成できないことによって生じている。上述したように、Lmin < Lth の場合にお

けるturnover のスケールはバブルサイズについての情報を持っているわけではない。

狭帯域撮像などによるサーベイでは、銀河の二次元分布のみが得られる。そこで最後 に、二次元データのみが得られた時の相関パワースペクトルを計算する。銀河サーベイ として ∆z = 0.1 の狭帯域撮像を仮定して、シミュレーションボックス中のLOIII,5007 >

1042 erg/s の銀河分布を z 方向に 50h1 cMpc だけつぶして二次元分布を得る。これと 対応する z 平面での21cm線との二次元相関パワースペクトルを計算した。図5.8に示 すように、投影したことによって大スケールでの相関が弱まり、相関係数は 0.5 程度と なる。

図 5.8: LOIII,5007 >1042 の銀河の個数密度と21cm強度の二次元相互パワースペクトル。

いずれも、∆z = 50h1 cMpc の厚みで三次元マップをつぶして二次元マップを得た。

   

5.3 結果47

5.3.2 [O iii ] 光度と 21cm 線の相関

次に、[Oiii] 光度分布LOIII(r)を用いた場合を考える。図5.9に、[Oiii]光度と 21 cm線 との三次元相互パワースペクトルを示す。intensity mappingを用いたこの手法では各銀 河の[Oiii]強度 LOIII で重み付けているため、パワースペクトルは特に明るい(Lmin

1040 erg/s)銀河の個数密度を使った時の結果と同様の振る舞いを見せる。このため、パ

ワースペクトルの振る舞いは[Oiii]銀河の個数密度を用いた時と同様になっている。ま た、大スケールでの相関の強度は解像度を変えても変わらない。

図 5.9: [Oiii] 5007 ˚A強度と21cm強度の相互パワースペクトルと相関係数。

   

現在 z >7の [Oiii] intensity mapping 観測は予定されていないが、将来の観測でど のような結果が得られるかを予測することは重要である。ここでは簡単のため、[Oiii]輝 線、21 cm 線いずれについても干渉計による観測を想定し、観測のノイズは波数によら

ず、k = 0.1h cMpc1 kN でのパワースペクトルの値における値と等しい場合につい

て誤差を見積もる。この時、[Oiii]輝線や 21 cm 線の強度分布観測で得られるパワース

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ペクトルの誤差は式(B.45)で与えられ、

σA2(k) = 4π2

k2δkVsurv{PA2(k) +PA2(kN)} (5.23) σA,B2 (k) = 1

2 ×2

k2δkVsurv{PA,B2 (k) +PA(k)PB(k)} (5.24) となる。ただし A、B は [Oiii] または 21 cm 線 を表す。ここでは、Vsurv =D2 ×∆D として、D2 = 100 deg2、∆Dは ∆z 0.2 となるようにとる。この時誤差付きのパワー スペクトルを図5.10に示す。このセッティングでは大スケールでは式(5.23), (5.24)の第 一項が第二項に比べて大きいため、∆2 ∝k3P の誤差は k3 ×k1 = k2 に比例する。相 関係数 r=PA,B/√

PAPB の計算にはそれぞれのシグナルの自己相関係数が入るため、そ の誤差の評価には前景の差し引きなどの不定性も考慮する必要がある。

図5.10 で見られるように、干渉計を用いた観測の場合には小スケールでの不定性が 大きくなる。これより、このような観測を用いる場合には大スケールでの相関強度を用 いた議論が主に可能である。intensity mappingを用いることの利点は以下の二点が挙げ られる。まず、上述したように相関強度は空間解像度によらないため、解像度を悪くし て S/Nをよくすることで大スケールでの不訂正をより小さくすることができる。また、

銀河の個数密度を用いる場合には観測可能な明るさの下限によってパワースペクトルの 絶対値が変化するが、強度分布を用いる場合にはそのようなことがない。ただし、解像 度を悪くすることによる前景の寄与の変化や、有限の振動数解像度によって強度分布が 奥行き方向に積分される効果については慎重に議論する必要がある。

図 5.10: 21cmシグナルと [Oiii] 5007˚A強度のパワースペクトル    

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