第 2 章 TiO 2 ナノ粒子の合成
2.2.6 結果と考察
合成粒子の分散性・粒径・粒子生成量について
Fig. 2.2.1.1~Fig. 2.2.1.7より超純水及び0.5wt%、1wt%H2O2溶液中で合成した 粒子は凝集していたが、H2O2 添加量が増加すると粒子の分散性は高くなり、粒 径の減少がみられた。また、Fig. 2.2.2より、H2O2添加量の増加に伴い粒子生成 量の減少が確認された。したがって、プラズマプルーム内の粒子密度が小さく なりクラスターの不均一粒成長が抑制されるため、H2O2 添加量増加に伴い、生 成する粒子径が低下したと考えられる。
Fig. 2.2.3より、合成したナノ粒子のゼータ電位は、H2O2添加量によらず全て
の条件で負の値を示した。これは、レーザーアブレーションによって引き起こ される H2O2の解離反応が要因だと考えた。H2O2 の解離反応は反応式(1)で示さ れる。
H2O2↔ HO2
-+H+ (1)
この反応で発生するHO2-がTiO2粒子表面に吸着するため、TiO2ナノ粒子表面 は負に帯電する。そのため、合成粒子間にvan der walls力を超える静電気的反発 力が働き、一次粒子が明確に確認できる程度に分散したと考えた。
粒子合成時とゼータ電位測定時の溶液pHの変化について
Table 2.2.3より、ナノ粒子合成時の溶液 pH とゼータ電位測定時の溶液 pH
が大きく異なることがわかった。これは、レーザーアブレーションによって引 き起こされるH2O2の解離反応が要因だと考えた。前述したように、H2O2の解離 反応は反応式(1)で示される。この反応で発生するHO2-は粒子表面に吸着し、ゼ ータ電位値に影響を与えるが、溶液中には H+が残るためナノ粒子合成時の溶液 pHに比べゼータ電位測定時の溶液pHが低下したと考えた。
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合成粒子の結晶相について
Fig. 2.2.4 より、超純水中で合成した粒子はルチル型 TiO2の単相であり、
H2O2溶液中で合成した粒子はルチル型TiO2のほかアナターゼ型TiO2と未知相 を含んだ。また、H2O2添加量の増加に伴い、アナターゼ型TiO2ピークが増大す ることがわかった。
超純水および H2O2溶液中で合成した粒子が主にルチル型 TiO2粒子から構成 された要因は、第2章 2.1.4 結果と考察と同様に、TiO2の結晶構造と核生成反 応場であるプラズマプルーム内の反応雰囲気から説明することができる。
一方、H2O2溶液中で合成した粒子はルチル型TiO2のほかアナターゼ型TiO2
を含んだ。また、H2O2添加量の増加に伴い、アナターゼ型TiO2ピークが増大す ることがわかった。これは、H2O2 の分解により反応雰囲気中の酸素分圧が上昇 し、酸素空孔生成が抑制されたためであると考えた。
なお、高濃度硫酸酸性水溶液中で、硫酸チタン溶液を熱加水分解して得られ る白色沈殿は、含水酸化チタンまたはメタチタン酸とよばれ、アナターゼ微結 晶の集合体である[6]。本結果でみられたアナターゼは含水酸化チタンの可能性も あるが、収量が低いため、熱重量測定による同定には至らなかった。
そこで、レーザーラマン顕微鏡観察より合成粒子中の酸素空孔濃度を評価し
た。Fig. 2.2.5より、ルチル型TiO2ピークが高波数側へ、アナターゼ型TiO2ピー
クが低波数側へシフトすることが確認された。TiO2結晶中の酸素空孔濃度が増 加すると、ルチル型TiO2ピークが高波数側へ、アナターゼ型TiO2ピークは低波 数側へシフトすることが知られている[9]。したがって、H2O2添加量の増加に伴 い、合成粒子中の酸素空孔濃度が減少する傾向にあることがわかった。また、
TiO2ラマンスペクトルピークは、粒径の減少に伴い高波数側へシフトし、ピー
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ク強度が小さくなることがわかっている[42]。しかしながら、本結果においては、
ピークシフトと粒径との間に明確な相関はみられなかった。そのため、本結果 でみられたピークシフトは、酸素空孔濃度減少が要因であると考えている。
以上より、H2O2添加による酸素空孔濃度抑制の効果を確認した。
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