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第 4 章 コアシェル粒子の不融化法,および,炭素化法の検討 4.1 はじめに

5.4 結果と考察

5.4.1 4PMAA3CS遠心紡糸繊維

4PMAA3CS遠心紡糸繊維炭素化物の試料のFE-SEM写真をFig. 5-1 に示す。図

中の矢印で示す,直径がおよそ100 nmのファイバー構造が観察された。

Fig. 5-2 に示すTEM写真から,直径100 nm程度の中空構造が観察された。これ

はFig. 5-1で観察した棒状の構造に一致している。しかしながらその構造は葉巻状

であり,紡糸時の延伸が不十分であったことを示している。このような構造は,視

野中の10%程度であり,それ以外では塊状炭素であった。

Fig. 5-2の右側の写真で観察された塊状炭素の生成は,紡糸によりシェル構造が

薄くなり形状が壊れたためと考えられる。

5.4.2 7.5PMAA3CS遠心紡糸繊維(紡糸温度260℃)

前項では紡糸性の悪いコアシェルを用いた結果,得られた炭素化物は葉巻状であ った。そこで,紡糸性の高い7.5PMAA3CSを用いてCNTの調製を試みた。

Fig. 5-3 に 260 ℃で遠心紡糸を行い得られた繊維の炭素化物の FE-SEM 写真を

示す。直径数百nm~1 mのファイバーが観察された。これらファイバーは前節の 4 mol%の場合とは異なり,原料粒子に比べて直径が太く,長いものであり,紡糸 時,もしくは,熱処理時にコアシェル構造の崩壊が起こった結果に起因するもので はないかと考えられた。

Fig. 5-4 に炭素化物のTEM写真を示す。写真中では直径100 nm程度のファイバ

ーが観察されたが,ほかの視野ではさらに太いファイバーも観察された。また,い ずれの場合も中空構造は観察されなかった。

Fig. 5-5~7 に遠心紡糸繊維のミクロトームTEM観察結果を示す。前章の結果の

通り,コアシェル構造が崩壊した構造が観察された。また,直径が500 nm以上の 構造体が見られたことから,コアシェル構造が崩壊と同時に凝集して径が大きくな った粒子が紡糸されたのではないかと推察された。

ただし,この点に関しては,前章の7.5PMAA3CS の熱処理の結果とは食い違っ

ている。前章では,熱処理後に観察された構造はマトリックス中に直径100 nm程 度の微粒子が分散している状態が観察されており,凝集して粒子径が大きくなって いることは観察されなかった。静置している状態で熱処理を行っても凝集は起きな いが,紡糸時に応力が加わった状態だと,動きやすくなり結果として凝集して大き な粒子を形成するのかもしれない。

ここで,前章でコアシェル粒子を 260 ℃で熱処理を行ったものよりも,200 ℃ で行った方がコアシェル構造の残る頻度が多かったことから,炭素化後に中空構造 が得られることを期待して,次に,7.5PMAA3CS 粒子を200 ℃で遠心紡糸し炭素 化した結果について示す。また,もし,コアシェル構造が崩壊して微粒子が生成し たとしても,低い温度であるがために応力が加わった状態でも比較的動きにくく大 きな凝集粒子が生成せず,結果として,細いファイバーになるのではないかと予想 した。

5.4.3 7.5PMAA3CS遠心紡糸繊維(紡糸温度200℃)

Fig. 5-8 に紡糸温度が200 ℃で調製を行った,7.5PMAA3CS遠心紡糸繊維炭素化

物のFE-SEM写真を示す。直径100 nm程度のファイバーの束が観察された。また,

ファイバーの長さが,260 ℃で得られたファイバーに比べて短くなっていた。

Fig. 5-9 に炭素化物のTEM写真を示す。繊維径が100~200 nmの中身の詰まった

ファイバーであった。期待していた,中空構造は一切観察されなかったことから,

コアシェル構造の崩壊が起きていることが推察される。

Fig. 5-10~12 に遠心紡糸繊維のミクロトームTEM観察結果を示す。写真の一部

には中空らしき構造も確認できた。しかしながら,原料粒子の大きさに合わないこ とから,加熱溶融時に一部の残っていたコアシェル構造と崩壊したコアシェル構造 が凝集して,PMMA をコアに有する凝集体を形成し紡糸されたものであると推察 された。つまり,200 ℃で紡糸を行ったが,元のコアシェル由来の構造は見られず コアシェル構造は崩壊したことがわかった。

炭素繊維の前駆体として,ポリアクリロニトリル共重合体を用いることは,前項 で述べた。その調製方法について工業的には溶融紡糸は用いられることはなく,湿 式紡糸,および,乾式紡糸が用いられている1)。PANもしくはPAN共重合体は,

をジメチルホルムアミドに溶かし,口金に入れ,スクリューやギヤポンプで押しだ し,出てきた繊維を加熱してやることで溶媒が蒸発する。

今回のコアシェル粒子の紡糸に関しては溶媒に溶かしてしまうとコアシェル構 造が壊れてしまうため,紡糸の困難な溶融紡糸法を用いた。

紡糸性の良いコアシェル粒子の検討も重要であるが,溶媒に溶けてもコアシェル 構造が安定であるポリマーブレンドを開発することで問題の解決が可能となるか もしれない。

今回用いたコアシェル粒子のコア成分とシェル成分の軟化点が異なるため,PAN コポリマーの紡糸性が悪いとPMMAの部分のみ紡糸されて,肝心のPANコポリマ ーが紡糸されないという危険が存在する。また,コアシェル粒子の熱的安定性が悪 い場合,紡糸を行うとコアシェル構造が崩壊したことから,コポリマーの割合は4 mol%よりも大きく7.5 mol%よりも小さい間に最適な組成のコポリマーが存在する と考えられる。この最適値を突き止めることが今後の課題検討となる。

5.5 結論

本章においては,熱的安定性,および,紡糸性の観点から,4mol%のコポリマー 割合を持つ三層コアシェル粒子,および,7.5mol%のコポリマー割合を持つ三層コ アシェル粒子の遠心紡糸を行い,不融化,次いで,炭素化を行った。炭素化後の構 造を電子顕微鏡観察したところ,4mol%のコポリマー割合を持つ三層コアシェル粒 子の場合は中空構造ができるが,葉巻状で延伸が不十分であることが明らかとなっ た。一方で,紡糸性のよい7.5mol%のコポリマー割合を持つ三層コアシェル粒子の 場合は,中空構造は得られなかった。紡糸後の繊維形態をミクロトームで観察を行 ったところ,元のコアシェル由来の構造が残っていなかったことから,コアシェル 構造が壊れていたことが明らかとなった。

以上より,ポリマーブレンド法でCNTを調製する場合,三層コアシェル粒子の メタクリル酸の割合が4 mol%よりも大きく7.5 mol%よりも小さい間に最適な組成 のコポリマーが存在することを示すことができた。

参考文献

1) 松崎啓, 温品謙二, 化学繊維Ⅱ, 丸善株式会社(1968)

2) 司忠, 繊維便覧−原料編−, 丸善株式会社(1968)

3) 特開2008−95268.

Fig. 5-1 4PMAA3CS 遠心紡糸繊維炭素化物 FE-SEM

200nm

Fig. 5-2 4PMAA3CS 遠心紡糸繊維炭素化物 TEM

Fig. 5-3 7.5PMAA3CS 遠心紡糸繊維炭素化物 FE-SEM  

(紡糸温度 260 ℃)

Fig. 5-4 7.5PMAA3CS 遠心紡糸繊維炭素化物 TEM      

(紡糸温度 260 ℃)

Fig. 5-5 7.5PMAA3CS 遠心紡糸繊維ミクロトーム TEM      

(紡糸温度 260 ℃)

Fig. 5-7 7.5PMAA3CS 遠心紡糸繊維ミクロトーム TEM        

(紡糸温度 260 ℃)

Fig.5-8 7.5PMAA3CS 遠心紡糸繊維炭素化物 FE-SEM        

(紡糸温度 200 ℃)

Fig. 5-9 7.5PMAA3CS 遠心紡糸繊維炭素化物 TEM        

(紡糸温度 200 ℃)

Fig, 5-11 7.5PMAA3CS 遠心紡糸繊維ミクロトーム TEM        

(紡糸温度 200 ℃)

Fig. 5-12 7.5PMAA3CS 遠心紡糸繊維ミクロトーム TEM

(紡糸温度 200 ℃)

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