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結果および考察

第 1 節 AgIにおけるX線回折

作製した AgI 薄膜の結晶相を同定するため X 線回折の測定を行った。得られた回折パ

ターンをFig.7-1-1に示す。Fig.7-1-1に示されているように、鋭いピークがいくつか観測さ

れた。Table 7-1-1に示すβ-AgI のPDFデータ(No. 01-078-1613)と比較すると回折角はβ-AgI の回折角と一致したため、結晶相がβ-AgIであることが同定された。観測された回折ピー クの相対強度がPDFデータと異なっていたが、これは作製されたβ-AgI薄膜に配向性があ るものと考えられる。すなわち、薄膜面に対し、(002)、(102)、(110)、(103)、(112)面が平 行になるように結晶粒が成長しているものと考えられる。また、回折角約 26°付近におけ る幅広いピークはPETフィルムからの回折角である。

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

2 [deg]

102 103 112

-AgI thin film Substrate:PET Thickness 2 m CuK

PDF2Plus No.01-078-1613

-AgI

110002002 102 110 103 112

PET

Intensity [Arb. Units] 100 101 203 213

Fig.7-1-1 作製したβ-AgI 薄膜におけるX線回折パターン

Table 7-1-1 β-AgIのPDFデータ

01-078-1613 QM=*

AgI Silver Iodide Rad: CuKa1 Lambda: 1.5406 Filter: d-sp: Calculated Cutoff: Int: Calculated I/Icor: 6.81 Ref. Anharmonic thermal vibrations in wurtzite-type Ag I., Yoshiasa, A., Koto,

K., Kanamaru, F., Emura, S., Horiuchi, H., Acta Crystallogr., Sec. B:

Struct. Sci., 43, 434 (1987), Calculated from ICSD using POWD-12++

Sys: Hexagonal S.G.: P63mc(186) Aspect:

a: 4.591(1) b: c: 7.511(4) A: C: 1.636027 A: B: C: Z: 2.00 mp:

Ref. Ibid.

Dx: 5.687 Dm: SS/FOM: F30=1000(.000,32) ANX: AX. Analysis: Ag1 I1. Formula from original source: Ag I. Delete

duplicate: Delete: see 01-078-1614, JMB 7/00. ICSD Collection Code: 62789.

Temperature of Data Collection: 123 K. Wyckoff Sequence: b2 (P63MC). Unit Cell Data Source: Single Crystal. Peak height intensities. Single-crystal

data used.

2 [de] Int h k l 2 [de] Int h k l

22.34241 100 100 92.94596 7 215

23.67217 57 002 93.29958 1 206

25.32536 63 101 93.44423 2 312

32.77674 34 102 96.07385 1 107

39.21436 77 110 99.51207 6 313

42.64136 73 103 101.6038 1 305

45.59591 12 200 102.8368 1 401

46.31888 44 112 103.7345 <1 224

47.25943 9 201 106.4264 1 216

48.43794 <1 004 106.5764 1 402

63.03395 6 211 114.9206 1 108

64.00974 <1 114 115.2363 1 320

66.4821 13 105 115.6525 1 306

67.0234 5 212 116.5757 1 321

68.70648 <1 204 120.1197 3 315

71.07315 8 300 120.6969 1 322

73.43017 17 213 122.5283 <1 404

75.95313 1 006 123.7952 1 217

76.10065 6 302 124.8538 2 118

79.9899 6 205 125.2039 3 410

80.34865 1 106 128.002 3 323

82.07152 <1 214 130.2821 1 208

84.3101 4 220 131.1576 2 226

88.62084 2 310 131.349 3 412

88.99703 3 116 136.6392 1 405

89.14074 3 222 137.1542 1 316

89.82565 2 311 139.7231 <1 324

90.69943 <1 304 141.1635 <1 109

第 2 節 β-AgI薄膜におけるインピーダンス ―Cole-Coleプロット―

Fig. 7-2-1はβ-AgI薄膜の延び率0.0 %におけるCole-Coleプロット(at 300 K)である。

0 5000 1 104 1.5 104

0 5000 1 104 1.5 104 2 104

-Z'' [cm]

Z' [cm]

-AgI thin film Thickness 8.7 m

延び率 0.0 %

300 K

Fig. 7-2-1β-AgI薄膜の延び率0.0 %におけるCole-Coleプロット

プロットされたデータは一つの円弧に乗っており、デバイの経験則によってフィッティン グできることを示している。

 

i

 

1 Z Z Z

Z* 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-13) ここで、Z0は直流抵抗率、Zは高周波の極限におけるインピーダンスであり、ここでは Z=0、は角周波数、は緩和時間、は緩和時間の分布に相当するパラメータである。直 流抵抗率は高周波領域のデータをデバイの経験則によりフィッティングして求めた。そし て、直流抵抗率の逆数から直流電気伝導率を算出した。

第3節 β-AgI薄膜の直流電気伝導率の延び変形依存性

Fig. 7-3-1にβ-AgI薄膜の直流電気伝導率の延び変形依存性を示す。

0 1 10-5 2 10-5 3 10-5 4 10-5 5 10-5 6 10-5 7 10-5

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

延び率 [%]

-AgI thin film thickness 8.7 m at 300 K

 [-1 cm-1 ]

● 応力印加時

● 応力除去時

Fig. 7-3-1β-AgI薄膜の直流電気伝導率の延び変形依存性

応力印加時と応力除去時の延び率依存性に履歴が見られるものの、延び率の増大に伴い 直流電気伝導率は単調に減少することが明らかになった。直流電気伝導率の減少率が延 び率に対し妥当かどうかは、現段階では調べられていない。また、直流電気伝導率の延 び変形の前後における履歴に関しては、PET フィルムや-AgI 薄膜の塑性変形に起因す る可能性や延び変形によりβ-AgI に格子欠陥が発生している可能性が考えられる。しか し、これらの原因を明らかにするためにはX線構造解析などを用いた詳細な研究が必要 であり、今後の課題としたい。

第4節 β-AgI薄膜の直流電気伝導率の温度依存性

活性化エネルギーの延び率依存性を調べるため、いくつかの延び率に対してβ-AgI薄膜 の直流電気伝導率の温度依存性を測定した。その結果がFig. 7-4-1に示されている。

0.001 0.01 0.1

3.1 3.2 3.3 3.4

T [-1 cm-1 K]

1000/T [K-1]

-AgI thin film Thickness 8.7 m

○ 延び率 0.00%

□ 延び率 0.19%

◇ 延び率 0.44%

× 延び率 0.69%

+ 延び率 0.94%

Fig. 7-4-1 β-AgI薄膜の直流電気伝導率の温度依存性

温度の上昇と共に直流電気伝導度は指数関数的に増大することから熱活性型の電気伝導メ カニズムであることが分かる。このイオン伝導の温度依存性を熱活性型の式



 



Δk T

T

B 0exp

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7-4-1)

Γ f k

a Ze N

B 0 2 2 0

)

 (

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7-4-2) でfittingし、活性化エネルギーを見積った。ここで前置因子はキャリア密度Nや試行周波 数Γ、跳躍距離aなどの関数であり、は活性化エネルギーである。

プロットされたデータは一つの直線で近似することは可能であるが、緩やかにカーブして いるようにも見える。そこで全体を一つの直線でfittingした場合と、fittingする温度範囲を2 つの領域に分けた場合で活性化エネルギーを見積もった。

第5節 β-AgI薄膜の活性化エネルギーの延び変形依存性

Fig. 7-5-1にβ-AgI薄膜の直流電気伝導率の延び変形依存性を示す。

0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5

102 103 104 105 106

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

[eV]

0 [ -1cm -1]

延び率 [%]

▲△ 1000/T=3.27-3.4 [K-1]

●○ 1000/T=3.1-3.4 [K-1]

■□ 1000/T=3.1-3.27 [K-1]

-AgI thin film Thickness 8.7 m

Fig. 7-5-1 AgI薄膜の活性化エネルギーの延び変形依存性

延び率の増加に伴い活性化エネルギーが増加することが分かった。これは薄膜の延伸に よって、活性化エネルギーを増加する方向に結晶frameworkが変形したものと考えられる。

活性化エネルギーの増加率と延び率の関係の妥当性を評価するためには、分子動力学法な どによる原子レベルでのシミュレーションを行う必要があるが、今後の研究課題としたい。

しかし、もし結晶frameworkが構造的に変形するならば、それはX線回折測定によって観 測できる可能性がある。そこで、延び変形前の薄膜と延び変形後の薄膜のX線回折を測定 した。

第 6 節 延び変形させたβ-AgI薄膜のX線回折

延び変形前の薄膜と延び変形後の試料のX線回折測定を行った。延び変形後の薄膜は延 ばした状態でスライドガラスに接着剤(アロンアルファEXTRA4020)で固着した。延び変形 前の薄膜にマーカーとして極細の傷を平行に2カ所つけ、その後延び変形を加えた状態で スライドガラスに固着し、マーカー間の距離の変位を光学顕微鏡で測定し、延び率を算出 した。

β-AgI薄膜における延び変形前と延び変形後のX線回折測定回折パターンをFig.7-6-1に、

2θ = 22.5〜24.5度における回折パターンの拡大図をFig. 7-6-3に示す。

20 30 40 50

(b)

2  [deg]

Int ens it y [ A rb . U ni ts] (a) 0 0 2 1 0 2 1 1 0 1 0 3 1 1 2

延び率 1.0 % 延び率 0.0 %

Fig. 7-6-1 β-AgIのX線回折測定回折パターン (a)延び変形前(延び率0.0 %) (b)延び変形後(延び率1.0 %)

22.5 23 23.5 24 24.5

延び率 1.0 %

2  [deg]

002

Inte ns it y [ A rb. U ni ts ]

延び率 0.0 %

面間隔が示されている。これは、薄膜に平行な格子面の間隔が短くなっていることを示し ている。すなわち β-AgI 薄膜の延び変形に対する活性化エネルギーの増加は、β-AgI の結

晶frameworkが延び方向のイオン伝導を阻害するような変形をすることに起因すると考え

られる。

Table 7-6-1 β-AgI薄膜の延び変形前と延び変形後の面間隔

面間隔 dhkl [Å]

h k l *0.0 *1.0 変化率 [%]

002 3.766 3.748 0.499

102 2.736 2.728 0.297

110 2.300 2.295 0.196

103 2.120 2.118 0.134

112 1.961 1.958 0.163

*延び率

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