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経済波及効果シミュレーション

1.新居浜市の現状及び課題と対応策の方向性

本章においては、これまで分析してきた新居浜市経済の推移と現状、産業連関表を活 用した地域経済構造の分析結果から、地域の課題等の洗出しと対応策の方向性を検討す る。合わせて、対応策についての経済波及効果シミュレーションを行い、有効性の検証 を行う。

(1)企業城下町の特徴と課題

現状及び課題 方向性

住友関連企業の動向

・生産そのものに留まらず、生産波及効果 や従業員の消費等を含め、新居浜市経済 への影響度が非常に高い。

影響度の把握と対応

・生産増加の影響把握と、支援策の検討。

・拠点間の競争に伴う新居浜地域での生産 縮小の可能性と影響度合いの把握、企業 留置策の検討。

企業集積の活用

・移輸出だけでなく移輸入も比較的大き い。

・地域における製造業の企業集積を活用し た市内生産品の利用促進が課題となる。

地域内のマッチング拡大

・市内からの調達を増やす(自給率の向上)

ことによる、地域内の資金循環の拡大、

経済波及効果の拡大策の検討。

(2)地域製造業の振興

現状及び課題 方向性

地域中小企業の技術力、営業力向上

・地場中小企業の活性化、競争力向上が継 続的な課題である。

域外マネーを獲得できる企業の拡大

・住友関連企業以外への販路開拓により、

域外マネーを獲得できる企業群の裾野 拡大を図る。

新分野への進出支援と企業誘致

・新分野進出、企業立地の促進による多様 な企業の集積は、景気変動への抵抗力を 高める可能性がある。

成長分野を始めとする新分野への取組支 援

・先端部素材等に係る企業誘致の波及効果 の検証と効果拡大策の検討。

産業連関表分析に基づく課題

・地域経済構造分析に基づく、比較優位な 産業の発掘。

「影響力の大きい業種」の検証

・「産業外生化効果」の大きい業種の振興 の可能性検討。

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(3)人口減少、社会構造の変化への対応

現状及び課題 方向性

人口減少、少子高齢化への対応

・市場規模、労働力確保の両面において課 題となる。

人材の育成と多様な働き方への対応

・人材育成や処遇改善、人材マッチングへ の支援を行い、人材の定着を図る。

・安定的な雇用の確保と多様な働き方への 対応から、「働けるまち」「住みたいまち」

としての魅力を高める。

人口の社会減少傾向

・市内の人口は自然減、社会減の双方が重 なって減少傾向が続いている。

定住人口の増加

・通勤流入により昼間人口が多くなってい るため、市内定住の対象となる。

・市外転出者の抑制と合わせ、定住人口増 加による消費拡大等を期待できる。

交流人口増加

・「新居浜太鼓祭り」や「別子銅山の産業 遺産」など、地域資源の更なる活用の可 能性がある。

交流人口増加(観光客の誘致)

・交流人口増加、観光客の誘致による消費 拡大と関連産業の地域内循環拡大が期 待できる。

公共投資の動向

・今後の財政見通しの中で、従来型の公共 事業の継続、拡大を期待することは困難 である。公共投資に重点を置いた景気刺 激策の継続的な拡大は見込めない。

公共投資の効果検証

・公共施設の長寿命化対応、公共施設マネ ジメントの取組を踏まえた公共投資の 波及効果を検証する。

53 2.経済波及効果の算出の留意点

(1)産業連関分析の前提条件

① 需要の発生に対して、生産はすべて対応できる。

(品切れ、生産不足は発生しない)

② 生産に必要な投入構造は、短期的には変化しない。

(技術進歩による生産効率化、資材価格の変動などを反映しない)

③ 生産が2倍になれば、投入量が2倍になるなど、正比例の関係にある。

(生産設備の投資による波及効果や生産規模拡大による生産効率の変化などは反 映しない)

④ 生産波及が途中で中断することはない。

(在庫調整による波及の中断などはなく、波及効果が無限に続くものとしている)

(2)産業連関分析の留意点

上記(1)の通り、産業連関表を用いた経済波及効果の算出には、現実の経済活動 と異なる点があり、理論上の数値となることに留意が必要である。

また、産業連関表は1年間の経済活動の結果を取りまとめたものであり、それに基 づいて経済波及効果を算出する一方で、経済波及効果の発生やその伝播の仕方は様々 であり、金額的な効果の発生に要する期間を特定することはできない。直接効果(支 出額、需要の発生)についても一時的な場合や継続的なものがあり、同様に効果発生 の時期を特定することは難しいことに留意する必要がある。

(経済波及効果シミュレーションに係る消費性向の設定について)

経済波及効果のシミュレーションにおいては、市内の直接的な需要増加を示す「直 接効果」、直接効果に基づく生産波及を示す「一次効果」、雇用者所得の増加を通じて 民間消費支出の増加の効果を図る「二次効果」を算出する。「二次効果」の算出にあ たり、雇用者所得の増加のうち民間消費支出に回る割合を設定する必要がある。今回 のシミュレーションでは、新居浜市の小売業販売額などから、消費性向が低い可能性 を考慮し、平成 24 年(2012 年)家計調査に基づく松山市の消費性向 0.725 から2割 を減じた 0.58 を用いる。

54

(百万円、人)

直接効果 一次波及効果 二次波及効果 合計

生産誘発額 10,000 1,764 531 12,295

粗付加価値誘発額 2,645 826 374 3,845

雇用者所得誘発額 992 418 136 1,546

市のGDP押し上げ効果 0.78%

雇用者創出 246

(百万円、人)

直接効果 一次波及効果 二次波及効果 合計

生産誘発額 10,000 966 259 11,225

粗付加価値誘発額 2,592 449 182 3,224

雇用者所得誘発額 482 206 66 754

市のGDP押し上げ効果 0.66%

雇用者創出 124

(百万円、人)

直接効果 一次波及効果 二次波及効果 合計

生産誘発額 10,000 561 1,015 11,576

粗付加価値誘発額 4,056 267 715 5,037

雇用者所得誘発額 2,545 151 259 2,956

市のGDP押し上げ効果 1.02%

雇用者創出 353

3.経済波及効果シミュレーション

(1)企業城下町の特徴と課題

① 住友関連企業の需要増減の影響(留置及び支援策の必要性)

対象部門:有機化学工業製品、非鉄金属、はん用機械 ア.シナリオ

新居浜市の歴史と産業にとって住友グループの存在の大きさは言うまでもなく、

鉱山業から派生した各関連事業とともに市内に立地する住友企業の今後の動向は、

生産面のみならず地域経済の将来に大きな影響力を持つ。

こうした状況の下、住友関連企業の占める割合が高い産業部門に年間 100 億円 の域外需要が新たに創出された場合(それに対応して生産を増加させた場合)の 経済波及効果を試算する。

なお、経済波及効果は直接効果、一次効果(生産の波及)及び二次効果(消費 支出の増加による生産の波及)の合計により算出する。

イ.分析手順(計算の前提)

新居浜市産業連関表に基づく経済波及効果算出ツールを用いて、対象の3部門

(有機化学工業製品、非鉄金属、はん用機械)の直接効果(市内最終需要)を 100 億円増加させることにより算出する。

ウ.算出結果

・有機化学工業製品の 100 億円の需要増加

・非鉄金属の 100 億円の需要増加

・はん用機械の 100 億円の需要増加

55 エ.特徴(影響の大きい業種)

算出結果による次ページ以降の表からは、自部門への生産誘発を除くと、有機 化学工業製品の需要増加に対して、建設、電力等の順に生産波及効果が大きい。

また、同様に非鉄金属については運輸・郵便、対事業者サービス、はん用機械に ついては、不動産、商業の順に生産波及効果が大きい。

なお、各部門への需要の減少(生産の減少)が発生すると、同じ割合でマイナ スの効果が発生する。

56

(百万円、人)

直接効果 一次効果

生産誘発額 生産誘発額 雇用者所得 誘発額

市内への

消費支出額 生産誘発額 生産誘発額 粗付加価値額 雇用者所得

誘発額 雇用者創出

農業 0 1 0 2 3 4 2 0 0

林業 0 0 0 0 0 0 0 0 0

水産業 0 0 0 0 0 0 0 0 0

鉱業 0 2 0 -0 0 2 1 0 0

飲食料品 0 1 0 23 26 27 11 4 1

繊維製品 0 1 0 3 3 4 2 1 0

木製品・家具 0 1 0 0 0 1 0 0 0

パルプ・紙 0 3 1 0 1 5 2 1 0

化学肥料 0 1 0 0 0 1 0 0 0

無機化学工業製品 0 80 8 0 0 80 28 8 1

石油化学基礎製品 0 0 0 0 0 0 0 0 0

有機化学工業製品 10,000 556 1,047 0 0 10,556 2,792 1,047 131

合成樹脂 0 43 4 0 0 43 11 4 1

化学繊維 0 0 0 0 0 0 0 0 0

医薬品 0 2 0 1 1 3 1 0 0

石油・石炭製品 0 0 0 0 0 0 0 0 0

プラスチック・ゴム 0 8 2 0 0 8 3 2 0

窯業・土石製品 0 2 0 0 0 2 1 0 0

鉄鋼 0 0 0 0 0 0 0 0 0

非鉄金属 0 1 0 0 0 1 0 0 0

金属製品 0 12 5 0 1 13 7 5 1

はん用機械 0 0 0 0 0 0 0 0 0

生産用機械 0 0 0 0 0 0 0 0 0

業務用機械 0 0 0 0 0 0 0 0 0

電気機械 0 0 0 1 1 2 1 0 0

情報・通信機器 0 0 0 0 0 0 0 0 0

電子部品 0 0 0 0 0 0 0 0 0

輸送機械 0 2 0 1 1 3 1 1 0

その他の製造工業製品 0 1 0 1 2 3 2 1 0

建設 0 238 80 0 5 244 130 82 22

電力・ガス・熱供給・水道 0 221 30 14 19 241 124 32 2

廃棄物処理 0 11 4 1 3 14 7 5 1

商業 0 73 26 55 61 133 87 49 17

金融・保険 0 45 13 20 30 75 61 21 5

不動産 0 18 0 161 166 184 166 5 2

運輸・郵便 0 207 91 25 31 238 155 105 18

情報通信 0 23 6 21 27 50 31 13 1

公務 0 0 0 3 3 3 2 2 0

教育 0 3 2 13 13 16 11 10 2

研究 0 94 45 0 1 95 57 45 18

医療・福祉 0 0 0 50 51 51 32 27 7

その他の公共サービス 0 4 3 10 10 15 11 10 0

対事業所サービス 0 104 41 6 17 121 77 48 8

対個人サービス 0 1 0 53 54 54 32 17 7

事務用品 0 4 0 0 1 4 0 0 0

分類不明 0 0 0 0 0 0 -0 0 0

合計 10,000 1,764 1,411 464 531 12,295 3,845 1,546 246

二次効果 総効果

0 100 200 300 400 500 600 700 800 2,700 2,800

農業 林業 水産業 鉱業 飲食料品 繊維製品 木製品・家具 パルプ 化学肥料 無機化学工業製品 石油化学基礎製品 有機化学工業製品 合成樹脂 化学繊維 医薬品 石油・石炭製品 ラスチックゴム 窯業・土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 はん用機械 生産用機械 業務用機械 電気機械 情報・通信機器 電子部品 輸送機械 の他の製造工業製品 建設 電力・ス・熱供給・水道 廃棄物処理 商業 金融・保険 不動産 運輸・郵便 情報通信 公務 教育 研究 医療・福祉 の他の公共サービ 対事業所サービ 対個人サービ

(百万円) 部門ごとの粗付加価値額

・有機化学工業製品の 100 億円の需要増加

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