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第4章 日中言語話者の表現選好と知覚・記憶の関係に関する実験

4.6.3 眼球運動のデータ

4.6.3.1 累積注視時間(Cumulative Gaze Duration)

2 つのタスクにおける両言語話者の終点領域と道具領域の注視時間の累積を、それ ぞれ図4.8と図4.9に示す。これらの図から見ると、2つのタスクにおいて両言語話者 の注視時間では終点領域の注視時間が道具領域の注視時間より多そうである。

0.07

-0.12

-0.80 -0.60 -0.40 -0.20 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80

Japanese Chinese

Accuracy of Endpoint-changed minus Instrument-changed

48

図 4.8 2 つのタスクにおける日本語話者の各領域の累積注視時間:縦軸は 10 個の 移動事象の累積注視時間の全日本語話者での平均、横軸は左から口述タスクの終点興 味領域、道具興味領域、干渉記憶タスクの終点興味領域、道具興味領域。エラーバー は標準偏差。

図 4.9 2 つのタスクにおける中国語話者の各領域の累積注視時間:縦軸は 10 個の 移動事象の累積注視時間の全中国語話者での平均、横軸は左から口述タスクの終点興 味領域、道具興味領域、干渉記憶タスクの終点興味領域、道具興味領域。エラーバー は標準偏差。

2 つのタスクにおいて、日本語話者と中国語話者が終点と道具に対して注視選好が

6.87

3.69

8.30

2.05

0 2 4 6 8 10 12 14

Endpoint Instrument Endpoint Instrument

Description Memory

Cumulative Gaze Duration (s)

7.14

3.70

8.40

2.92

0 2 4 6 8 10 12 14

Endpoint Instrument Endpoint Instrument

Description Memory

Cumulative Gaze Duration (s)

49

あるかどうかを調査するために、両言語話者の終点領域の注視時間と道具領域の注視 時間の差を分析した。正の数値は終点の方をよく注視し、負の数値は道具の方をよく 注視し、0 に近い数値は終点や道具に対して注視の選好がないことを意味する。両言 語話者それぞれの平均を図4.10に示す。2つのタスクにおいて両言語話者の注視時間 の注視選好を確かめるために、一標本のt検定を行った。検定の結果によると、2つ のタスクにおいて両言語話者が終点を注視する時間が多かった(口述タスクの日本語 話者: t (27) = 4.993, p < 0.001, 口述タスクの中国語話者: t (27) = 7.202, p < 0.001 ; 干 渉記憶タスクの日本語話者: t (27) = 10.150, p < 0.001, 干渉記憶タスクの中国語話者:

t (27) = 7.729, p < 0.001 )

図 4.10 から見ると、2 つタスクにおける両言語話者間に差がなさそうに見える。2 つタスクにおける両言語話者の各領域の注視時間に有意差があるかどうかを確かめ るために、両言語話者の終点領域の累積注視時間と道具領域の累積注視時間の差につ いて二元配置混合計画分散分析を行った。タスクの主効果が有意であった(F(1,54) =

39.789, p < 0.001)。つまり、言語使用を遮断しない口述タスクより言語使用を遮断す

る干渉記憶タスクのほうが終点領域の注視時間が多かった。一方、言語の主効果は有 意ではなかった(F(1,54) = 0.107, p = 0.745)。つまり、違う言語表現の選好がある言語 話者の注視時間に差がなかった。また、タスクと言語の交互作用は有意ではなかった

F(1,54) = 1.634, p = 0.207)。

図 4.10 2 つタスクにおける両言語話者の各領域の注視時間の差:縦軸は 10 個の 移動事象の終点領域の累積注視時間と道具領域の累積注視時間の差の各言語話者で

0.06 0.07

0.13

0.11

-0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20

Japanese Chinese Japanese Chinese

Description Memory

Average differece of proportion of looking times (End- Insturment)

50

の平均、横軸は左から口述タスクの日本語話者、中国語話者、干渉記憶タスクの日本 語話者、中国語話者。エラーバーは標準偏差。

全体の注視時間の分析結果を以下にまとめる。2 つのタスクにおいて両言語話者と も道具より終点のほうが注視の時間が多かった。また、日中言語話者の注視時間はタ スクによる違いが見られた。

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