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米国 EPA と OECD の発達神経毒性試験ガイドラインの比較

EPA

OECD

の発達神経毒性試験ガイドラインの比較

EPAとOECDの発達神経毒性試験ガイドラインの比較・対比表を以下に示す。

[EPA/OECD DNT TG 比較・対比表]

OECD guideline 426 Developmental Neurotoxicity

EPA Health Effects Test Guidelines OPPTS 870.6300 Developmental Neurotoxicity

Study

【母動物】

供試動物:ラット* 動物数:20 腹/群

投与用量:対照群 (sham-operated/媒体投与) 低用量

中用量

高用量 -計4用量 公比2-4になるよう設定

投与方法:経口投与

・胃管内経口投与 ・混水/混餌

投与期間:妊娠6日**~出産後21日 観察手順:

肉眼的観察:1日1回 詳細な症状観察:10 匹/群

妊娠6日**~21日の間に2回 哺育1日***~21日の間に2回 毒性徴候の発現時期、程度、持続期間を記 録

体重a):投与期間中は週1回

出産日または出産間近、さらに出産 後

哺育21日

a) 胃管内投与の場合、週2回 摂餌量および飲水量測定

混餌投与または混水投与の場合、妊娠期間 中

及び授乳期間中、摂餌量または飲水量を週 1回計測する

【母動物】

供試動物:ラット (F344系統を除く)*

動物数:20 腹/群

投与用量:対照群 (sham-operated/媒体投与) 低用量

中用量

高用量 -計4用量 投与方法:経口投与

投与期間:妊娠6日**~出産後10日 観察手順:

肉眼的観察:1日 1回、投与前に実施 ホームケージ外における毒性徴候:

10 匹/群

妊娠6日**~21日の間に2回 哺育1日~10日の間に2回

毒性徴候の発現時期、程度、持続期間を記録 体重:投与期間中は週1回

さらに出産日、出産後11日、

21日 (離乳日)

[EPA/OECD DNT TG 比較・対比表 (つづき)]

OECD guideline 426 Developmental Neurotoxicity

EPA Health Effects Test Guidelines OPPTS 870.6300 Developmental Neurotoxicity

Study

【児動物】

供試動物数 (同腹児数調整):♂4 +♀4匹/腹 (場合によっては♂5+♀3匹/腹)

観察手順:

基本的に各試験項目に使用する児動物数は

20+20/

肉眼的観察:観察は毒性徴候、死亡の有無を 含む

ケージサイドから1日1回実施 全ての児動物 (♂4+♀4匹/腹) 詳細な症状観察:

♂1+♀1匹/腹 (♂20+♀20匹/群) 離乳前…週1回

思春期・若齢期…2週に1回

発達指標:全ての児動物 (♂4+♀4匹/腹)

・耳介開展、眼瞼開裂、切歯萌芽

・体重…離乳前は週1回、離乳後は2週に 1回

性成熟指標:全ての児動物 (♂4+♀4匹/腹) 膣開口、包皮解裂

行動発生:♂1+♀1匹/腹 (♂20+♂20匹/群) 離乳前に実施

立ち直り反射、正向反射、自発運動 自発運動:♂1+♀1匹/腹 (♂20+♀20匹/群) 出生後 (PND)13、17、21、60-70日に実施 運動及び感覚機能:

♂1+♀1匹/腹 (♂20+♀20匹/群) 思春期・若齢期 (PND60-70)に実施

伸筋スラスト反応、立ち直り反射、

聴覚性驚愕馴化、誘導電位

【児動物】

供試動物数 (同腹児数調整):♂4 +♀4匹/腹 (場合によっては♂5+♀3匹/腹)

観察手順:

基本的に各試験項目に使用する児動物数は

10+10/

肉眼的観察:観察は毒性徴候、死亡の有無を 含む

ケージサイドから毎日実施 ホームケージ外における毒性徴候:

♂10+♀10匹/群

PND 4、11、21、35、45、60 発達指標:♂10+♀10匹/群

・体重…出生直後、PND4、11、17、21 離乳後は2週に 1回

・膣開口、包皮解裂 自発運動:♂10+♀10匹/群

出生後13、17、21、60±2日に実施 聴覚驚愕試験:♂10+♀10匹/群 離乳時 (PND21) 及びPND60前後

[EPA/OECD DNT TG 比較・対比表 (つづき)]

*:F344 系統のラット、またはラット以外の哺乳類を用いる場合、その系統または種を選

択した理由を記載

**:交配翌日、膣栓または精子が確認された場合を妊娠0日とする

***:出生児が認められた日を記録、またこのときを出生0日とする

****:PND11 における神経病理学的検査では、脳重量測定に使用した児動物から雌雄各 6

匹を選抜しこれを病理組織学的検査に用いる。但し、PND60±2 における病理組織学的 検査では脳重量測定の動物と同一でなくて良い。

OECD guideline 426 Developmental Neurotoxicity

EPA Health Effects Test Guidelines OPPTS 870.6300 Developmental Neurotoxicity

【児動物】

学習及び記憶試験:

♂1+♀1匹/腹 (♂20+♀20匹/群) 離乳後(PND25±2)、PND60-70に実施

受動回避、位置遅延見本合わせ、

嗅覚の状態、モーリスの水迷路、

ビール迷路、シンシナティ迷路、

放射状迷路、T型迷路

神経病理学的検査:♂10+♀10匹/群 PND22、60-70

脳重量測定

病理組織学的検査 ・HE染色

・特殊染色

Luxol fast blue/Cresyl violet染色 (ミエリン染色)

Bielschowsky’s、Bodians鍍銀染色 (中枢及び末梢神経)

・免疫染色

GFAP (星状膠細胞)

レクチン組織化学 (小膠細胞) Fluoro-jade (壊死検出)

・形態計測

【児動物】

学習及び記憶試験:♂10+♀10匹/群 離乳時(PND21)、PND60前後に実施 神経病理学的検査:♂10+♀10匹/群

PND11、PND60±2 (試験終了日) 脳重量測定:♂10 + ♀10 匹/群

病理組織学的検査:♂6 + ♀6 匹/群****

・HE染色 ・特殊染色

Bielschowsky’s、Bodians鍍銀染色 ・免疫染色

GFAP染色

・形態計測

EPAOECDの発達神経毒性試験ガイドラインの相違点

上記のガイドライン比較・対比表に示す如く、米国EPAとOECDの発達神経毒性試験ガイ ドラインの基本的内容については大きな違いはないが、被験物質の投与期間あるいは病理 組織学的検査対象動物数など若干の違いが認められる。両ガイドラインにおける相違点に ついて以下に要約する。

1) 投与期間及び投与方法における相違点

OECDでは妊娠6日から出産後21日 (離乳日) までであるのに対し、EPAでは妊娠6日か ら出産後11日までである。ラットの神経板形成は妊娠8から9日 (ヒトは妊娠3週) 、brain growth spurt period (脳成長期間) は出生後 0 から 30 日であり、さらに cessation of cell proliferation in whole brains (全脳における細胞増殖休止) は出生後17から20日と報告され ている (U. Hass / Reproductitve Toxicology 22 (2006) pp.148-156)。発達神経毒性試験実施目 的は化学物質の経胎盤・経乳汁曝露が児動物の神経系に対する影響を評価とするならば、

投与期間はOECD案が適していると判断できる。

投与方法はEPAでは強制経口投与を前提としているのに対し、OECDでは強制経口投与の ほか混餌投与もしくは混水投与の記載がある。この場合、摂餌量または飲水量の測定を実 施しなければならない。

2) 試験手順における相違点

母動物:OECD では母動物に対する詳細な観察を要求している一方で、EPA では毒性徴候 の観察という記述であるが、検査項目としてほぼ一致した内容と考える。発達神経毒性試 験は被験物質の母動物に対する直接作用、さらに経胎盤・経乳汁曝露を受けた児動物への 作用を評価することにより、母児動物相関性の有無を検討することが可能である。但し、

成獣に対する神経毒性学的評価と重複した内容であるため (神経発生学概論,谷村孝・木 原隆英 著,2003年)、検査項目あるいは評価基準 (数値化=スコア) を参考して問題ないか を慎重に検討をしなければならない。

児動物:

[動物の割り当て]

検査に用いる児動物数は基本的にEPAでは各群雌雄10匹に対し、OECDでは各群雌雄20 匹 (1腹あたり雌雄各1匹) である。EPAでは複数の試験に同一の児動物が用いられないよ

うになっているが、OECD では複数の試験で同一の児動物が用いられる。運動及び感覚機 能検査、または学習及び記憶試験など先行する試験が後の検査に影響を及ぼす可能性が考 えられる。また一方で、同じ児動物で複数の試験を実施することの有効性も考えられる。

被験物質の特性ならびに試験目的を明確にし、適切な動物の割り当てを考える必要性があ ると考えた。

病理組織学的検査、脳重量及び形態計測にはいずれのガイドラインも各群雌雄10匹を採用 する。但し、EPAでは組織学的検査及び形態計測には、そのうちの各雌雄6 匹を用いると している。

[検査項目]

OECD ガイドラインでは各検査項目についての概要や該当する検査例が詳細に記載されて いるのに対し、EPA ガイドラインでは学習及び記憶検査以外では検査例を含む詳細な記載 はない。また、OECDで設けている運動及び感覚機能検査は EPAではなく、OECDで検査 例として掲げている自発運動、聴覚驚愕反応検査を検査項目として記載されている。

OECD または EPA ガイドラインにおける検査項目やそれに該当する種々の検査について、

被験物質の特性や予測される神経毒性学的変化を考慮して、適切に選択されることが望ま れると考える。

病理学組織学的検索の内容としてOECDではEPAより多くの特殊染色に加え免疫染色など の実施を考慮するように求めている。

[検査実施時期]

大きく異なる点は、病理組織学的検査の実施時期である。EPAガイドラインは出生後11日 及び60±2日 (試験終了) であるのに対し、OECDガイドラインでは基本的に出生後22日、

60-70 日に実施する。出生後11日の脳は水分が多く脆弱である。また、この頃は海馬の歯

状回と同様に小脳の形成時期でもあり髄鞘形成が不十分であり、脳の大きさは個体ごとに 様々である。さらに出生後 22-60 日の間で分化、シナプス発生、髄鞘形成が起こることか ら、離乳期である出生後21日頃では脳の形状は本質的に成熟動物と変わらないが、脳の大 きさや髄鞘が不十分であると考えられている。これらのことから、出生後11日における病 理組織学的検査、脳重量及び形態計測は正しい評価は困難と考え、OECD ガイドラインに 基づく検査時期が適切であると考えた (Garman, RH /Environ Health Perspectives 109 (2001) pp.93-100, W.Kaufmann, S. Groters/Reproductive Toxicology 22 (2006) pp.196-213, U.

Hass/Reprpductive Toxicology 22 (2006) pp.148-156)。

児動物における検査時期をEPAでは定めているのに対し、OECDでは発達指標、性成熟な らびに行動発生試験の実施時期を明確に定めてはいない。いつ (日齢) どのような身体ま たは行動に変化が起きるかついて、様々な文献を参考にして計画を立てる必要がある (第 21 回 神経行動毒性研究会講演 2008 年)。離乳までの間は脳の発達と同様、個体ごとに身 体の発育や行動発生の開始時期は異なるため、EPA のように各時点でのみの観察では正し く評価できないことが予測される。そこで、1 日 1 回の観察の際に記録を採取することが 望ましいと考える。

[OECDガイドラインのみに記載]

OECDガイドラインでは追加検査として、in vivoあるいはin vitroの検査の実施が可能であ るとの記載がある。

相違点の総括

OECDガイドラインは、基本的にEPAガイドラインに沿った内容であるが、いくつかの点 で異なる。さらに検査の概要や該当する種々の検査例は詳細であるが、非常に繁雑すぎる 面がある。また一つの試験に供する児動物数も多く、また同一の動物で複数の試験を実施 する場合もあるため、先行する試験が後の試験の評価に影響を及ぼすか否かを検討すべき と考える。OECDガイドラインとEPAガイドラインの内容を精査し、また各ガイドライン に従った試験報告あるいは文献、テキスト等を参照し、それそれぞれの矛盾を解決するこ と。さらに、ガイドラインに従ったパイロット試験または陽性対照試験を実施してデータ を収集し、最も適した試験計画、検査項目や実施時期を構築することが必要と考える。

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