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第 5 章 評価と現状での問題点 48

5.4 問題点

 現状の問題点として、まず米国漫画作品で頻繁に用いられるモーションブラー、

ハイライトの1つである現実的ではない直線的な光沢感を出すために用いるハイ ライト等が未実装である。この2つの表現を再現出来る様になれば、より米国漫 画らしい画像を描画する事が可能となる。

 また、現時点では光源は平行光源のみ使用可能で、点光源やスポットライト、天 空光源などには対応していない。前述の通り、米国漫画では光線表現などの光の 表現を頻繁に用いる。そこから発生する光を元に陰影を表現できる様にするため には、平行光源以外にも対応できるようにする必要がある。

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むすび

 米国漫画調のグラフィックを3DCGを用いてリアルタイムに描画する事を目標 として研究に取り組んだ。その成果として、セルシェーディングを応用し、米国 漫画の絵柄の特徴である、色の単純化・斜線やスミベタによる陰影表現・輪郭線 の描画に加え、米国漫画で頻繁に用いる特殊効果である光線表現・ハイライト表 現を3DCGを用いてリアルタイムに再現するための手法を 完成させた。そして、

本論文で提案した米国漫画調レンダリングの手法は、陰影に用いる斜線をテクス チャを用いて再現するという方法を取ったため、斜線テクスチャを変更する事によ りモデルの材質などに応じて斜線の表現に変化を持たせる事が出来ると共に、斜 線以外の陰影表現なども容易に再現できること、また通常のレンダリングと比較 して処理速度の低下が少ない事を証明し、その有用性を確認した。

 本手法を用い、アクションシーンが多く迫力のある米国漫画をリアルタイム3DCG 上で再現することにより、その場面全体をあらゆる角度から眺める事が可能とな り、より臨場感がますであろう。さらに、現在ではリアルなシェーディングや単純 なセルシェーディングを用いる事が多い米国漫画作品を題材としたゲームなどの 3Dコンテンツを、より原作の米国漫画に近い画調で制作する際に大いに役立つだ ろう。

 問題点としては米国漫画で頻繁に用いられるモーションブラーなどの特殊効果 などを再現する手法が完成していない点、現時点では平行光源にしか対応してい ない点などがある。また陰影に用いる斜線を、どの視点から見ても不都合なく表 示され、また一定の向きに揃ってしまわない様に描画する手法などを完成させる 事により、更に有効な手法に発展できるであろう。また、陰影を描画する際、どの ような状況・材質の表現に対してどのように斜線・クロスハッチング・スミベタ等 を使い分ける事が適しているかなどを深く考察することにより、本手法の利用の 幅を広げられるのではないだろうか。

 本研究はFIT2003において”リアルタイム3DCGにおける米国漫画調レンダリン

における米国漫画調レンダリングの開発”[28]として発表した内容を含む。

謝辞

 本研究を進めるにあたり、研究や論文執筆など幅広くご指導して戴いた渡辺大 地講師、横井俊夫教授および和田篤氏、また大学院の講義やミーティングなどを 通じて助言を戴いた宮岡伸一郎教授および渕上季代絵教授に心より感謝いたしま す。

 また、アニメ作品からの画像の転載を快く許可して戴いたスタジオジブリ、書 籍からの画像の転載を快く許可して戴いたMPC、グラフィック社に心より感謝を 申し上げます。

参考文献

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画像の出典

図2.1,2.4,2.5,2.6(b) MPC”アメリカンコミックイラストレーションテクニック”

より

図2.2,2.3 グラフィック社”アメコミの描きかた”より

図2.6(a) スタジオジブリ”もののけ姫”より

学会発表論文

鈴木隼人, 渡辺大地, ”リアルタイム3DCGにおける米国漫画調レンダリングに関 する研究”, FIT2003, 2003.

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