第 3 章 鳴門・明石海峡の波形を用いた岡山市沿岸の津波波形の予測法の検討
3.5 簡易予測モデルの適用および精度検証
本節では前節の検討事項を踏まえ,簡易予測モデルの適応方法について述べる.簡易予 測モデルの手順は波高相関関係式による山田港到達時の波形への変換,山田港における両 海峡経由の予測波形の足し合わせの2段階に大きく分けられる.以下,各段階について具 体的な手順を説明する.
まず,それぞれの海峡部の波形を山田港到達時の各海峡経由の波形への変換する方法に ついて説明する.各海峡の外側の波形(図3-8,図3-9)を見ると,両海峡ともそれぞれ波
①が来る前の時点に地震発生時に波源域の北側で起こる地盤沈下の影響で水位が約 0.5 m 下がっていることが分かる.そこで,初期水位から 0.5 mを差し引いたT.P.0.79 mの線(図
3-8,図3-9の緑線)を津波の振幅の基準とし,両海峡の外側の津波波形(図3-8,図3-9
の赤線)から T.P. 0.79 mを差し引き図 3-15に示す振幅のグラフを求めた.それぞれの海 峡(外側)で各津波のピークが得られた時点で,その波高から,図3-10と図3-11で示し た近似式により求めた波高比 1と図3-12と図3-13に波ごとに示した波高比2を海峡外側 の津波の振幅に掛け合わせた.さらに各海峡(外側)と山田港の到達時間差分をそれぞれ の波形を横軸方向に平行移動させ,図 3-16の上から 1 番目と 2 番目の図に示すように各 海峡経由の山田港における津波波形を予測した.なお,各海峡(外側)の波形は波①によ る水位上昇が始まる時点(図 3-8,図 3-9 の補正開始点)から使用した.西側からの津波 の影響も考慮するため,地震発生から280分後から360分後にかけて一次関数的に0.32 m 水位が上昇するモデル(図3-16の上から3番目の図)を作成した.
次に山田港における両海峡経由の予測波形の足し合わせについて説明する.図3-4から 山田港においても波Ⅰが来る直前には地震時の地盤沈降の影響により初期水位から約 0.5 mの水位低下が起こっていることが分かる.そこでT.P. 0.79 mを津波の足し合わせの振幅 の基準とし,図3-16の3つのグラフを時点ごとに足し合わせた.
図 3-17は上記の方法で両海峡の波形から予測した山田港の波形(赤線)を 3.2.5 の津 波再現計算で得た結果(青線)と比較したものである.ここで図中の予測開始点までは津 波が山田港に到達していないため,水位は津波の足し合わせの振幅の基準の値である T.P.
0.79 mのまま表示している.この図から波Ⅰの波高がやや過大評価されていることが分か
る.図3-10をみると波高比1の近似式が波①のデータ(赤点)よりも上側を通っているこ とから,鳴門海峡から入ってくる波①の波高比 1を過大評価したことが原因として考えら れる.しかし,鳴門海峡と明石海峡を経由した津波が重なりあう波Ⅱから波Ⅳの波高及び 最大津波高はほぼ正確に再現できていることが分かる.
図3-15の鳴門海峡外側の振幅のグラフと図3-16の鳴門海峡経由の山田港の予測波高を 比較すると鳴門海峡外側では山田港に津波のピークが到達する約 80 分前に各波のピーク が観測され津波波高が得られることが分かる.また,この時点では岡山近海で重なり合う
図3-15 振幅のグラフ(左 鳴門海峡,右 明石海峡)
-4 -2 0 2 4
0 1 2 3 4 5
-0.5 0 0.5 1 1.5
0 1 2 3 4 5
振幅(m) 振幅(m)
波① 波② 波③ 波④
波① 波②
波③ 波④
地震発生からの経過時間(h)
図3-16 各海峡経由の山田港の予測波形
-1 -0.5 0 0.5 1
0 1 2 3 4 5 6
-0.5 0 0.5 1
0 1 2 3 4 5 6
0 0.2 0.4
0 1 2 3 4 5 6
振幅(m)
地震発生からの経過時間(h)
波② 波③ 波④
波① 波② 波③
鳴門経由の予測波形
明石経由の予測波形
豊後水道側からの津波上昇 0.32m
1 つ前の津波の波形が明石海峡外側で既に得られているため,山田港の津波ピークを到達 の約 80分前に予測可能である.
図3-17 山田港の津波波形の予測 0.0
0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
0 1 2 3 4 5
水位(T.P. m)
地震発生からの経過時間(h) 解析値
予測波形
波Ⅱ 波Ⅰ
波Ⅲ 波Ⅳ
予測開始点 T.P. 0.79(m)
振幅の基準線