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視点取得を取り入れるにあたりTeglasi & Rothman(2000)が、小学校の児童を対象に、

社会的問題解決の改善により攻撃的行動の低減を目的として開発したプログラムである STORIES(Structure, Themes, Opening and organizing communication, Reflection, Individuality, Experiential learning, Social problem solving)に注目した。これは「構造 化」された「テーマ」の「物語」を教材として使い、「個」の意見の尊重、「自由かつ組織 化されたコミュニケーション」を用いて、物語の登場人物の気持ちについて「熟慮」し、

理屈だけでなく実際に「問題解決」を「体験しながら学んでいく」という活動である。こ のプログラムの有益である点は、自由かつ組織化されたコミュニケーションを用いて、登 場人物の気持ちについて熟慮する点である。登場人物の気持ちについて熟慮することはそ の認知的行為を通して共感性を高めることを可能にし、更に自由かつ組織化されたコミュ ニケーションはお互いの情動や思考の共有を促すとされている。さらに、STORIESでは最 終的に「具体的にどのような行動をするべきか」の集団決定の段階まで進む。しかし、こ の最終段階の集団決定は先にも述べたような新たな葛藤等をひきおこしかねない問題があ ろう。

いじめ場面における被害者、加害者、第三者の情動や思考、行動に着目させることは、

三者各々への共感を促進させることにつながるであろう。ここでなぜ「三者」への共感を 促進させるのか。それは、単に加害行動の抑制や仲裁行動・支援行動の促進を促すだけで あれば、被害者への共感だけでよいだろうが、いじめとは被害者だけが苦しんでいるもの ではないと考えるためである。いじめ場面において最も辛い目に合っているのは紛れもな く被害者であろう。だが、加害者の行動の背景にはそのいじめ場面だけでは把握できない 悲しみや怒りがある場合もあるだろう。また、被害者を助けたくとも、それができないで いる第三者の葛藤も壮絶なものであろう。単に「加害者は被害者の気持ちを考えていない からダメだ」と一方的に言うのではなく、加害者の行動の背景を全員で共有することで、

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いじめについてクラス全体で解決へ向かっていける風土を作ることにもつながる。これは、

いじめ予防における二段構えのもう一つの構えである。

いじめとは被害者と加害者の間だけに生じるものではなく、実際のいじめ場面には多く の場合第三者が存在し、それが被害者・加害者に影響を与えており、第三者の行動によっ て加害者の被害者に対する攻撃が促進、または抑制されたり、被害者の孤独感の増大など に影響を与え、それと同時に第三者自身もまた、被害者・加害者から影響を受けている。

これら三者間に相互作用があるため、いじめの介入を行うにあたって、被害者・加害者・

第三者のいずれかに焦点を絞っていじめを把握するのではなく、いじめの重層構造モデル を前提とした支援が重要である。いじめ場面において、三者各々がどのように絡まりあっ ていじめ場面を構成しているのか、その構造を把握させることは、いじめの発生・維持へ の洞察を導くことになり、いじめ場面に対処する具体的行動の想定やその行動が及ぼす結 果の想像を促すものと考える。

第5節 実施方法の検討

本章では第 4 節までにおいて、予防プログラムの作成にあたって中核となる研究を紹介 した。次に考えるべきは、それらの効果をいかに引き出すかである。本節では本章第 1 節 から第 4 節で紹介したことを予防プログラムの中核に据え、それらの効果をいかに引き出 すかに留意し、心理劇、人形劇、KJ法のそれぞれを応用した3つの予防プログラムを考案 した。以下ではそれぞれの特徴を活かし、それを取り入れて作成した予防プログラムの草 案を紹介していく。3つの草案は、実施対象校と予防プログラム実施について検討を行う際 に対象校側に提出したものをやや簡略化したものである。予防プログラムの作成にあたっ ては、学校のカリキュラムに支障が出ないよう、授業2コマ分(100分)程度の時間で実施 が可能なものであり、また、50 分ずつの二度に分けての実施になる可能性も考慮し、その ような場合にも対応ができるように留意して検討を行った。心理劇、人形劇、KJ法のそれ ぞれを応用した3つのプログラムは、後半の50分で実施するものとして検討したものであ る。そして、それら3つの応用プログラムは表3-1の導入プログラムの後に実施すること を想定していた。まずは導入プログラムを紹介する。

(1)導入プログラム

導入プログラムでは、後半の応用プログラムを効果的に実施するために、生徒たちがい じめについて関心を持ち、いじめについて考える準備をすることを目的としている。

53 表3-1 導入プログラム

活 動 内 容 導 入 【いじめとは何かについて考える】

・生徒に車座になってもらい、1回目の調査で挙がったいじめの内容をあらかじ めカードにしておき、それを生徒に引かせて読み上げてもらう。それらについ て“×××超無理”“×無理”“△なんとか”の旗を挙げさせる。

・「いじめってなんだろう?」と問題提起する(テーマを板書する)。

・付箋を配布し、“いじめ”と聞いて思いつくこと、感じることについて自由に 記入してもらう。 (累計時間20分)

実 施 ・生徒全員をポストイットを持って黒板の前に集合させ、書いてもらった付箋を 黒板に貼りつけてもらう。

【貼るルール】

①自分が書いたものについて、どれか1枚をみんなに紹介した後黒板に貼る。

②貼る場所は基本的に自由だが、“友達の書いたものと似ていると思ったものは 近いところへ”貼る。

・(全員1枚ずつ貼り終わったら)紹介した付箋以外の付箋を黒板に貼ってもら う。

①貼る生徒の順番は関係ない。

②貼る場所は“似ているものは近くに”。

・(全員が全ての付箋を貼り終わった)関係あるものを線で囲んでグループに分 けたり、矢印で繋いだりする。

終 結 ・全体のふり返りをする。

・ふり返り用紙を配布し、一旦家に持ち帰って書いてきてもらう。

(累計時間50分)

(2)3つの応用プログラム 1)心理劇

心理劇はモレノが考案した、ドラマの形式を用いた集団心理療法である。心理劇にはい くつかの技法がある。予防プログラムの作成にあたって心理劇に注目した理由は、心理劇 の技法である「二重自我(ダブル)」と「役割交換」にある。「二重自我」とは、主役のみ ならず、ある役についての補助自我がその役と同一の役を同時にとり、一体であるかのよ うに演ずることである。また、「役割交換」とは、主役を演じていた演者が他の役割を同じ ドラマ場面で交換して演ずることである(小澤・臺,1992)。この二重自我と役割交換をど のように用いるのかは、作成した草案を紹介しながらのほうが分かりやすいと思われる。

54 以下に示す表3-2が作成した草案である。

表3-2 心理劇を応用したプログラムの草案 活動内容

導 入 ・問題提起(「いじめの場面にはどんな人がいるでしょうか?」、「いじめをして いる人・いじめられている人・それを見ている人はどんな気持ちで、どんなこ とを考えているかな?」)。

・テーマの提示(「今日は“いじめをしている人・いじめられている人・それを 見ている周りの人はどんな気持ちなんだろう?、なにを考えているんだろう”

ということについてみんなと考えていきたいと思います」。テーマを板書)

(累計時間 5分)

Warm -up

・生徒が自由にロールプレイできる環境を整えるために、動いたり、声を出すこ とへの抵抗を下げるウォームアップのエクササイズを行う。

(累計時間10分)

導 入 ・今日やることの手順を説明する。

・3つのグループに分ける。 (累計時間15分)

準 備 ・グループで「演者」を担当する生徒と、演技の内容と「心の声」の内容につい て話し合う。

※時間が余れば練習してもらう。 (累計時間30分)

実 施 ・役割の順番を決める

・グループで話し合った演技をもとに心理劇を行う。

※1回の心理劇の時間は5分。

※これを3回行う(表3-3、表3-4参照)。 (累計時間45分)

終 結 ・ふり返りをする。

・ふり返り用紙の配布。 (累計時間50分)

まず、生徒を 3 つのグループに分け、加害者、被害者、第三者の役割をそれぞれのグル ープに担当してもらう。加害者担当のグループから複数人の演者を、被害者担当のグルー プからは一人の演者を、第三者担当のグループからは複数人の演者を用意し、どのような 演技をするか各グループで話し合って決定してもらう。そして、演者以外の生徒は皆、補 助自我を担当する。そして、この補助自我は二重自我の技法を以て加害者を演じる。つま り、加害者のグループは全員で加害者を演じるのである。そして、それは被害者のグルー プも、第三者のグループも同様である。ここにこのプログラムの1つの特徴がある。心理 劇は、①監督、②演者、③観客、④補助自我、⑤舞台の 5 要素により構成される(小澤・

臺,1992)が、このプログラムにおいて厳密には観客は存在せず、全ての生徒が加害者、

被害者、第三者のいずれかの立場で参加している。

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