水における管摩擦係数と界面活性剤水溶液における管摩擦係数とを比較し,界面活性 剤水溶液において抵抗低減効果がどの程度存在するかを調べるため,水の粘度を基にし たレイノルズ数 Rewを用いた.水および 3 種類の界面活性剤水溶液(500ppm×0.5,
500ppm×10,1500ppm×10)における上流域(20≦z/d≦40)の管摩擦係数と下流部
(60≦z/d≦90)の管摩擦係数をそれぞれプロットしたグラフをFig3-3に示す.また,
管摩擦係数λの算出式を(3.1)式に示す.なお,dは円管内径,l は測定間距離,ΔP は 測定した2点間の圧力損失,ρは密度(1[g/cm2]),𝑈̅は管内平均流を表す.
𝜆 = 𝑑
𝑙 𝛥𝑃
1
2
𝜌𝑈 ̅
2(3.1)
円管における管摩擦係数の乱流における理論式は(3.2),(3.3)式に示す通り,3×103≦ Rew≦8×104の領域ではブラジウス(Blasius)の式を用い,3×106≦Rew≦3×106の領 域ではプラントル-カルマン(Prandtl’s formula)の式を用いた.
𝜆 = 0.3164𝑅𝑒
−0.25(3.2)
1
√𝜆
= 2 log(𝑅𝑒√𝜆) − 0.8 (3.3)
なお,図中の実線はVirkの最大抵抗減少漸近線(14)(Virk’s maximum DR asymptote,
Virk’s MDRA)である.(3.4)式にVirkの最大抵抗減少漸近線の式を示す.
𝜆 = 1.28𝑅𝑒
−0.55(3.4)
第三章 -実験結果および考察-
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また,界面活性剤水溶液が水の管摩擦係数に比べ,どれほどの抵抗低減効果を生み出 しているか検証するために,各条件における抵抗低減率を算出した.500ppm×0.5お
よび500ppm×10における上流域(20≦z/d≦40)の抵抗低減率と下流部(60≦z/d≦
90)の抵抗低減率を算出した.この算出式を(3.5)式に示す.なお,λ は界面活性剤水
溶液における管摩擦係数,λwは水の乱流における理論式から算出した管摩擦係数を表 す.
抵抗低減率[%] = |𝜆𝑤−𝜆|
𝜆𝑤 × 100 (3.5)
第三章 -実験結果および考察-
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【考察】
Fig3-3(b)より,500ppm×0.5の溶液では,Rew=60000を超えると上流部では管摩擦係 数 λ が急上昇を始め抵抗低減効果が失われる様子が確認できるが,下流部では
Rew=75000まで抵抗低減効果が持続していることがわかる.抵抗低減率は,上流部で最
大45%,下流部で最大 60%であり,下流の方が抵抗低減効果が大きいことも確認でき
る.なお,上流部・下流部ともに抵抗低減効果が失われると,円管における管摩擦係数 の乱流における理論式に管摩擦係数λが遷移する様子が確認できた.このように
500ppm×0.5 の管摩擦係数λのグラフを見ると,管摩擦係数の遷移の様子は水の管摩擦
係数の遷移の過程に酷似しており,抵抗低減効果を持つ Rew の領域では水の層流理論 式にほぼ平行な傾きで管摩擦係数が減少し,一定の臨界レイノルズ数に達すると水の乱 流理論式に遷移することが分かる.
Fig3-3(c)より,500ppm×10の溶液では,測定を行った領域(30000≦Rew≦110000)に おいて,上流部・下流部ともに抵抗低減効果が持続することが確認できた.抵抗低減効 果は,上流部で測定したRewの領域で最大65%,下流部で最大75%であり,今溶液に
おいても500ppm×0.5の溶液と同様に下流部の方が上流部よりも大きな抵抗低減効果が
見られることが分かった.
Fig3-1の粘性特性結果と比較すると,500ppm×0.5の溶液ではShear thickeningの生じ るずり応力範囲は0.01[Pa]≦τw≦3.5[Pa]である.ここでFig3-6の管摩擦係数測定結果の 抵抗低減効果が見られた領域において生じたずり応力は,上流部(30000≦Rew≦60000)
において1.3[Pa]≦τw≦3.3[Pa]であり,下流部(30000≦Rew≦75000)において0.9[Pa]≦τw
≦3.4[Pa]であった.このことから,Shear thickeningを生じるずり応力範囲内で抵抗低減 効果が見られ,この範囲よりもずり応力が大きくなると抵抗低減効果は失われ,乱流理 論式まで管摩擦係数が遷移していくことが分かった.
第三章 -実験結果および考察-
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なお,500ppm×10 の溶液においても,Fig3-3(c)のように今回測定した範囲(30000≦
Rew≦110000)におけるずり応力は上流部において 0.6[Pa]≦τw≦3.5[Pa],下流部におい て0.6[Pa]≦τw≦3.5[Pa]であり,500ppm×10の溶液でShear thickeningを生じる0.1[Pa]≦τw
≦3.5[Pa]のずり応力範囲に収まっていることから,いずれのRewにおいても抵抗低減効 果が見られることがわかる.
Fig3-3(d)より,1500ppm×10の溶液では,流速の小さいRew=30000程度では抵抗低減 するまでに至らず,40000≦Rew≦110000 において,上流部・下流部ともに抵抗低減効 果が発生することが確認できた.抵抗低減効果は,上流部・下流部ともに測定したRew
の領域で最大 60%程度であったが,今溶液においても下流部の方が上流部よりも多少 大きな抵抗低減効果が見られた.なお,管摩擦係数測定結果の抵抗低減効果が見られた 領域において生じたずり応力は,上流部(40000≦Rew≦110000)において 2.8[Pa]≦τw
≦6.7[Pa]であり,下流部(40000≦Rew≦110000)において2.4[Pa]≦τw≦6.1[Pa]であるこ とから,Fig3-2において1500ppm×10の撹拌溶液のShear thickeningが生じるずり応力範 囲である2.0[Pa]≦τwの範囲のずり応力を示しており,Shear thickeningが生じるずり応力 範囲内であると推測することができる.
これらの結果より,今回使用した各界面活性剤溶液において,Shear thickeningを生じ るずり応力範囲で抵抗低減効果が見られることが確認できた.このことから,管内にお いて生じるせん断によってゲルのような性質を持ったミセル構造,すなわちSISが誘起 され,この構造が抵抗低減効果に寄与していることが示唆される.
また,各濃度の溶液においても上流部よりも下流部の方が大きな抵抗低減効果を示す ことも観測された.このことから,抵抗低減とSISの存在が相関すると仮定すると,SIS の構造が上流部よりも下流部の方がより構造が発達していると考えられる.
第三章 -実験結果および考察-
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更に,500ppm×0.5と500ppm×10の溶液の抵抗低減効果を比較すると,測定範囲(30000
≦Rew≦100000)において500ppm×10の方が上流部・下流部ともにより大きな抵抗低減 効果を示すとともに,500ppm×0.5 の溶液が特定の Rewで抵抗低減効果が失われていく のに対し,500ppm×10の溶液では高いRewにおいても抵抗低減効果が持続することがわ かっている.これらの特徴は,500ppm×0.5よりも500ppm×10の方が十分なモル量の対 イオンを有しているため,SISの構造が十分に生成されるとともに,高いRew領域にお いても構造の破壊が生じず安定的に構造を維持できるため,もしくは構造が破壊されて も再構築しやすいためであると考えられる.
第三章 -実験結果および考察-
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(a) Water
(b) 500ppm×0.5
第三章 -実験結果および考察-
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(c) 500ppm×10
(d) 1500ppm×10
Fig3-3. Friction in pipe of upstream and downstream as a function of Re
w.第三章 -実験結果および考察-
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第三章 -実験結果および考察-
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