• 検索結果がありません。

第 8 章 ループ量子宇宙論における初期特異点の解析 83

8.4 等体積離散化

μ≥0に対する微分方程式(8.37)の一般解は Ψ(μ) =μ12

C1Ai

−α113μ

+C2Bi

−α113μ

(8.38) の形をとる。ここでC1C2は積分定数であり、AiとBiはAiry関数である。また、α1:= (π/9)γ3l2PlΛ とおいた。補遺E.1にいくつかの演算子順序におけるWDW方程式とその一般解を示した。α113μが大き い値の場合、上の関数は減衰する正弦波曲線に漸近する。したがって、宇宙の体積が大きくなった時でさ え、差分方程式(8.31)の解、つまり図8.1に示した解の振る舞いは微分方程式(8.37)の解(8.38)の振る 舞いとはかなり異なる。これは、離散的な波動関数が離散化の長さぐらいのスケールでは滑らかな関数と はもはや見なすことができないからである。言い換えると、等面積離散化において、宇宙項がある場合、

差分方程式の解は大きいμに対する滑らかな波動関数として見なすことができないということである。

我々はこの問題を“体積が大きい極限での問題(the large-volume limit problem)”とよぶ*2

8.4 等体積離散化 93 となる。そうすると、Hamiltonian拘束条件は以下の差分方程式になる。

|v+ 4| ||v+ 3| − |v+ 5||Φ(v+ 4)

2|v| ||v−1| − |v+ 1|| − 16

3 γ3l2PlΛ|v|

Φ(v) +|v−4| ||v−5| − |v−3||Φ(v4) = 0(8.43) ここでΦ(v) =v|Φ である。上の差分方程式(

3 ˜Λ = 0.1で初期値Φ(4) =1とΦ(0) = 0)の解を数 値的に与える。この値はプロットを見やすくさせるために選んだ。得られた波動関数Φ(v)は図 8.2(a)、

図8.2(b)に示した。これらのグラフからわかるように、離散的な波動関数は振動しており、大きいv

対して滑らかな正弦波曲線のサンプリングとして見なすことができる。このことは、等面積離散化におけ る体積が大きい極限の問題が等体積離散化において解決されることを意味する。実際、補遺E.2において 示されているように、差分方程式(8.43)はWDW方程式

d2

dv2 |v|Φ(v) + 4π

81K2γ3l2PlΛ|v|Φ(v) = 0 (8.44) によって近似でき、その一般解は

Φ(v) = 1 v

C1eiα2v+C2eiα2v

(8.45) で与えられる。ここで、C1C2は積分定数でα2= 81K2γ3l2PlΛとおいた。図8.2で示した波動関数は 大きいvで解(8.45)と十分一致している。

(a) (b)

8.2 以下の範囲での波動関数Φ(v) (a) 0 v 400(b) 9400 v 10000

3˜Λ = 0.1 v = 4nの関数としてプロットした。また初期値としてΦ(−4) =−1Φ(0) = 0ととった。

体積が大きい極限がこの離散化において解決されることを解析的にも示すことができる。v1に対し て、式 (8.43)を

Φ(v+ 4)2(1−CΛ)Φ(v) + Φ(v˜ 4) = 0 (8.46) によって近似することができる。ここでC = 2/(27K2)である。この再帰的関係に対する特性方程式は

x22(1−CΛ)x˜ + 1 = 0 (8.47)

であり、その根は

x= (1−CΛ)˜ ±

(1−CΛ)˜ 21 (8.48)

である。これより、Φ(v) の大きいv での振る舞いを演繹することができる。0 < CΛ˜ < 2に対して、

Φ(4n)はきれいに正弦的に振動する。CΛ˜ <0やCΛ˜ >2に対して、一般に指数的増加によって支配さ れる。CΛ = 0˜ に対して、Φ(4n) =An+B となる。ここでAB は定数である。CΛ = 2˜ に対して、

Φ(4n+ 4) + Φ(4n) = (1)nDとなる。ここでDは定数である。したがって、もし我々の宇宙が現実的 なものである|CΛ˜| 1だとすれば、Φ(4n)は各ステップでとてもゆっくり変化する。そうでなければ 角速度

CΛ˜ で振動するか、増加率

CΛ˜ で指数的に増加するかのどちらかになる。このことは、

Φ(v)を体積が大きい極限において滑らかな波動関数と物理的にみなすことができることを意味する。

8.4.2 特異点回避と演算子順序

この節では、等体積離散化での初期特異点回避を議論する。等体積離散化でのHamiltonian拘束条件 の演算子順序の以下の4つの場合について議論し、初期特異点回避の存在が演算子順序の選択に依存する ことを示す。

C-grav(a) = 1 16πl2Plγ2

96i(sgn(p)) 8πγl2Pl F-.1

¯

μ3EE!+ 2γ2ΛV

, (8.49a)

C-grav(b) = 1 16πl2Plγ2

96i(sgn(p)) 8πγl2Pl

.1

¯

μ3F-EE!+ 2γ2ΛV

, (8.49b)

C-grav(c) = 1 16πl2Plγ2

96i(sgn(p)) 8πγl2Pl EE!.1

¯

μ3F-+ 2γ2ΛV

, (8.49c)

C-grav(d) = 1 16πl2Plγ2

96i(sgn(p))

8πγl2Pl EE!F-.1

¯

μ3 + 2γ2ΛV

. (8.49d)

上の4つの場合を(a)、(b)、(c)、(d)とよぶことにする。ここでEE!と1/¯μ3は互いに交換することに注 意する。また、異なる演算子順序をとることもできる。例えば、1/¯μ3は2つに分割しF-の両側におくこ ともできる。後でこの演算子順序については議論する。

8.4 等体積離散化 95 上の演算子順序(a) - (d)のHamiltonian拘束条件はそれぞれ以下の差分方程式を与える。

|v+ 4| ||v+ 3| − |v+ 5||Φ(v+ 4)

2|v| ||v−1| − |v+ 1|| − 128π 81 γ3lPl2

K2Λ|v|

Φ(v) +|v−4| ||v−5| − |v−3||Φ(v4) = 0,(8.50a)

|v| ||v+ 5| − |v+ 3||Φ(v+ 4)

2|v| ||v+ 1| − |v−1|| − 128π 81 γ3lPl2

K2Λ|v|

Φ(v) +|v| ||v−3| − |v−5||Φ(v4) = 0, (8.50b)

|v| ||v+ 1| − |v−1||Φ(v+ 4)

2|v| ||v+ 1| − |v−1|| − 128π 81 γ3lPl2

K2Λ|v|

Φ(v) +|v| ||v+ 1| − |v−1||Φ(v4) = 0, (8.50c)

|v+ 4| ||v+ 1| − |v−1||Φ(v+ 4)

2|v| ||v+ 1| − |v−1|| − 128π 81 γ3lPl2

K2Λ|v|

Φ(v) +|v−4| ||v+ 1| − |v−1||Φ(v4) = 0.(8.50d) 差分方程式(8.50a)-(8.50d)を近似することによって得られるWDW方程式は補遺 E.2に示している。

これらの方程式でΦ(0)が消えることがわかる。しかしながら、式 (8.50a)においてのみ、Φ(4)はΦ(4) と直接関係付いている。これにより以下のことが言える。すべてのv >0に対してΦ(v)が与えられると 仮定すると、上の4つの演算子順序のうち(a)のみがv <0に対してΦ(v)が決定される。他の演算子順 序について、差分方程式はn=1,2,3, ...に対してΦ(4n)を決定することができない。この意味で、

演算子順序(a)-(d)のうち(a)のみにおいて初期特異点回避が可能である。したがって、この章で見てき た6つのモデルの中で、等体積離散化かつ演算子順序(a)である場合のみが初期特異点がなく、体積が大 きい極限において滑らかな波動関数を持つことができる。演算子順序(a)において、もしΦ(4)を固定す るとn=±1,±2,· · · に対してΦ(4n)を決定することができる。等面積離散化のようにΦ(0)が決定され てないままであるが、これはv= 0を越える唯一の量子発展に影響を与えない。

さらに、初期特異点回避の要請により一般的な演算子順序の規則を見つけることができる。もしEE! や1/μ¯3に含まれる体積演算子V- やその正ベキの演算子がF-の前にあれば、初期特異点が生じる。この 事実を以下のように理解できる。簡単のため、古典的にC =F V = 0のような拘束条件があるとする。

量子論において、拘束条件に対する演算子順序に2つの選び方がある。そして状態|v への拘束条件演算 子C.1=V-F-とC.2=F-V- の作用は

C.1|v =V-F-|v = 1

16 Vv+4|v+ 42Vv|v +Vv4|v−4

, (8.51)

C.2|v =F-V-|v =−Vv

16 |v+ 42|v +|v−4

(8.52) によって与えられる。そうすると、C.1のΦ(v)に対する拘束条件は

Vv Φ(v+ 4)2Φ(v) + Φ(v4)

= 0 (8.53)

となる。また、C.2のΦ(v)に対する拘束条件は

Vv+4Φ(v+ 4)2VvΦ(v) +Vv4Φ(v4) = 0 (8.54) となる。式(8.53)において、それぞれの項において体積演算子の同じ固有値Vvがあり、v= 0に対して すべての係数が消える。このため、この場合においてΦ(4)とΦ(0)からΦ(4)を決定することができな

い。よって一意的な発展をしない。一方、式 (8.54)において、左辺はv = 0に対してさえ消えない。し たがって、v = 0を越えて一意的な解を決定することができ、それゆえ特異点は存在しない。