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第  二  章

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アメリカ連邦政府における

行政マネジメントに関する最新事情

はじめに

クリントン政権時代に、New Public Management による行政改革を推進すべく制定 された政府業績成果法(Government Performance and Results Act of 1993:GPRA)

は、4年間のパイロットプログラム期間を経て、1997年より省庁での実施が本格的に開 始された。GPRAは、それ以前の大統領行政命令ではなく、議会により制定された法律 であるため、ブッシュ政権においても引き続き実施されている。

ブッシュ大統領は、2001年1月の就任から数ヶ月後に、大統領管理アジェンダ(The  President’s Management Agenda:PMA)という政権の基本的行政改革方針を発表した が、これ以降、GPRAはPMA実現のための政策手段として扱われてきている感がある。

このアジェンダが定める5つの目標は互いに関連性を持つが、GPRAに直接関係するの は「予算と業績の統合」である。2004年度予算編成を行う上でも、プログラム査定評価 ツール(Program Assessment Rating Tool:PART)と呼ばれる業績評価ツールの作成 や、共通業績尺度の作成、予算項目の変更など「予算と業績の統合」に重点が置かれ、

連邦管理予算局(Office of Management and Budget:OMB)が主導権をとって進めて きた。

本研究は、政策評価の「plan−do−see」のマネジメントサイクルにおいて、seeから plan へのフィードバックのメカニズムがどうなっているのかに着目している。しかし、

現状では、seeの結果をどのplanにフィードバックすればよいのかという関連づけが未 だ不十分であることから、OMBが実施するイニシアチブも、「予算と業績の統合」をよ り一層促進することに重点が置かれている。

OMBや議会の調査機関ともいえる会計検査院(General Accounting Office:GAO)

は、GPRAの実施には解決すべき問題が多くあるとしながらも、全般的には成果を上げ つつあると評価している。しかし、プログラムを実際に運営する省庁のマネージャーの 間では、業績尺度がはっきりせず、作業量ばかりが増えているという不満の声も上がっ ている。

予算の作成、実施、そして業績評価に基づいて次の予算編成を行うというGPRAによ る予算の1サイクルは約3年で、ブッシュ政権が発足してから、まだ1サイクルも完了 していない。その上、2001年秋のテロ事件以降、国家安全保障省の設立、テロ対策、エ ンロンやワールドコム等の会計スキャンダル等への対応に関連して、法案策定等の作業 量が増えた上、今後もテロ対策関係費及びイラク戦争後の復興対策費等の大幅増が見込 まれている。このように、当初編成した予算を執行する上で様々な障害もある中、ブッ シュ政権では、行政機関管理スコアカード(Executive Branch Management Scorecard)

やPART等の新しい業績測定手法が開発・活用されている。前者は格付けの一種であり、

各省庁の目標達成度を横並びで比較するためのものである。また、後者は、個々のプロ グラム評価のための簡便なツールであり、各省庁での内部評価やプログラムの実行管理 に用いられるものである。

  ここでは、アメリカ政府の「予算と業績の統合」のための取組みと実態を整理するこ とによって、わが国への示唆を得ようとするものである。しかしながら、わが国におい て、こうした新しい業績マネジメントツールを導入するに当たっては、既存の予算・法 律等の制度を見直さないまま、それに上乗せする形で導入することのないよう、十分留

意する必要がある。

2.1  ブッシュ政権下のGPRA 

(1)大統領管理アジェンダ(The President’s Management Agenda:PMA) 

クリントン政権時代に成立した政府業績成果法(Government Performance and Results Act of 1993:GPRA)は、ブッシュ政権下においても引き続き実施されている。

結果志向のマネジメントという基本線は変わらないが、ブッシュ大統領は政権の行政運 営の基本方針であるPMAを実施するツールとして、GPRAの実施に取り組んでいる。

クリントン政権は、New Public Managementの精神である「顧客の満足度向上」に重 点を置いていたし、ブッシュ政権も「市民中心の政府」を行政改革の一つの目標として いるが、GPRAに関する点から言えば、「予算と業績の統合」が PMAの目標の一つとし て掲げられ、その実現に向けて一層の努力がなされている。

PMA1は、2001 年 8 月に発表された。その冒頭で、ブッシュ大統領は、「政府は大規 模で新しい計画を提案することに長けている。しかし、より重要なことは、それを実施 し結果を出すことである。私の政権では、連邦から地方まで、それを標準化していきた い。」と述べ、結果重視主義であることを改めて強調した。そして、具体的に、連邦政府 機関に共通の5つの行政目標(Government Wide Initiative)及び機関別の9つの目標2

(Agency Specific Program Initiative)を定めている。

1(財)建設経済研究所(2002)「日本経済と公共投資 No.39」p.163

2 Faith-Based and Community Initiative, Privatization of Military Housing, Better Research and Development Investment Criteria, Elimination of Fraud and Error in Student Aid Programs and Deficiencies in Financial Management, Housing and Urban Development Management and Performance, Broadened Health Insurance Coverage through State Initiatives, A ”Right-sized”

Overseas Presence, Reform of Food Aid Programs, Coordination of Veterans Affairs and Defence Programs and Systems…の9つである。

人材の戦略的管理

予算と業績の統合 電子政府の拡大

競争発注

財務体質改善

図1は、このうち、PMAに掲げられている連邦政府機関に共通の①人材の戦略的管理

(Strategic Management of Human Capital)、②競争発注(Competitive Sourcing)、

③財務体質改善(Improved Financial Performance)、④電子政府の拡大(Expanded Electronic Government)、⑤予算と業績の統合(Budget and Performance Integration)

の5つの行政目標間の相関関係を図示したものである。

図1:大統領管理アジェンダ(PMA)に掲げられている5つの 

連邦政府機関共通の行政目標間の相関関係3 

3 例えば、競争発注や電子政府の拡大の実施は人材の戦略的管理に影響を与え、人材の戦略的管理を検討す る元となる省庁の使命や目標は、予算と業績の統合の実施に影響を受ける。(The President’s Management Agenda 2002, Office of Management and Budget)

(2)大統領管理会議(The President’s Management Council:PMC) 

PMAを遂行させるため、同年、ブッシュ大統領は各省庁に対し、最高運営責任者(Chief Operating Officer:COO)を指名するよう指示した。これに基づいてほとんどの省庁で は、副長官がこの役を兼務することとなったが、これは、副長官が政策と管理業務を総 括する任務にあるためである。更に、ブッシュ大統領は、連邦政府全体の PMA 実施を 総括し徹底させるため、クリントン政権でも設置されていた大統領管理会議(PMC)を 設置した。PMCのメンバーは各省庁のCOOで、OMB管理部副部長 (Deputy Director for Management)が議長を務めている。現在はマーク・エバーソン管理部副部長がこの 役に就いている。

図2:PMC組織とOMB

PMC議長(OMB 管理部副部長) 

 

 

議長:人事院 

国務省、農務省、司法 省、交通省(DOT)、住 宅 省 、 社 会 保 障 庁 、 CIA、NASA 

 

議長:労働省 

商務省、国防総省、エネ ルギー省、退役軍人省、

保険社会福祉省、調達 局、FEMA、OVP 

議長:教育省

内務省、財務省、環境保護 局、国際開発庁、国立科学 財団、中小企業庁、情報機

人事部

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