Cu 2 ZnSnSe 4
4.3 第一原理 第一原理バンド 第一原理 第一原理 バンド バンド バンド計算 計算 計算 計算
4.3.1 計算方法計算方法計算方法計算方法とととと条件条件条件条件
本研究ではWIEN2k[9]を用いて第一原理計算を行なった。WIEN2kとは平面波基底を用い た密度汎関数法による計算プログラムである。その特徴は全電子フルポテンシャル計算が 可能であり、スピン軌道相互作用を考慮することができる。また計算手法には(L)APW+lo 法を用いている。ただし第一原理計算の計算手法の性質によりバンドギャップが実際の値 より過小評価されてしまう問題があるが、定性的な分析をすることは可能である。
計算の精度はブリルアンゾーン内を細かく分け、波数kの数を増やした方が精度良く計算 することができる。今回の計算に用いたk点の数は、バンド計算、状態密度計算とスピン軌 道相互作用を考慮していない誘電率計算では 1728(12×12×12)点、スピン軌道相互作用を考 慮した誘電率計算では64(4×4×4)点で計算を行った。スピン軌道相互作用を考慮した誘電率 計算でk点の数を減らしたのは、スピン軌道相互作用を考慮することで計算量が膨大になっ てしまうためである。
それぞれの計算で用いた格子定数と空間群をTable 4-4に示す。
a (Å) c (Å) 空間群
Cu2ZnSnSe4 - Stannite 5.68 11.33 I-42m Cu2ZnSnSe4 - Kesterite 5.68 11.36 I-4
CuInSe2 5.77 11.55 I-42d
4.3.2 バンドバンドバンドバンド構造構造構造構造ととと状態密度と状態密度状態密度状態密度
第一原理計算を用いて計算したCu2ZnSnSe4のStannite構造、Kesterite構造とCuInSe2のバ ンド構造をFig. 4-6, Fig. 4-7, Fig. 4-8に示す。これらの図よりCu2ZnSnSe4とCuInSe2のバン ド構造が非常に似ていることがわかる。このことから Cu2ZnSnSe4はCuInSe2と似た特性を 示すと予想できる。また、Stannite構造、Kesterite構造のバンド図も大変似ていることがわ かる。
次に、Cu2ZnSnSe4のKesterite構造の状態密度(DOS: Density of state)を計算した結果をFig.
4-9に示す。Fig. 4-7, Fig. 4-9の比較から価電子帯の上部はCuの3d電子とSeの4p電子の p-d混成軌道が支配しており、伝導帯の下部ではSnの5s電子とSeの4p電子のs-p混成軌 道が支配していることがわかる。また-7 eV付近の鋭いピークはZnの3d電子によるもので、
この軌道は他の元素の軌道と相互作用していないことを示している。これは Zn の3d軌道 がCuの3d軌道より低いエネルギー準位にあることが原因で、Seの4p軌道と相互作用して いない。このことよりZnはバンドギャップには影響していないことがわかる。
Table 4-4 計算に用いた格子定数
0 10
20 Cu Cu2ZnSnSe4-Kesterite
Total Cu-Total Cu-s Cu-p Cu-d
0 10
20 Cu Zn2ZnSnSe4-Kesterite
Total Zn-Total Zn-s Zn-p Zn-d
0 10 20
Cu2ZnSnSe4-Kesterite Sn
Total Sn-Total Sn-s Sn-p Sn-d
10
20 Cu Se2ZnSnSe4-Kesterite
Total Se-Total Se-s Se-p Se-d
DOS(States/eV)
-15 -10 -5 0 5
Energy (eV)
-15 -10 -5 0 5
T Γ N
Energy (eV)
Wave vector -15
-10 -5 0 5
T Γ N
Wave vector
Energy (eV)
Fig. 4-6 Cu2ZnSnSe4-Stannite構造のバンド図 Fig. 4-7 Cu2ZnSnSe4-Kesterite構造のバンド図
4.3.3 誘電率誘電率誘電率誘電率
第一原理バンド計算を用いて誘電率計算を行った。Fig. 4-10にKesteriteとStanniteのc軸 に対して垂直、平行方向の ε2の計算結果を示す。図より偏光方向の違いや結晶構造の違い により誘電率ε2のスペクトルが異なることがわかる。
ま た そ れぞれ のピー クや ショルダー が ど この 遷移 に起因し て い る か調べる た め に 、Fig.
4-11 に示すブリルアンゾーンについて対称性の高い点の周辺だけを積分することで、各 k 点の寄与の値を求めた。その結果をFig. 4-12に示す。図より誘電率ε2のピークやショルダ ーがどのk点からの寄与なのかわかる。Kesteraite構造の場合、~2.8 eV, ~3.9 eVでT点、~4.7 eVでΓ点からの遷移が大きく、E∥cでは~5.3 eVでT, P点からの遷移が、E⊥cではT, Lか らの遷移が大きい。Stannite構造の場合、E∥cでは~2.8 eVでP点、~4.8 eVでT, Lからの遷 移が大きく、E⊥cでは~2.5 eVでN点、~3.6 eVでP点、~4.9 eVでP, N点からの遷移が大 きい。またどれもバンドギャップ付近の1.0 eV付近ではΓ点からの遷移が大きいことがわ かる。その他のピークやショルダーの遷移についてもFig. 4-12のスペクトルから読み取る ことができる。
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
ε2
Photon energy (eV) Stannite
E∥c E⊥c
0 1 2 3 4 5 6
0 5
10
KesteriteE∥c E⊥c
Photon energy (eV) ε2
S
Γ
N P
L T
S
Γ
N P
L T
S = 2
π(1/a, 0, 0)
Γ= 2
π(0, 0, 0) N= 2
π(1/a, 1/a, 0) P = 2
π(1/a, 1/a, 1/2c) L = 2
π(1/a, 0, 1/2c) T = 2
π(0, 0, 1/c)
Fig. 4-10 バンド計算より求めたε2の結果
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
Photon energy (eV) ε2
Total Γ N P L S T Kesterite E⊥c
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
Photon energy (eV) ε2
Stannite E⊥c
Total Γ N P L S T
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
Photon energy (eV) ε2
Stannite E∥c
Total Γ N P L S T
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
Photon energy (eV) ε2
Total Γ N P L S T Kesterite E∥c
(b) Stannite- E∥c (a) Kesterite-E∥c
(c) Kesterite- E⊥c (d) Stannite- E⊥c
Fig. 4-12 ε2の各k点の寄与
次に、今回作製した試料は多結晶であったため、上記の計算結果から以下の式を用いて 多結晶の誘電率計算を行った。
εPoly = (2εE
⊥c+εE
∥c) / 3 (4-3)
その結果とSE測定から得られた誘電率ε2との比較をFig. 4-13に示す。ただし、Cu2ZnSnSe4
の結晶構造はKesterite構造とStannite構造が混在している可能性があるため、それぞれの結 晶構造ごと比較した。図より主要なピーク位置が一致しており、特に Kesterite の方がよく 一致していることがわかる。このことから比較的精度が良い計算結果であることが言える。
よってバンド計算から求めた ε2を調べることで実験結果のピークが何に起因しているか調 べることができる。そこで先ほどのように各 k 点に関して寄与を計算した結果を Fig. 4-14 に示す。図より、Kesterite構造の場合は、バンドギャップ付近の~1.0 eVではΓ点、~2.2 eV のピークではT点、~4.7 eVのピークではT, P点が大きく遷移していることがわかる。Stannite 構造の場合は、バンドギャップ付近の~1.0 eVではΓ点、~2.2 eVのピークではL, P点、~4.7 eVのピークではP, T点が大きく遷移していることがわる。また構造の違いによって各ピー クの大きく寄与するk点が異なっていることがわかる。
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
SE
Kesterite-calc.
Photon energy (eV) ε2
Cu2ZnSnSe4 Poly crystal
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
ε2
Photon energy (eV)
SE
Stannite-calc.
Cu2ZnSnSe4
Poly crystal
Fig. 4-14 ε2の各k点の寄与
Fig. 4-13 SE測定とバンド計算のε2の比較
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
Photon energy (eV) ε2
Cu2ZnSnSe4-Kesterite Poly crystal
SE Total Γ N P L S T
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
ε2
Photon energy (eV)
Cu2ZnSnSe4-Stannite Poly crystal
SE Total Γ N P L S T
4.3.4 臨界点解析臨界点解析臨界点解析臨界点解析
誘電率計算による各k点の寄与を求められたので、それと合わせてバンド間を指定して計 算することでバンド間遷移と臨界点を明らかにした。Fig. 4-15, Fig. 4-16にはKesterite構造、
Fig. 4-18, Fig. 4-19にはStannite構造のε2の垂直、平行、多結晶の臨界点を示し、それに対応 するバンド間遷移をFig. 4-17及びFig. 4-20のバンド図に示す。また、それらをまとめたも
のをTable 4-5, Table 4-6に示す。各図の比較より誘電率計算結果のピークやショルダーの臨
界点がどのバンドからの遷移であるかがわかる。
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
Photon energy (eV)
ε2Cu2ZnSnSe4-Kesterite Poly crystal
SE Total Γ N P L S T E0
E1 E2
E3 E4 E5
E6
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
Photon energy (eV)
ε2Total Γ N P L S T Kesterite E⊥c
E0
E1 E2
E3 E4E5
E6
0 1 2 3 4 5 6
0 5 10
Photon energy (eV)
ε2Total Γ N P L S T Kesterite E∥c
E1
E5
E2
E6
E0
E3
Fig. 4-15 Kesteriteの臨界点
-6 -4 -2 0 2 4 6
Wave vector
E n e rg y ( e V )
T Γ N P L
E
0AE
2E
4E
6E
0BE
0CE
1E
2E
3E
5E
6Fig. 4-17 Kesteriteのバンド間遷移と臨界点