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認された。このような構造の出現により,ごく単純な自生的階層システムの発展が示され たといえる。

またこのネットワークは,1章2節で紹介したサイモン [1]のいう準分解可能性を持つ システムが持つ2つの条件を満たしている。1つは,テープやマシン単体の反応を見れば,

それぞれの間には関連性がないということである。もう1つは,ある時間と,空間のス ケールで見たときにはそれぞれのテープ,マシンはネットワークのような大域的秩序にし たがっているとみなせることである。このような理由からも,反応のネットワークを階層 の要素としてみなすことは妥当であると思われる。

4.3 ネットワーク間相互作用と階層構造

2つのネットワーク間の関係を一般的に考えると,それは個々のネットワークにおける 2種類の特徴であらわすことができる。その特徴とは,1つは単独で活動できるか否かで ある。もう1つは,他のネットワークに対する関係性である。その関係性は,無関係,寄 生的,利他的,寄生的かつ利他的の4種類が考えられる。ここで寄生的というのは,相手 の必要なテープ,マシンを使って自らのネットワークの活動を行うものである。また利他 的というのは,相手の活動に自らのテープ,マシンを提供するものである。

従って,ネットワークAとネットワークBがあるとき,AがBに対して寄生的であれば,

BはAに対して必然的に利他的であり,また逆も同様である。同様に,AがBに対して寄 生的かつ利他的であれば,BもAに対して寄生的かつ利他的である。よって,2つのネッ トワーク間の関係では,片方だけのネットワークが無関係である場合,お互いに利他的で ある場合,お互いに寄生的である場合,片方だけのネットワークが寄生的かつ利他的であ る場合は存在しない。このことから必然的に,2つのネットワーク間の関係は,互いに無 関係な場合,片方が寄生的で,もう一方が利他的な場合,お互いが寄生的かつ利他的な場 合の3種類しか存在しない。

実際に3章3節のシミュレーションにおいて確認できたネットワーク間の関係は以下に 示すものである。

A B

図 4.1: 例1において観察されたネットワーク間の関係

A B

図 4.2: 例2,4において観察されたネットワーク間の関係

A B

図 4.3: 例1において観察されたネットワーク間の関係

A B

図 4.4: 例5において観察されたネットワーク間の関係

A B

図 4.5: 例6において観察されたネットワーク間の関係

図4.1〜5のA,Bはそれぞれネットワークを表し,矢印はその構成要素を作るほうから

作られるほうに伸びている。図 4.1, 4.2, 4.4は互いに寄生的かつ利他的,図4.3は互いに 無関係,図4.5は片方が寄生的で,もう一方が利他的な場合である。よって,2つのネッ トワーク間の関係における,互いに無関係な場合,片方が寄生的で,もう一方が利他的な 場合,お互いが寄生的かつ利他的場合の全て確認することができた。

一般には,前述の3つの関係のうち,お互いが自己維持可能であるかどうかによって,

互いが存続できるか否かが決まるといえる。まず,互いに無関係な場合には,お互いが自 己複製可能でないと同じ状態は続かない。また,その他の場合は,作り合う数のバランス にもよるが,利他的な方が自己維持可能であれば,互いは存続できる。互いが自己複製不 可能でありながら,互いに作り合うことで存続する関係はここでは見られなかった。

4.4 高次の構造が出現する条件

高次の構造を見ることができたのは,主にテープのソースから翻訳を始めるというモデ

ルSg,Slの場合においてであった。モデルSg,Slの,テープの翻訳をヘッドの部分から始

めるモデルHg,Hlとの違いは,ネットワークの種類が多様であり,かつその関係性につい ても多様であるという点である。この差異の原因について考察する。

テープの翻訳の仕方は,モデルHg,Hlでは,翻訳を開始する位置をヘッドからとし,モ

デルSg,Slではソースからとした。マシンのヘッドとマッチする位置はテープによって異

なるが,その位置は多くとも3種類までである。よって,モデルHg,Hlの場合は同じマシ ンによるテープの翻訳のされ方が3種類しかないということである。一方モデルSg,Slの 場合は,テープのソースから翻訳が開始されるため,翻訳を開始する位置が最高で7種 類ある。よって,最高でソースの数である7つの翻訳のされ方がある。そのため,モデル

Sg,SlはモデルHg,Hlに比べて反応の多様性が高い。モデルSg,Slにおいてネットワークの

種類が多様であるのは,上記のメカニズムが原因であると考えられる。

また特にモデルSlにおいて空間構造の影響がある場合のモデルについては,モデルSg,

Slにおいて空間構造の影響がない場合のモデルでは実現し得ない関係が見られた。それ は例えば例3の場合である。

例3は無関係な2つの自己複製ネットワークがある場合である。もし空間構造の影響が ない場合にはこの2つのネットワークを構成するマシン,テープは互いに混ざり合い,お 互い相手が反応できるテープ,マシンに出会う確率を下げてしまう。このため,最終的に はどちらか一方が生き残るか,お互いが絶滅すると考えられる。また,例6のようなネッ トワークは,空間構造の影響が無ければ,自己複製可能で最も効率的に増加するマシン

M3ee7 )以外のマシンとは反応できないテープ( T2f )が速やかに空間に拡散し,2つ のネットワークの共存状態を壊し,一方のネットワークだけに支配されてしまうだろう。

これらの実験及び考察の結果,ネットワーク間の関係の複雑性はモデルSlにおいて最 も高いと考えられる。

従ってモデルSlの特徴より,反応のネットワークは反応の多様性が高く,特に局所的 に異なる反応が可能なとき,多様なネットワーク間の関係を見せると考えられる。

4.5 一般の相互作用ネットワーク

実験結果から,お互いの維持のために作り合わねばならないような要素の集合におい て,多様な自生的階層システムの発展のためには,反応の局所性,及び多様性が重要であ

ることが示唆された。

本研究のモデルは化学反応を想定したものである。しかしここで得られた結果は,他 の,要素が相互作用によって他の要素を作り,その要素がさらに相互作用に参加するよう な性質を持つ系にもあてはまるのではないだろうか。

この際には,反応の局所性,及び多様性の意味を読み替えなくてはならない。つまり,

相互作用の局所性は物理的空間の局所性を意味するのではなく,相互作用の緊密さをメ ジャーとする空間における局所性を意味する。すなわち,相互作用する相手が,全ての要 素に及んでいるのではなく,ある程度限定されている,ということである。さらに,相互 作用の多様性とは,ある要素の組の間で,相互作用のかたちが多様であり,結果としてそ の相互作用によって生成されるものが多様であるということを意味する。

そのような系として考えられるものとしては,例えば,生態系一般や,分業による製品 の生産などがある。結果の一般性について論ずるためには,相互作用の局所性,及び多様 性という観点からこれらの現象を眺めたとき,本研究から得られた結果とそれらの間にど れほど関連があるのかを調べていくことが必要であると考えられる。

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