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本研究ではマイワシのように個体数が多く動きが複雑で、密集した個々の魚が 1つの塊となって群れを形成し、その群れが一定のエリアに留まる群れの動きを表 現することを目的とした。この一定のエリアに留まる群れの動きは個々の魚を円 状に旋回させることで限られた範囲に群れを形成する動きのことである。この群 れの動きを表現するためにboidモデルと拡張したルールを用いた。このルールに は、群れの外側にいる個々の魚を群れの内側へ引き寄せるための引力、群れの内 側にいる個々の魚を群れの外側へ押し出すための斥力、群れの外側と内側で個々 の魚の移動速度を変化させる速度制御のルールがある。更にこれらのルールを個々 の魚に与えるために仮想的な力点を用意した。これを実装した結果、力点を中心 として個々の魚が群れを形成し一定のエリアに留まる群れの動きを表現すること が出来た。また拡張したルールをなくした場合は個々の魚がboidモデルのルール に従って群れを形成し、従来再現されていた一箇所に留まらずに遊泳する群れの 動きを表現することが出来た。

しかし表現した群れの動きにはいくつかの問題点がある。まず一定のエリアに 留まる群れの動きでは拡張したルールを用いることでマイワシのような魚に見ら れる群れの動きを表現することが出来たが、力点と個々の魚の距離が大きくなっ た場合に個々の魚を群れの内側へ引き寄せるための引力の力が強くなってしまっ たため、個々の魚の移動速度が速くなってしまった。また群れの中心では魚が移

動せずに止まった状態となり、円状に旋回しなかった。次に一箇所に留まらずに 遊泳する群れの動きではboidモデルを基本とした群れの移動を行ったため、一度 散らばったここの魚が基に戻ることが出来ず、マイワシの群れのように密集した 状態で移動する群れの動きを表現することが出来なかった。

今回は魚の群れの形と動きを表現することを目的としたが、実際の魚は群れを 形成する以外にも様々な行動を行う。例えば魚の群れが外敵に襲われた際に一斉 に散らばる行動や魚のヒレの動きなどがある。そのためより本物に近い群れの動 きや魚の動きを表現するためには、実際の魚に見られる様々な行動や動きを取り 入れていく必要がある。

謝辞

本研究を進めるにあたり、終始温かいご指導をいただいたた東京工科大学メディ ア学部の渡辺大地 講師、電気通信大学の和田篤 氏に心より感謝の意を表します。

また研究に協力していただいた新江ノ島水族館の方々、aqua projectの先生方々・

仲間、そして日頃から多くの力添えや助言を頂いた先輩や同輩に厚く御礼申し上 げます。

参考文献

[1] M.オローク 原著 袋谷賢吉 訳 大久保篤志 訳, ”3次元コンピュータ・ア ニメーションの原理 第2版”,近代科学社, 2000.

[2] Craig W. Reynolds, ”Flock, Herds, and Schools : A Distributed Behavioral Model”, In Computer Graphics 21(4), pp.3870-3873, July 1987.

[3] Craig W. Reynolds, ”Reynolds Engineering & Design”, http://www.red3d.com/.

[4] 森川幸人, マッチ箱の脳 使える人工知能のお話 , p125-131, 2000.

[5] 松延直美, 水森龍太, 蔡東生, ”自己組織化理論を用いた群れのアニメーション 生成”, 情報処理学会グラフィクスとCAD研究会, 122, 2003, pp59-64.

[6] 水森龍太, ”魚群の振る舞い生成に関する研究”,筑波大学大学院博士課程 シス テム情報工学研究科 修士論文, 2003.

[7] 小林佳奈美, ”遺伝的アルゴリズムを用いた知的魚群自動生成システムの形成”, 立命 館大学理工部情報学科 卒業論文, 2005.

[8] Xiaoyuan Tu and Demetri Terzopoulos, ”Artificial Fishes : Physics, Locomo-tion, PercepLocomo-tion, Behavior” , Computer Graphics, pp43-50, 1994.

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