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等をテーマに学習を進めていくことも可能である。

 このように、学校教育活動全体を通して、健康教育の充実を図り、突然死予防のための 指導を展開する必要がある。

(ア) 子どもに対する指導

 健康教育を基に、子どもの自他の健康状態について、知り合うことの大切さを理解させ る。自他を思いやり、急な体調の変化に対しても、対応できるようにする。

 また、心疾患や心疾患の疑いのある子どもなど、生活上管理の必要な子どもへの対応や 病態を理解できるようにするとともに、プライバシーの保護の重要性についても、併せて 指導を行う。

(イ) 応急手当の学習

 体育・保健体育科の授業において、小学校では簡単なけがの手当の方法を、中学校及び 高等学校では心肺蘇生法等を指導することが学習指導要領に示されている。また、特別活 動や課外指導でも応急手当による指導が行われている。学校教育の中で、このような応急 手当の正しい手順や方法について理解することは、健康教育の観点に加え、普及の観点か らも非常に重要であることを認識し、指導に当たる。

エ 校内における緊急時体制の確立

 万が一、突然死に至る可能性のある事故やその他の災害が発生した場合に備え、緊急時 の対応について、校内の体制を確立しなければならない。具体的には、Ⅴ緊急時の対応

(P63)に記述されているが、日頃から校内の連絡体制、救急体制の研修会等を行い、突 然死に至る可能性のある事故や災害が発生した場合に、被害を最小限に留めるよう努めな ければならない。

オ 研修会の開催

 研修会では、突然死の予防全般に関することや心肺蘇生法の実技習得について、企画・

実施することが望まれる。突然死の予防に関する研修としては、学校の管理下における突 然死の発生の現状、予防のための管理及び指導、心疾患の病態についての理解、心肺蘇生 法実技講習等が考えられる。研修計画を立てる際に、消防署や学校医等の関係機関に協力 を要請するなどの工夫も考慮する。

(2) 実際の指導に当たって

 学校における各教育活動の場面において、具体的にどのような点に留意して指導に当た ればよいかを場合別に示す。

ア 体育・保健体育科授業時における指導

 体育・保健体育科の授業は、運動を主な内容としていることから、その担当者には、突 然死予防のための的確な管理・指導が求められる。以下にその留意事項を示す。

① 年度当初における指導

 年度当初における体育・保健体育科の授業を実施するに当たっては、前年度までの健康 調査票や学校生活管理指導表により、学級担任、保健体育科教諭、養護教諭と話し合いを もち、配慮事項を確認する。その上で、注意を要する子どもには、それぞれの健康管理に ついて話し合い、十分に指導しておくことが大切である。

○ 心臓病、腎臓病の者(特に専門医の判断を要する。)

○ その他、配慮を要する疾病、障害を有する者

 心疾患や心疾患の疑いがあるなど、運動に制限がある子どもの授業の参加については、

一人一人の管理・指導すべき事項を踏まえたうえで、心身の発達段階を考慮した役割をも たせる。例えば、記録係、作戦係、審判等、該当する子どもの興味、関心を生かして授業 に参加できるようにする。また、周囲の子どもには、運動制限のもつ意味について理解さ せる働きかけをするとともに、自然な形で配慮する雰囲気づくりをすることなども重要で ある。

 さらには、子ども一人一人に自分の体への気付きを促すとともに、友達の体調にも気配 りできるよう指導する。自分の健康状態について、気軽に相談できる関係づくりも大切で ある。

② 運動時における指導

○ 健康観察

 顔色や全体的な様子を、運動開始前、運動中、運動終了時と、常に注意を払う。呼吸 数や脈拍数の観察については、中学生、高校生の段階では、自己の体の調子を整え、そ の変化に気付いたり、教師のみならず仲間にも相談したりできる雰囲気づくりをしてお く。特に、心疾患や心疾患の疑いがある子どもなどに対しては、健康観察のチェックポ イントを参考に、心疾患と関連のある項目について、重点を置いて観察を行う(P31「健 康観察チェックポイント」参照)。

○ 準備運動・整理運動

 一般的には、急激な体への負荷を避け、徐々に主運動へと適応し、終了後には、徐々 に体への負荷を取り除いていく。種目の特性に応じ、運動の部位や方法を工夫して実施 する。管理を要する子どもの場合には、学校生活管理指導表の内容及び主治医等の指示 などを踏まえて、自分の健康や体力に応じて、無理のない実施可能な運動を行うように する。

  また、準備運動や整理運動は、運動の特性に応じて行うようにする。

○ 運動強度についての理解

 管理を要する子どもの場合は、学校生活管理指導表についての理解を促す。一つ一つ の運動種目ごとに、具体的にどこまでが運動可能なのかを確認し、理解させておく。

 その他の子どもにも、「学校生活管理指導表」というものがあり、その中で、管理を

要する子どもが、具体的にどんな運動が可能であるかを周知徹底しておく。その際、運 動の仕方によっては運動強度が異なるので、授業を担当する者は注意を払って、指導に 当たる。

○ 個人差についての理解

 発達には、個人差や性差があることを考慮する。授業において、同じ強度となる運動 課題を与えるときには、それぞれの子どもにとって、無理のないよう、また、個人差を 理解して、慎重に実施する。心疾患や心疾患の疑いのあるなどの中学生、高校生には、

脈拍による運動強度の管理ができるように指導する。

○ 温熱条件についての配慮

 厳冬期における寒さ、猛暑期における暑さは運動には適さないため、寒暑におけるス トレスは、避けることが望ましい。運動は熱エネルギーを大量に発生するので、特に湿 度が高く暑いときは、発汗に気を付ける。管理・指導を要する者の運動の実施について は、慎重に判断する。(P83「熱中症の予防と対策」参照)

○ 水分補給の指導

 運動時は、熱エネルギーを放出するために、発汗が行われる。その際、水分補給が不 十分だと体調に不調を来たすので、十分に水分を補給する。

○ 突然死予防のための指導

 心臓震盪は、ボールなどが心臓直上の前胸部に当たることによって起こる。そのため 小さな子どものいるところではバットを振ったりキャッチボールをしない、胸でボール を止める指導はしない、野球や空手など武道では胸にプロテクターを装着させるなどの 予防策を立てる。

○ 応急手当の指導等(AEDを含む)

 中学校及び高等学校では心肺蘇生法(AEDの使用を含む)等の正しい手順や方法を 理解させておく。突然死の予防と関連させて、心停止、呼吸停止等の緊急事態が生じた とき、専門家に引き継ぐまでに、応急手当を実施することの必要性などにも気づかせる。

イ 特別活動における指導

 学級(HR)活動、児童会(生徒会)活動、クラブ活動(小学校のみ)、学校行事での指 導では、運動や身体活動を伴う活動を行う機会が多いため、学級(HR)担任を中心とし て全教職員が所属学年を中心に健康観察や実際の管理・指導に当たる必要がある。また、

学校行事の中の健康安全・体育的行事における運動会(体育祭)、競技会、スキー教室、

臨海学校、林間学校、登山等は、事前に臨時健康診断や健康相談を実施する。

 いずれの場合にも、保護者の理解、協力を得て実施する(P31~32「健康観察チェック ポイント」「健康安全・体育的行事における健康管理のポイント」参照)。

〈特別活動 マラソン大会(高等学校)における留意点の例〉

 以下は、マラソン大会を実施した、ある高等学校が企画の際に留意した点である。

○ 安全第一をモットーにする。

 昨年のマラソン大会を参考に、問題点を整理し、企画に当たる。その際、生徒の体力 や学校における指導の方針を踏まえ、何といっても、安全への対策を優先する必要があ る。

○ 健康状態把握のための臨時の健康診断をする。

 学校医の協力を得て、事前に臨時健康診断を実施し、健康上の課題がある場合には、

距離を縮めて走る、歩いて参加する、運営の手伝いをする等、参加の方法を工夫する。

○ 日常の健康管理のため、1週間前から体調チェックを行う。

 日常の健康管理のため、1週間前から調査票を準備し、体温、睡眠、朝食、体の不調 等の簡単なチェックを行い、一人一人の状況把握をした上で、当日の健康観察にも役立 てる。

○ 事故に対応できる救急体制を整える。

 事故の発生に備えて、学校医と養護教諭が自動車で最後尾を移動し、コースの係員と 連携し、緊急時に対応できるようにしておく。

○ コースへの人員配置を厚くする。

 事故が起きたとき、3分以内で確実に心肺蘇生法を実施できるようなコース取りと人 員の配置をする。具体的には300~400mの間隔でコース係を配置する。教職員だけでは 足りないため、PTAに協力要請をする。また、教職員及び協力者については、少なく とも心肺蘇生法ができるように事前に研修を行う。

ウ 課外指導における指導

(ア) 運動クラブ活動、部活動における指導

① 運動クラブ活動、運動部の活動

○ 健康観察

 運動クラブや運動部の顧問は学級(HR)担任でない場合が多く、活動時のみの健康 観察になりがちである。健康観察においては、外見だけでなく声を掛け合いながら行う ことが大切である。特に風邪のような症状があった場合は、より注意深く病状を聞き、

現在の体調の観察をする。

 心筋炎等の心臓に関する病気であった場合や、心臓に関して何らかの違和感や不快感 を覚えるようなことがあった場合は、運動の可否について慎重に判断する。必要に応じ て、保護者や主治医に相談する(P31「健康観察チェックポイント」参照)。