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空間一様解の不安定化

ドキュメント内 2017 (ページ 40-47)

第 4 章 反応拡散系と時空間パターン 35

4.2 反応拡散方程式とチューリング拡散不安定性 - 一般論 -

4.2.2 空間一様解の不安定化

ここでは、条件(4.12)を満たすとき、拡散がある場合に平衡解(u0,v0) が不安定化するような場合があるかどうか調べる。平衡点からのずれw

1この条件は空間一様解が安定であるという前提で出発したときのみ必要であることに 注意。振動場から出発する場合には、もちろん、空間一様解は不安定であるべきである。

w(u−u0, v−v0)と定義しどのように時間発展するか見る。式(4.10) を平衡点周りに線形化すると次のようになる。

∂w

∂t =γJ w+D2w (4.13)

ただし、

D (

1 0 0 d

)

を用いた。また、境界はノイマン境界条件(自由端;フラックスが0;出入 りが相殺されて0)を満たすものとする2。例えば1次元では境界は、

∂w

∂x(0, t) = ∂w

∂x(a, t) = 0

と表される。x= 0x=aは境界である。ここで、空間一様であった平 衡解が不安定化するとき、空間的周期構造が現れると仮定する(例えば2 次元空間ではストライプやスポットパターン)。簡単のために、1次元空 間のみを考えと、次のように表せる。

w=ccos(nπx

a ) (4.14)

ここでcはパターンの振幅、nはパターンのピッチに関する値であり、k≡ nπ/aとおくと波数(パターンが境界内にいくつできるか)kと定義され る。ここで、

∂w

∂x =−cnπ

a sin(nπx a )

なので、x = 0およびaのとき、∂w∂x = 0となり,上で考えていたノイマ ン境界条件を満たす。次に、

2w

∂x2 =−c(nπ

a )2cos(nπx a )

=−k2w 従って、

2w+k2w= 0 (4.15)

が得られる。パラメータkは様々な値がとれて対応するパターンはwkで 表される。実際のパターンwはそれらの重ね合わせで表現できるので、一 般解を

w(r, t) =

k

Ckeλtwk(r) (4.16)

2これに対応してディリクレ境界条件(固定端)がある。例えば、w(0, t) =w(a, t) =w0

と記述される。

のように表せる。ここで、空間も一般次元に拡張しrで表した。Ckはフー リエ級数展開係数、λは固有値であり、解の安定性の目安となる。式(4.16) を式(4.13)に代入して、式(4.15)を用いると、

λ

k

Ckeλtwk(r) =γJ

k

Ckeλtwk(r) +D2w

=γJ

k

Ckeλtwk(r)−Dk2

k

Ckeλtwk(r) となる。各Ckごとにまとめると、各k成分毎に次の恒等式が得られる。

λwk=γJ wk−Dk2wk. (4.17) 纏めると、

(λI−γJ+Dk2)wk=0 (4.18) となる。いま、固有ベクトルwk ̸= 0となるようにλを定めたいので3、 括弧内の行列が逆行列を持たないこと、すなわち、

|λI −γJDk2|= 0 (4.19) が条件となり。これを展開すると、

λ2+λ(k2(1 +d)−γ(fu+gv)) +h(k2) = 0 (4.20) となる。ただし、

h(k2)≡dk4−γ(dfu+gv)k2+γ2|J|

とした。式(4.20)がRe(λ)<0となる2つの解を持つとき、式(4.16)よ り、平衡点(0,0)は安定となってしまう。ここで、計算の準備ができた。

今一度この節で明らかにしようとしていることを振り返っておこう。式 (4.1)で拡散がない場合、つまり、Dx = 0, Dy = 0のときに空間一様な 状態が安定であるような解が存在するとき、拡散結合によってDx > 0, Dy >0となったときに、その解が不安定化するような条件があるだろう かということが、本節で示したいことである。それを示すことができれ ば、前節で論じたように、チューリング不安定性が生じて、空間一様な状 態は壊れ、周期構造を持つある種の空間パターンが生じる可能性があるこ とがいえる。以下、その話の筋に従って展開する。

まず、拡散がないとき(Dx= 0, Dy = 0)Re(λ(k= 0)) <0となる条 件は既に節4.2.1の式(4.12)で示してある。

3wk=0は平衡点(0,0)を指す

次に、Dx >0,Dy >0の場合に不安定化させたいので、Re(λ(k̸= 0))>

0となるkが存在することが、その条件となる。特性方程式の1, 0 の項の係数をそれぞれB,Cとおくと、

λ= −B±√

B24C

2 (4.21)

となる。少なくとも1つの固有値がRe(λ(k ̸= 0)) >0となるためには、

1)ルートの中身が実数で、2)大きい方の固有値が正になることである。

2)の条件から、−B+

B24C > 0を満たすこととなる。いま、式 (4.12)よりB >0なので、この条件は、C=h(k2)<0と整理される。こ のとき、同時に1)の条件は満たされる。

従って、h(k2) < 0を満たすkが存在する条件を探せばよい。hの定 義を見ると、dk4 > 0, γ2|J| > 0((4.12)より)なので、少なくとも、

dfu+gv >0である必要があることがわかる。

もう少し詳細な条件を探そう。h(k2)はk2について2階微分すると正 なので下に凸の関数である。すなわち、この関数の最小値が負となるkが 存在する条件を探せば良い。最小値は、

h(kmin2 ) =γ2 {

|J| − (dfu+gv)2 4d

}

(4.22) となる。但し、kmin2 =γ(dfu+gv)/2dである。つまり、最小値が負とな るための条件は、

(dfu+gv)24d(fugv−fvgu)>0 (4.23) となる。(詳細は[27]などを見よ)、これらの条件を纏めると以下のように なる。

dfu+gv >0

(dfu+gv)24d(fugv−fvgu)>0 (4.24) 以上をまとめると、条件(4.12)(4.24)が成立するkが存在するとき、

チューリング不安定性が生じ、波数kの空間周期構造が生じる可能性があ る。その分岐の様子は、k2−h(k2)プロットが横軸と交点を持つかどうか で見て取ることができ、拡散係数の比dが分岐パラメータとなる。交点が ない場合には、上記の条件を満たさないのでチューリング不安定性は生じ ない。つまり、当初の安定解がそのまま残る。交点が1つの場合には分岐 点となり、そのときの波数はkc=γ

|J|/dcと見積もれる。dcは分岐点 における拡散係数の比である。交点が2つの場合には、上記条件を満たす kが存在するので、この領域でチューリング不安定性が生じる。分岐の様

子は、h(k2)を(これまでの解説の逆方向に)動かしたときに対消滅によっ ておこるので、サドル-ノード分岐であり、このようにして、空間一様解 が不安定化し、別の定在パターンが生じる分岐の仕方を、チューリング・

シナリオと呼ぶ。もちろん、チューリング・シナリオ以外にも定在パター ンが生じるシナリオはあるので、定在パターンを得るために、必ずしも条 件(4.12)から出発する必要はない4

練習問題4-4

式(4.24)についての証明を自分の手を動かして確認せよ。特に、k2−h(k2) プロットを描いてみて、解がどのように分岐するか確かめよ。

4ただし、条件(4.24)の証明に、条件(4.12)を用いているので、出発点が異なる場合 には、最終的に導出される条件も異なることに注意。

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