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具体例

この場合,会計上の3年間の利益と税法上の3年間の課税所得は次のようになる。

<会計上> 1年目 2年目 3年目 合計

収益 25,000 25,000 25,000 75,000 費用 16,000 16,000 16,000 48,000 利益 9,000 9,000 9,000 27,000

<税法上> 1年目 2年目 3年目 合計

益金 25,000 25,000 25,000 75,000 損金 12,000 12,000 24,000 48,000 所得 13,000 13,000 1,000 27,000

各年度の会計上の利益 と税法上の所得

各年度の会計上の収益,費用と税法上の益金と損金の計上時期が異なる ため,各年度の会計上の利益と税法上の所得にズレが生じる

会計上の利益

と税法上の所得の合計額 会計上の利益と税法上の所得の合計額は一致する

この時,毎年の法人税等の金額は,税法上の課税所得に法定実効税率を乗じて決定されるため,次のよう になる。

1年目 2年目 3年目 合計

課 税 所 得 13,000 13,000 1,000 27,000 法人税等の金額 5,200 5,200 400 10,800

この場合に,税効果会計を適用しなければ会計上の損益計算書は,次のようになる。

<表1> 1年目 2年目 3年目 合計

税引前当期純利益 9,000 9,000 9,000 27,000 法 人 税 等 5,200 5,200 400 10,800 税引後当期純利益 3,800 3,800 8,600 16,200

<表1>の場合には,税引前当期純利益と法人税等が対応していないため,損益計算書が各期の企業の業 績を正しく示さないという問題が生じる。

そして,本来,会計上の税引前当期純利益と法人税等が対応しているあるべき会計上の損益計算書は,次 の<表2>のようになる。

<表2> 1年目 2年目 3年目 合計

税引前当期純利益 9,000 9,000 9,000 27,000 法 人 税 等 3,600 3,600 3,600 10,800 税引後当期純利益 5,400 5,400 5,400 16,200

法人税等の金額 = 税法上の所得金額 × 法定実効税率

合 計 額 は 会 計上 と 税法上で一致する

×40% ×40% ×40%

よって,税効果会計を適用した正しい損益計算書は,以下のようになる。

会計上の法人税等 = 法人税等 ± 法人税等調整額

損益計算書の法人税等に計上する金額を<表1>から修正するために,次の仕訳が必要となる。

1年目 (借) 繰 延 税 金 資 産 1,600 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 1,600 2年目 (借) 繰 延 税 金 資 産 1,600 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 1,600 3年目 (借) 法 人 税 等 調 整 額 3,200 (貸) 繰 延 税 金 資 産 3,200

法人税等調整額の貸方計上額 法人税等のマイナス調整項目 法人税等調整額の借方計上額 法人税等のプラス調整項目

繰延税金資産 前払税金を意味する資産勘定

ここで,上記の仕訳は,費用の繰延と考えるとわかりやすい。

<1年目・2年目>

会計上では 3,600 円発生している法人税等を 5,200 円払ったため,前払費用(繰延税金資産)を 1,600 円計 上し,費用(法人税等)を 1,600 円取り消す。

法人税等調整額の貸方計上額・・・・法人税等のマイナス調整項目 繰延税金資産の計上・・・・・・・・前払費用の計上を意味する

<3年目>

そして,会計上で 3,600 円発生している法人税等を既に 3,200 円前払いしているため,400 円しか払わな くてよいということである。つまり,2年目までの前払費用(繰延税金資産)を 3,200 円取崩し,費用(法 人税等)を 3,200 円計上する。

法人税等調整額の借方計上額・・・・法人税等のプラス調整項目 繰延税金資産の取消・・・・・・・・前払費用の再振替を意味する

将来加算一時差異(繰延税金負債)

① 今後3年間の収益 25,000 円

② 今後3年間の費用は以下のとおりである。

1年目 2年目 3年目 会計上 12,000 12,000 24,000 税務上 16,000 16,000 16,000

<会計上> 1年目 2年目 3年目 合計

収益 25,000 25,000 25,000 75,000 費用 12,000 12,000 24,000 48,000 利益 13,000 13,000 1,000 27,000

<税法上> 1年目 2年目 3年目 合計

益金 25,000 25,000 25,000 75,000 損金 16,000 16,000 16,000 48,000 所得 9,000 9,000 9,000 27,000

この時,毎年の法人税等の金額は,税法上の課税所得に法定実効税率を乗じて決定されるため,次のよう になる。

1年目 2年目 3年目 合計 課 税 所 得 9,000 9,000 9,000 27,000

法人税等の金額 3,600 3,600 3,600 10,800

この場合に,税効果会計を適用しなければ会計上の損益計算書は,次のようになる。

<表3> 1年目 2年目 3年目 合計

税引前当期純利益 13,000 13,000 1,000 27,000 法 人 税 等 3,600 3,600 3,600 10,800 税引後当期純利益 9,400 9,400 △2,600 16,200

<表3>の場合には,税引前当期純利益と法人税等が対応していないため,損益計算書が各期の企業の業 績を正しく示さないという問題が生じる。

そして,本来,会計上の利益と法人税等が対応しているあるべき会計上の損益計算書は,次の<表4>の ようになる。

<表4> 1年目 2年目 3年目 合計

税引前当期純利益 13,000 13,000 1,000 27,000 法 人 税 等 5,200 5,200 400 10,800 税引後当期純利益 7,800 7,800 600 16,200

合 計 額 は 会 計上 と 税法上で一致する

×40% ×40% ×40%

具体例

よって,税効果会計を適用した正しい損益計算書は,以下のようになる。

1年目 (借) 法 人 税 等 調 整 額 1,600 (貸) 繰 延 税 金 負 債 1,600 2年目 (借) 法 人 税 等 調 整 額 1,600 (貸) 繰 延 税 金 負 債 1,600 3年目 (借) 繰 延 税 金 負 債 3,200 (貸) 法 人 税 等 調 整 額 3,200

法人税等調整額の借方計上額 法人税等のプラス調整項目 法人税等調整額の貸方計上額 法人税等のマイナス調整項目

繰延税金負債 未払税金を意味する負債勘定

ここで,上記の仕訳は,費用の見越と考えるとわかりやすい。

<1年目・2年目>

会計上では 5,200 円発生している法人税等を 3,600 円しか払っていないため,未払費用(繰延税金負債)を 1,600 円計上し,費用(法人税等)を 1,600 円増加させる。

法人税等調整額の借方計上額・・・・法人税等のプラス調整項目 繰延税金負債の計上・・・・・・・・未払費用の計上を意味する

<3年目>

3年目に,会計上では法人税等が 400 円発生しているが,未払費用を 3,200 円支払うため,合計 3,600 円 支払うことになる。つまり,2年目までの未払費用(繰延税金負債)を 3,200 円取崩し,費用(法人税等)

を 3,200 円取り消す。

法人税等調整額の貸方計上額・・・・法人税等のマイナス調整項目 繰延税金負債の取消・・・・・・・・未払費用の再振替を意味する

3.一時差異等について (A)

会計上の収益・費用と税法上の益金・損金の差額について税効果会計を適用することになるが,すべての 差額について適用するわけではない。

当該差額は,一時差異と永久差異に分けられる。一時差異とは,計上時期が期間的にズレるものであり,

最終的には会計上と税法上とが一致する差異である。対して,永久差異とは,ズレが永久に解消されないも のである。

そして,税効果会計の対象は,一時差異等に限定されており,永久差異は適用外である。

4.一時差異等の分類 (A)

(1) 将来減算一時差異(繰延税金資産)

将来減算一時差異とは,将来,当該差異が解消するときに課税所得の計算上減算されるものをいう。

<発生年度の決算整理仕訳>

(借) 繰 延 税 金 資 産 ××× (貸) 法 人 税 等 調 整 額 ×××

<解消年度の決算整理仕訳>

(借) 法 人 税 等 調 整 額 ××× (貸) 繰 延 税 金 資 産 ×××

意義 税効果会計の適用の有無

一時差異 一時差異とは,会計上の資産及び負債と課税所得計算上の

資産及び負債との一時的な差異をいう 税効果会計を適用する

永久差異 永久差異とは,会計上では収益及び費用に計上されるが,

税法上では永久に益金または損金に算入されない項目をいう 税効果会計を適用しない

<発生年度>

会計上の利益 < 税法上の所得 法人税等を多く支払っている

法人税等をマイナス調整し,繰延税金資産(前払税金)を計上する。

<解消年度>

会計上の利益 > 税法上の所得

法人税等をプラス調整し,繰延税金資産(前払税金)を取消す。

(2) 将来加算一時差異(繰延税金負債)

将来加算一時差異とは,将来,当該差異が解消するときに課税所得の計算上加算されるものをいう。

<発生年度の決算整理仕訳>

(借) 法 人 税 等 調 整 額 ××× (貸) 繰 延 税 金 負 債 ×××

<解消年度の決算整理仕訳>

(借) 繰 延 税 金 負 債 ××× (貸) 法 人 税 等 調 整 額 ×××

※ 税効果会計の仕訳は,決算整理仕訳で行う点に留意すること。

(3) 法人税等調整額の計算

法人税等調整額 = 当期に発生又は解消した一時差異 × 法定実効税率

(4) 一時差異等の「等」の意味

将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金等については,将来の課税所得を減額し,税金費用を減少させる

時期 利益と所得 決算整理仕訳

将 来 減 算 一時差異

発生時 会計上の利益<税法上の所得 (借)繰延税金資産(貸)法人税等調整額 解消時 会計上の利益>税法上の所得 (借)法人税等調整額(貸)繰延税金資産 将 来 加 算

一時差異

発生時 会計上の利益>税法上の所得 (借)法人税等調整額(貸)繰延税金負債 解消時 会計上の利益<税法上の所得 (借)繰延税金負債(貸)法人税等調整額

<発生年度>

会計上の利益 > 税法上の所得 法人税等の支払いが少ない

法人税等をプラス調整し,繰延税金負債(未払税金)を計上する。

<解消年度>

会計上の利益 < 税法上の所得

法人税等をマイナス調整し,繰延税金負債(未払税金)を取消す。

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