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巻の風速が V 0 以上となる面積 DA(V 0 ) の期待値 E[DA(V 0 )] は以下で表される。

竜巻長さが 1. 6km 程度(沿岸± 5km での竜巻長さ平均値(疑似データ) )であれば,

海岸線から 1km 以上離れた場所に到達する確率は 0.5 程度, 0.5km 離れた場所に到

達する確率は 0.8 程度もある。図 2.1 は竜巻移動方向が半円内で一様とした場合であ

るが,θ= 90 度の方向に移動方向が集中していれば,通過確率は更に高くなる。ま

た区間を短くすればするほど,移動距離の長い竜巻ほど,見かけの発生密度の増加は

顕著になり,ハザードを必要以上に過大に評価することにつながる。

補足2-3-参考3-8

図 2.1 竜巻の発生と移動の概念図

図 2.2 帯状領域での竜巻の通過数

2.3 竜巻データベースの質

上陸竜巻(水上で発生し,その後上陸した竜巻)の場合,その発生場所の緯度・経 度は陸上を指す場合が多く,上陸地点もしくは被害の発生地点(陸上)がデータベー スに記されているものと考えられる。即ち,上陸竜巻の多くは,本当の発生位置(海 上)を特定することは難しい。このような竜巻に関しては,海岸から 1km 以内の海 側

1

で発生したものとするとともに, 上陸後の竜巻パラメータ ( F スケール, 被害長さ,

被害幅)を解析に用いている。

一方,沿岸域を 1km 毎の短冊領域で評価する場合は,発生・消滅場所の緯度・経 度情報から短冊内での発生数と通過数および短冊内の竜巻長さ(セグメントの長さ)

を解析することになる。上陸竜巻の緯度・経度情報は,多くの場合,海側を指してい ないため,陸側の F スケールや竜巻幅は分かっていても,海側のセグメントの長さを 評価することができない。

一方,水上(上陸せず)の竜巻は,緯度・経度情報からセグメントの長さを求める

1

海岸線を通過した竜巻と位置づけるのが正しいが,沿岸部を発生位置としている。

沿岸部での発生数が多い一因とも言える。

補足2-3-参考3-9

ことは可能であるが,逆に F スケールや幅などのパラメータは不明である。更に,目 撃情報を基にした発生・消滅位置の緯度経度から求めた竜巻長さと,陸上での実際の 被害域から求めた竜巻長さとは質的に異なるデータである。

また,海上竜巻の緯度経度情報の精度についても,陸上竜巻の場合,その誤差は±

1 秒と非常に小さいが,海上竜巻の場合には± 10 ~± 30 秒程度のものが多く,竜巻に よっては± 1 分というものもある。一般に,沖合になればなるほど誤差範囲は大きく なり,沖合 5km では± 2 ~± 3 分の誤差範囲と記されたデータも少なくない。

2.4 発生数・同時確率密度分布・ハザードの関係

竜巻の ( 年平均 ) 発生数ν,同時確率密度分布 f(x,y,z) ,および竜巻ハザード( 1 年間 にいずれかの竜巻により V0 以上の被害を受ける確率 P

V0

(D) )の関係について整理す る。竜巻のハザード P

V0

(D) は,竜巻の年平均発生数νと次の関係にある。

0 0 0

)]

( ) [

( )

( A

V DA V E

R D

PVo

(2)

即ち,竜巻の場合,ハザードは年平均発生数ν, E[DA(V

0

)] に比例し,竜巻検討地 域の面積 A

0

に反比例する。

1km 幅の短冊では A

0

が 1/10 になるため, ( E[ ・ ] は一定とすると)νが 1/10 近く にならない限りかなり大きなハザードを与える。

被害面積期待値 E[ ・ ] は,竜巻風速,被害幅,被害長さおよび移動方向がそれぞれ 無相関だと仮定すると,次式で近似できる。

) 4 / D ( D D )) ( 1 ( )

(V0 F v0 wl 0l w 0 02

DA

E

(3)

即ち,被害面積期待値は,風速の超過確率 (1-F(V

0

)) に比例する。また,上式の第 1 項,第 2 項の寄与度が大きいので,平均被害長さ

l

にもほぼ比例する。

1km 幅の短冊の場合,被害長さ l を全長で取ると, (式 (2) も考慮すると)非常に大 きなハザードとなる。

同時確率密度分布 f(x,y,z) は,竜巻パラメータが x,y,z となる一つの竜巻の出現確率 を表している。従って, N 個の竜巻があった場合,それらの竜巻のパラメータの出現 割合( N 個に対する割合)のみが確率分布に反映され,個数 N は平均値νを通じて ハザードに反映される(式 (2) 参照) 。

日本の場合,沿岸部で竜巻の発生数(含む上陸数)は多いが,比率的には F スケー

ルの小さなものが支配的である。一方,内陸部(例えば陸側 4 ~ 5km )では発生数は

少ないが,相対的に F スケールの大きな竜巻の比率が大きい。しかも, F スケールの

大きな竜巻は沿岸部から移動してくるため,通過竜巻も考慮したハザードは予想以上

に厳しくなることがある。

補足2-3-参考3-10

2.5 まとめ

1km 毎の短冊でハザードを求めることは, Wen and Chu の数学的モデルが仮定し ている条件を満足していない。また, Wen and Chu のモデルは,一つの竜巻の出現 確率(同時確率密度分布)に基づくものであり,竜巻パラメータに応じた通過数は必 然的に満足されている。従って,通過数を発生数と見なすことは,発生数を過剰に評 価することになる。

短冊の区間を短く取れば取るほど,あるいは竜巻長さが長くなればなるほど,通過 数を考慮した発生数の密度は高くなると言う不合理性を有している。通過数は,定常 な状態では一定値になることから,場の均一性を確認するために使用すべきであり,

発生数と混同してはならない。

海上竜巻の緯度・経度情報を基に, 1km 刻みで海上竜巻を精度良く解析することは 困難である。一方で,近年,海上竜巻が数多く観測・目撃されていることを考えると,

その影響は考慮すべきと考える。観測精度やデータの質等を勘案すると,海域 5km 程度の範囲内での海上竜巻の発生数を考慮しつつ,海上竜巻の特性を陸上竜巻の特性 で代用する手法は妥当なものであると考える。また,海岸線から± 5km の範囲は,

F2 クラスの竜巻長さの平均値及びばらつき(平均値 2.967km ,標準偏差 3.205km )

を考慮しても, Wen and Chu のモデルの適用範囲内にあると考える。

補足2-3-参考4-1

【参考資料 4 】