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114 鹿児島大学水産学部紀要第43巻(1994)

5.2背方向反射指向性パターンの変動要因の分析 5.2.1反射指向性パターンの変動ついての予備的検討

フーリエ変換によるスペクトル解析の手法を用いてより応用範囲の広い反射指向 性パター ンの分析を試みた。結果の検討の前に魚体反射指向性パターンの変動の要因と予測されるス ペクトルの分布傾向について整理する。

1)不規則雑音

送信出力や位相のゆらぎ,バックグラウンドノイズなどの,入射角の変化と無相関の成 分がこれに相当する。したがって反射指向性パターンの振動スペクトルの上では特定のピー ク,すなわち周期 性を持たない。また魚体の回転制御のふらつきもこの範鴫に含まれる。

本実験の場合同一条件で同期のとれた多数回の波形を得ることができるので,Ensamble AveragingによってS/N比を向上させることが可能である。

2)入射角による投影面積の変化

魚体が散乱・吸収する音響エネルギーの総和は投影面積によって規定される。本実験で は頭部入射から尾部入射まで180.の測定を行ったので,この成分は頭部,尾部で小さく 背方向で大きい緩やかな変化となって現れるものと推定される。この場合振動数スペクト ルは振動数0の定数成分を含む低振動数領域に重畳して現れる。またその変化は魚体型の 違いによる投影面積の増減,入射面の曲率の差などの影響を受ける。

3)魚体の構成要素が持つ指向特性による変化

鱒のように強い反射音源と考えられる構成要素はそれ自身に由来する指向特性を有する。

この指向特 性は無数の点音源の干渉に帰結されるが,反射指向'性パターンの変動の上では 2)と同様の緩やかな変化として現れる。個々の構成要素の空間的な広がりが魚体長に比 較して小さいため,波長に対する魚体長(L//A)が比較的小さい場合には激しく振動 する変化の原因とはならないであろう。振動数スペクトルは2)と同様低い領域に現れる

ことが予想される。

4)魚体構成要素間の干渉による変化

この変化は反射指向性パターンに極を形成する。極大値付近では各部の反射の位相差が 小さく足し合わせの干渉が現れており,極小値付近では各部の反射の位相が90.以上ずれ て打ち消し合いの干渉が生じている,とみなせる。

魚体の内部構造に関する 情報と強い関連があるのは4)の変化である。これによる変動の 周期は仮想的な反射音源間の間隔と波長の関係で決まる。以後4)の成分を中心に検討を進 める。

5.2.2反射指向性パターンの振動スペクトル

スペクトル解析に関する基本的事項は主に日野60),南64)によった。伝搬距離差領域で等

山中有一:魚体の超音波反射指向性パターンと反射波形 115

間隔にサンプリングされたIXklの離散フーリエ変換をIFklとすると,この変換は次式 で示される。

n−1

R = z X i e ‑ 2 願 i j k /

(5−1)

またパワースペクトルIPklは

I P k l = I F k F k * ( 5 − 2 ) となる。ここでIFk*|はIFklの複素共役である。|Pklはナイキスト振動数で折り返 すことにより,振動数N=0からN=256までの257本の片側離散スペクトルとして表される。

ギンガメアジの場合のIXklおよびlPklを一例としてFig.5−4に示す。スペクトルは 振動数40以下の成分を表示した。振動数40を超える成分は漸減し,全パワーに対する寄与は 無視できることを確認した。

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DifYe歴nceinpmpagationdistanCe

2.0

40

Fig.5‑4.ResultsofCara刀苑sex/tzscjatus、a,transformedreflectingpatterntodistancecoor‐

dinatefromangularcoordinate.b,one−sidedpowerspectrumofa・Numberofvi‐

bration(frequency)rangeofthespectrumgraphisOto40、Thepoweroutofrange issolittleastobeneglected.

│I l I l l m h I

1 0 2 0 3 0 Numberofvibmtion

116 鹿児島大学水産学部紀要第43巻(1994)

反射指向 性パターン全体のパワーはParsevalの公式の離散表現により

N−1 N/2−1

二Xm2=P 十二P +PN/,(5‑3)

m−0 k=1

で表される。

反射指向性パターンに周期性が存在する場合はスペクトル分布上に特定の帯域幅を持った ピークを生じる。そこでスペクトルの分布から判断していくつかの帯域に分割した。帯域分 割には数学的手法は用いなかったが,スペクトル分布をリニア軸上にプロットして段階的に 拡大表示することにより,変化の連続性とレベルを総合的に判断した。

Power3pecmm

pnntout

Elementalpa【tem printout

RemainderpatIem primouI

alnpu

DiscreteFourier Transfbrm

{

pecmm Powerspec町um

{庇}

Convolution Convolution {庇}{P6E)

lution

{P6E

Inver$eDiscrete FourierTransfbrm

xk Discrete mnsfbrm k

ac1lon Subtraction lxk}‐{xlK}

Bands Bandselection

Filter Filterfimction

{P企}

Loop

Fig.5‑5.Flowchartforelementalpatternextraction.

各帯域の成分を振動数領域に設けたフィルターにより抽出し,これをさらに逆フーリエ変 換することによって成分パターンに分解した。フィルター関数IPfklには矩形ローパス フイルターを用い,IFklとの積を逆フーリエ変換して計算した。処理のフローチャートを Fig.5‑5に示す。N=Oの成分は逆フーリエ変換するとデータ領域で定数(データの平均値)

になる。このときの残差が反射指向』性パターンの変動成分の総和で

N − 1 N − 1

二P =二(x銅一天)

k = 0 m = 0

(5−4)

となり,データの分散のN倍に等しい。

またk=0を除くスペクトルは,低振動数成分が大きく,その後いくつかのピークが現れ る。ギンガメアジの反射指向 性パターンを各成分に分解した結果を一例としてFig.5−6に 示す。

00

︵ンE︶

000000000000000 6422464224642

106

如釦抑m0剖如釦鉛m0釦釧印仙加0釦如

品画一go室畠

Fig.5‑6.ThesamplesofelementalpatternextractedfromCa7arz虻sejVtzscZa虹sreflecting patternanditspowerspectrum、a,Remainderpatternsubtractedconstantelement fromwholepattem;b,lst、bandelementalpattem;c,2,..bandelementalpattern;

d 3rdbandelementalpattern;e 4th・bandelementalpattern;f,Remainderpat‐

tern.

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山 中 有 一 : 魚 体 の 超 音 波 反 射 指 向 性 パ タ ー ン と 反 射 波 形

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