次に、白書や統計資料から日本の社会経済的な変化を追っていくことにしたい。
図表7は、総人口の推移を示している。1990年に1億2,361万人であった総人口は、2010年には 1億2,805万人まで増加している。それが、2015年には1億2,709万人まで減少しており、2010年頃 から日本が人口減少社会へと突入したことが見て取れる。
図表8は、65歳以上の人口の推移を示したものだ。1990年から高齢者の数が増加し続けているこ とがわかる。2015年時点で高齢者の数が3,384万人となり、国民の約4人に1人が高齢者であるとい う状況である。日本は超高齢社会に突入している。人口減少と高齢化が同時に進行することで、生産 年齢人口の減少や社会保障費・介護負担の増大といった事態が生じるようになった。
図表7 日本の総人口の推移
(出所)総務省『国勢調査』より筆者作成。
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図表8 65 歳以上の人口の推移
(出所)1990・2000・2010 年は総務省『国勢調査』、2015 年は総務省『人口推計』より筆者 作成。
図表9は、単独世帯数の推移である。1989年に786万世帯であったのが、2015年には1,351万世 帯となっており、単独世帯数が倍近くまで増加している。理由として、高齢化に伴い高齢の単身者が 増えたことや都市化が進むにしたがって若者の単身者が増えたことが挙げられる。晩婚化や未婚化の 進展、離婚の増加といった結婚・世帯形成行動の変化も要因の1つであるといえよう。
専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移を示したのが、図表 10 である。1990 年には、専業主婦世帯 は 823 万世帯、共働き世帯は 897 万世帯で、専業主婦世帯数の方が多かった。しかし、2000 年には 逆転しており、その後も共働き世帯の数は増え続けている。男女雇用機会均等法の施行85、育児休業制 度の施行86といった法整備の後押しがあり、女性の社会進出が増えたことが背景にあるだろう。他方で、
夫の平均年収が減少傾向にあり、必要に迫られて働きに出る女性が増えているという動きもある。
85 1986 年、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」が施行された。
1997 年に一部改正されている。
86 1992 年、育児休業法が施行された。1995 年に育児・介護休業法に改正されている。
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図表9 単独世帯数の推移
(注) 調査年の関係上、1989・2001・2010・2015年となった。
(出所)厚生労働省『国民生活基礎調査』より筆者作成。
図表10 専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移
(出所)1990・2000年は総務省『労働力調査特別調査』、2010・2015年は総務省『労働力 調査』を元に筆者作成。
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図表11は、1年を通じて勤務した給与所得者1人当たりの平均給与の推移を示す。1990年に425 万円であったのが、2000年には461万円まで増加するものの、2010年には412万円まで大幅に減少 している。2015年には420万円となり、2010年から微増しているものの、2008年のリーマンショッ ク前の水準には戻っていない。
また、2015年の平均年収を男女別に見ると、男性が 521 万円、女性が 276 万円となっており、
男女で約2倍の差があることも注目すべき点だといえよう。正規、非正規について見ると、正規が 485 万円、非正規 が171 万円であり、こちらは2倍以上の差が生まれている87。
図表12は、生活意識の構成割合の年次推移を示したものである。1990年には「大変苦しい」が 10.9%、「やや苦しい」が25.9%と「苦しい」と答えた割合が36.8%であった。2015年には「大変 苦しい」が27.4%、「やや苦しい」が32.9%と合わせて60.3%となり、生活が困難なほど経済的に圧 迫されている人々の様子が窺える。「普通」と回答した割合が、2000年以降半数を切っているとこ ろも気になる点である。「一億総中流」の時代はすでに過去のものとなっていることがわかるだろ う。
図表13は、所得や資産の格差を測る尺度であるジニ係数88の推移を示している。ジニ係数は0から 1のあいだを動き、数値が大きいほど格差が大きいことを表す。1990年には0.4334であったジニ係 数が、2014年には0.4822まで増加している。ジニ係数の推移からも格差が拡大していることがわか るだろう。
図表11 平均年収の推移
(出所)国税庁『民間給与実態統計調査』より筆者作成。
87 国税庁(2014)より。
88 ここでのジニ係数は、等価当初所得ジニ係数を指しており、所得が再分配される前の数値である。
等価当初所得ジニ係数は、1992 年以降一貫して上昇傾向にある。一方で、所得再分配後の等価再分 配所得ジニ係数については、1998 年をピークに低下傾向にあるが、等価再分配所得ジニ係数が低下 しているにもかかわらず相対的貧困率が上昇していることから、高所得層と低所得層の格差の拡大を 指摘する見方もある。厚生労働省(2012)、114 ページなど。
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図表 12 生活意識の変化
(出所)厚生労働省『国民生活基礎調査』より筆者作成。
図表 13 ジニ係数の推移
(注1)ジニ係数は、「当初所得」ジニ係数を用いた。
(注2)調査年の関係で、1990・1999・2011・2014 年となった。
(出所)厚生労働省『所得再分配調査』より筆者作成。
図表14は、完全失業率の推移を示している。完全失業率とは、完全失業者数を労働力人口で割って 算出するものである。1990年には2.1%だった完全失業率は、2010年の5.1%をピークに、2015年に
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は3.4%にまで減少している。2010年以降、平均年収の微増とも連動するように改善傾向で推移して いることが読み取れる。
図表15は、自殺者数の推移を示したものである。1990年に2万2,436万人だった自殺者数は、
2000年には3万1,957万人にまで増加している。2010年には微減し、3万1,690万人となり、2015 年に3万人台を切り2万4,025万人まで減少している。図表14と合わせて見ると、完全失業率と自殺 者数が比例していることがわかる。自殺の主たる動機原因として、「健康問題」に続いて「経済・生 活問題」が次点となっている89ことからも、雇用問題が自殺者数と密接に関わっていることがわか る。自殺者数は、2000年から2010年にかけてピークを迎え、その後低下している。
図表16は、現在の生活に対する満足度の推移を示している。興味深いことに、2000年から2015年 まで若干の変動はあるものの大きな変化は見られない。図表12と図表13では「生活が苦しい」と感 じている割合が増加していることやジニ係数に見る格差の拡大を確認したが、それらは生活満足度へ は影響しないようである。生活満足度は、完全失業率の低下や自殺者数の減少と符合するようにはっ きりと高まっているのである。
図表 14 完全失業率の変化
(出所)総務省統計局『労働力調査』より筆者作成。
89 警察庁(2014)より。
34 図表15 自殺者数
(出所)警察庁『自殺統計』より筆者作成。
図表 16 生活満足度の推移
(出所)内閣府『国民生活に関する世論調査』より筆者作成。
図表17は、家計支出におけるモノとサービスの割合の変化を示している。モノは、1990年に 63.0%であったのが、2015年には57.9%にまで減少している。一方サービスは、1990年には37.0%
だったのが、2015年には42.1%となっている。サービス経済化が進行するにつれて、サービスへの 支出が増大している動きがわかるだろう。数字には表れないが、モノのサービス化が進展しているこ とを考えると、サービス経済化は社会経済全体を特徴づけている。
合わせて確認すべきなのが、図表18に示されているインターネットの人口普及率の推移である。
2000年には37.1%であった普及率が、2015年には83.0%にまで増加している。利用者人口は1億46 万人となっている90。インターネットの普及と連動して、消費者向け電子商取引の市場規模が継続的 に拡大していることも近年の特徴といえよう。また、2010年頃からスマートフォンの利用が一般的
90 経済産業省(2014)より。
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になったことも変化として挙げられる。総務省(2015)によれば、2010年に9.7%だったスマートフ ォンの保有率が、2014年には64.2%まで増加している。情報通信機器の普及が飽和状況にある中、
驚異的な伸びをみせている。さらに、総務省情報通信政策研究所の「平成26年情報通信メディアの利 用時間と情報行動に関する調査」において、スマートフォン利用者に占めるソーシャルメディア利用 者の割合は、2014年に91.6%となっている。スマートフォンの普及に伴いソーシャルメディア利用 が伸びた様子が窺えるだろう。
図表 17 家計支出割合の変化
(注) 調査年の関係上、1990・2000・2010・2013 年となった。
(出所)総務省『家計調査』を元に浅野(2015)を参考にして筆者作成。
図表 18 インターネットの人口普及率の推移
(出所)総務省『通信利用動向調査』より筆者作成。
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