第 3 章 リニア発電機について
3.8 磁気回路
3.8.1 磁気抵抗の計算
Fig. 3.13 に示すインダクターの鉄心の磁気抵抗(Reluctance)ℜCは、式(3.8-1)で求めることが
できる。
0 c c
r c st
l A k
ℜ =µ µ (3.8-1)
但し、μr : 鉄心の比透磁率(Relative permeability)、Ac : 鉄心断面積 [m2]、lc : 鉄心の磁路長 [m]、 kst : 鉄心の積層ファクタ(Stacking factor)[0.9~0.95]
一般に鉄心形状の水平幅 t1wと垂直幅t1hの中心線を磁路として想定し、磁気抵抗を計算するこ とが多い。この計算方法は鉄心の形状が一定である場合は、大きな問題はない。しかし、本研究 でのリニア発電機の固定子の鉄心形状は、水平幅t1wと垂直幅 t1hが異なるので、中心線のみ推定 した磁路計算方法は適していない。そのため本節では、鉄心形状別の計算方法を考察する。また、
鉄心の比透磁率の推定方法を述べた後、鉄心形状別の計算方法による磁気抵抗の差を明らかにす る。
(1)鉄心形状による磁路長の計算
鉄心の形状別磁路推定の計算方法を以下の①から④に示す。
① インダクターの鉄心の磁路を鉄心の中央部を通る水平磁路 lwと垂直磁路 lhのみ近似した場合
の様子をFig. 3.15に示す。
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Fig. 3.15 Straight line magnetic path length.
直線磁路長ℜC1の計算を式(3.8-2)に示す。
( )
( )
1 2
2 0.036 0.051 0.174 m
C lw lh
ℜ = +
= + = (3.8-2)
② インダクターの鉄心の磁路を鉄心の中央部を通る水平磁路bsuと垂直磁路hsuおよび細い円弧 磁路0.5t1hで近似した場合の様子をFig. 3.16に示す。
但し、Δhsu : 水平幅の厚みt1wの半分から垂直幅の厚みt1hの半分を引いた値 [m]
Fig. 3.16 Narrow arc line magnetic path length.
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Fig. 3.16に示すインダクターの磁路は、鉄心形状での細い円弧磁路(t1hの半分)を水平磁路bsu
と垂直磁路hsuの繋ぎ部分に近似した細半径磁路長ℜC2の計算を式(3.8-3)に示す。
( ) ( )
( ) ( )
2 2 2 4 4 2 1 1
4 2
0.011 2 0.025 2 0.029 4 0.5 0.022 0.5 0.011 2
2 0.165 m
C u u su h
bs hs h π t
π
ℜ = + + ∆ +
= ⋅ + ⋅ + ⋅ − ⋅ +
=
(3.8-3)
③ インダクターの鉄心の磁路を鉄心の中央部を通る一部の水平磁路 bsu'と垂直磁路 hsuおよび広 い円弧磁路0.5t1wで近似した場合の様子をFig. 3.17に示す。
但し、Δbsu : 水平幅の厚みt1wの半分から垂直幅の厚みt1hの半分を引いた値 [m]
Fig. 3.17 Wide arc line magnetic path length.
Fig. 3.17に示すインダクターの磁路は、鉄心形状での広い円弧磁路(t1wの半分)を水平磁路bsu'
と垂直磁路hsuの繋ぎ部分に近似した広半径磁路長ℜC3の計算を式(3.8-4)に示す。但し、水平磁路 bsuから水平幅と垂直幅の差(Δbsu)を引く必要がある。
( )
( )
' 1
3 2 2 4 2 1
4 2
= 2 0.014 2 0.029 2 22 2 0.155 m
C bsu hsu π th
π
ℜ = + +
⋅ + ⋅ +
=
(3.8-4)
④ インダクターの鉄心の磁路を鉄心の中央部を通る水平磁路bsuと垂直磁路hsuおよび楕円の円 弧磁路Sarcで近似した場合の様子をFig. 3.18に示す。
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Fig. 3.18 Elliptic arc line magnetic path length.
Fig. 3.18に示すSarcは、長い半径aと短い半径bで構成されている楕円の円弧であるが、この
楕円の円弧は4つあるため、楕円とみなすこともできる。一般に鉄心の磁路計算では、特別な関 数を用いる楕円円弧の計算を適用する例は極めて少ない。しかし、鉄心の磁路に楕円が存在する 場合、一般的な磁路計算方法では誤差が大きくなる。そこで本節では、第 2 種楕円積分(2nd complete elliptic integral)用いて磁路に対する楕円の円弧計算方法を考察する(20)(21)(22)(23)。
まず、Fig. 3.18の楕円の円弧Sarcを一つの楕円として説明を述べるため、楕円の標準型をFig. 3.19
に示す。
Fig. 3.19 The overview of the circumference of the ellipse.
Fig. 3.19の楕円は、中心を原点Oとし、x軸で長い半径を長半径(Semi-major axis)としてaと、
短い半径を短半径(Semi-minor axis)としてbで表している。この楕円の方程式を式(3.8-5)に示す。
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x22 y22 1 , 0
(
b a)
a +b = < < (3.8-5)
長半径 a、短半径bで示す円周の長さ(以下は周長とする)は線分dsで近似することができ、
この概要をFig. 3.20に示す。
Fig. 3.20 An approximation of the circumferential length of the first quadrant.
Fig. 3.20に示す第1象限の周長をピタゴラスの定理と積分により求めることができる。
周長の一部分である線分dsは、dxとdyにより直角三角型になるので、式(3.8-6)のように示す ことができる。
( ) ( ) ( )
ds 2 = dx 2+ dy 2 (3.8-6)式(3.8-5)からyを整理すると、次式(3.8-7)のように変形できる。
y b 1 x22
= ± −a (3.8-7)
但し、y > 0
式(3.8-7)を用いて式(3.8-6)のdyを計算すると、式(3.8-8)のように示すことができる。
2
1 2
b x
dy dx
a x
a
= −
−
(3.8-8)
式(3.8-8)を式(3.8-6)に代入すると、式(3.8-9)のように表現できる。
( ) ( ) ( )
( ) ( )
( )
2 2
2 2 2 2 2
2 2 2 2
2 2 2 2 2
2 2 2
4 2 4 2 2
2 2
2
2 2 2
1 1
= 1
1
= 1
b x b x
ds dx dx dx dx
a x a x
a a
b x b x a
dx dx dx
a x a a x
a b x
dx a a x
= + − − = + − −
+ − = + −
+ −
31
2 2 12
2 2 2
1 b x
ds dx
a a x
= + − (3.8-9)
最後に、線分 ds を第 1 象限のみ積分して周長を求めることができる。また、求めた周長を 4 倍すると、楕円の円周の全長Sになるので、式(3.8-10)に示す。
1
2 2 2
2 2 2
4 0a 1 b x
S dx
a a x
=
∫
+ − (3.8-10)但し、媒介変数は、 cos , sin , 0 x a= θ y b= θ ≤ ≤θ π2
再度、式(3.8-10)を変形すると、楕円の円弧Sarcを式(3.8-11)で求めることができる。
Sarc=
∫ ( ) ( )
dx 2+ dy 2 (3.8-11)媒介変数を用いて式(3.8-12)のように変更することができる。
E k
( )
02 1 k2sin dπ
θ θ
=
∫
− (3.8-12)但し、離心率:k2 a b2 2 2 a
= −
再度、媒介変数を用いて式(3.8-10)を計算すると、式(3.8-13)のように示すことができる。
( )
2
2
2
2
2
2 2
0
2 2 2 2
0
2 2 2 2
0
2 2
0 2
2 2
0
4
4 cos sin
4 sin
4 1 1 sin
4 1 sin
dx dy
S d
d d
a b d
a b a d
a b d
a
a k d
π
π
π
π
π
θ θ θ
θ θ θ
θ θ θ θ
θ θ
= +
= +
= + −
= − −
= −
∫
∫
∫
∫
∫
(3.8-13)
式(3.8-12)を用いて楕円の円周の全長Sを表現すると、式(3.8-14)のように示すことができる。
S=4aE k
( )
(3.8-14)ゆえに、Fig. 3.18に示すインダクターの鉄心磁路を楕円の円弧として表現すると、長半径aは
t1wの半分で0.011m、短半径bはt1hの半分0.0055mになる。したがって、楕円の円周の全長Sは
0.05329mになる。最後に、楕円積分の方法で計算した楕円磁路長ℜC4の計算を式(3.8-15)に示す。
( )
( )
4 2 2
2 0.025 2 0.029 0.05329 0.161 m
C bsu hsu S
ℜ = + +
= ⋅ + ⋅ +
=
(3.8-15)
計算方法によって磁路長は変化するので、計算結果をTable 3.8に示す
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Table 3.8 The magnetic path length calculation results by shape.
Shape All
straight
Narrow radius
Wide radius
Elliptic integrals
Length [m] 0.174 0.165 0.155 0.161
したがって、鉄心の磁路形状が一定である場合は、通常の計算方法でも誤差は少ないが、磁路 形状が一定でない場合は、計算方法によって磁路長の誤差が大きくなる。
(2)鉄心の比透磁率の推定
磁気抵抗を計算する時、鉄心の比透磁率を知る必要がある。この場合、鉄心材質によって比透 磁率が異なる。特に、鉄心が使用される磁束密度の変化によって磁界が変わるため、比透磁率も 変化する。また、計算に適用する基準値を製造社のデータのどの部分から適用すればよいかを迷 うことが多い。そのため、比透磁率の簡易的な推定方法を以下に説明する。
絶対透磁率μabは式(3.8-16)のように示すことができる。
µab =µ µ0 r H/m
[ ]
(3.8-16)ここで、磁界Hを含む最大透磁率μmaxを式(3.8-17)に示す。
max
0
B µ H
=µ (3.8-17)
そこで本節では、比透磁率を鉄心のB-H曲線から近似する場合を以下のように整理した。
鉄心のB-H曲線での透磁率の定義をFig. 3.21に示す。
Fig. 3.21 Definition of permeability.
Fig. 3.21に示す初透磁率μinitは、磁界Hを限りなく0に近づけた時の磁束密度Bと磁界Hの比
率であり、B-H曲線での原点からの接線を言う。最大透磁率μmaxは、B-H曲線の原点からの接線 の内、勾配が最大になるもの比を言う。また、B-H 曲線の線形領域は、磁束密度と磁界が比例す
33
るため比透磁率は一定になる。しかし、飽和領域での磁束密度は一定であるが、磁界は増加する ので比透磁率は0に近くなる。そのため、B-H曲線の線形領域を用いて比透磁率を求める。
Fig. 3.21に示す最大透磁率μmaxでの傾斜の接線からの磁束密度をB2と、磁界をH2とする。そ
して、この最大透磁率の任意の点から線形に変化する磁束密度と磁界の最低値をB1とH1にする。
最後に、磁束密度の差ΔB = B2 - B1と磁界の差ΔH = H2 - H1を求める。この線形領域で計算するこ とを微分透磁率μdというので、式(3.8-18)に示す。
d B µ = ∆H
∆ (3.8-18)
比透磁率μrは式(3.8-19)で求めることができる。
0 r d
µ µ
= µ (3.8-19)
また、直流磁界に交流磁界を重ね合わせた時の増分透磁率を用いて比透磁率を求める場合もあ る。例として、本研究で用いる解析ソフトから提供する電磁鋼板(Steel-1008)の B-H データを Table 3.9に示す。
Table 3.9 B-H data of Steel 1008.
H [A/m] B [T]
0.0 0.000
159.2 0.240
318.3 0.865
477.5 1.111
636.6 1.246
795.8 1.331
1591.5 1.500
3183.1 1.600
4774.6 1.683
6366.2 1.741
7957.7 1.780
15915.5 1.905
31831.0 2.025
47746.5 2.085
63662.0 2.130
79577.5 2.165
159155.0 2.280
318310.0 2.485
397887.0 2.585
最大透磁率μmaxの確認と磁束密度および磁界の線形変化領域を確認するためのB-H曲線をFig.
3.22に示す。
34
Fig. 3.22 The definition of the linear region of magnetic flux density and magnetic field.
Table 3.9とFig. 3.22を用いて計算した磁束密度の差ΔBと磁界の差ΔHをTable 3.10に示す。
Table 3.10 The calculation results of the excerpt from the data.
Magnetic flux density [T] Magnetic field [A/m]
B2 B1 ΔB H2 H1 ΔH
0.865 0.240 0.625 318.3 159.2 159.1
ゆえに、微分透磁率μdは0.003928で、比透磁率μrは3125.8になる。
(3)磁気抵抗の計算
Table 3.10により求めた比透磁率を用いて磁路長の違いによる磁気抵抗の計算結果をTable 3.11
に示す。但し、この計算結果はB-H曲線の線形領域である。
Table 3.11 The calculation results of the magnetic reluctance by magnetic path length.
Shape All
straight
Narrow radius
Wide radius
Elliptic integrals Magnetic reluctance [At/Wb] 52987.3 50111.8 47236.4 49113.8