1. 微小外科(マイクロサージャリー)を用いた四肢 再建( 金谷文則, 普天間朝上, 岳原吾一, 伊佐智博, 堀切健士, 赤嶺良幸)
微小外科の進歩により小径血管の吻合も可能になり 四肢欠損への修復に応用が可能となった。本教室では 1) 外傷性, 2)腫瘍切除後, 3)骨髄炎に対する根治的切除後, 4)先天異常などによる四肢欠損や機能障害などの従来の 方法では再建が極めて困難な症例に対してマイクロサー ジャリーを用いた血管柄付き腓骨移植や遊離広背筋皮弁 などの組織移植術を行っている。組織移植術を用いて機 能的ばかりでなく整容的にも良好な四肢再建が可能とな った。
2. 運動・知覚神経の選択的再生能に関する実験的 研究(金谷文則, 普天間朝上)
末梢神経損傷例において神経縫合部で運動神経が知 覚 神 経 に , 知 覚 神 経 が 運 動 神 経 に 再 生 す る misdirection がおきると神経線維の過誤支配がおこり 機能的な回復が得られない。私たちはこの misdirection をおこさない対策として近位及び遠位神経断端の運動神 経束と知覚神経束を組織化学的に同定し運動神経束同士 と知覚神経束同士を縫合している。再生神経に運動・知 覚神経への選択的再生能がありそれを助長することがで きれば misdirection の減少により良好な機能回復を得 られる。私たちはラット大腿神経を切断, 縫合しその遠 位 の 運 動 枝 と 知 覚 枝 の CAT(choline acetyl transferase)活性を測定した結果, 運動神経線維に選択 的再生能はないが運動神経枝に再生した運動神経は知覚 枝に再生したものに比べて成熟(maturation)した結果を 得た。
3. 先天性橈尺骨癒合症の分類とその骨形態におけ る 病態 の検 討( 金 谷文 則, 普 天間 朝上 , 金城 政樹 , 岳原吾一, 伊佐智博, 堀切健士)
先天性橈尺骨癒合症は近位橈尺骨間が前腕中間位から 回内位で軟骨性もしくは骨性に癒合する比較的稀な疾患 である。その癒合部を解離しても高頻度に再癒合をきた すために, 機能的肢位に前腕の位置を矯正する矯正骨切 り術が行われてきた。われわれは分離部への遊離血管柄 付き筋膜脂肪弁移植を考案し, 授動術が可能なことを報 告した。本法では安定した成績が得られ, 他施設からの 症例報告でも同様の結果を示しているが, 術後成績を反 映する分類の報告はない。本疾患の特徴である前腕回内 強直位, 合併する橈骨弯曲や橈骨頭脱臼などの術後影響 を及ぼすと考えられる因子を検討して, 術後成績を反映 する分類の提案を行い, さらにその骨形態や骨間膜の形 態を画像的に解析し, 病態を解明していきたい。
4. 特発性側弯症に対する under arm brace の治療 効果の検討(野原博和, 六角高祥, 三好晋爾)
特発性側弯症の側弯進行防止を目的に装具療法が施行 される。その中で Milwaukee brace の有用性については その進行を防止できるとする報告が多い。しかし装具の 一部が頚部に及ぶため美容上の理由で治療継続が困難な 場合も少なくない。一方, under arm brace は, 装具の すべてが衣服に隠れるため, 外見上目立ちにくく, 患者 の受け入れとその継続が得られやすい利点があるが, 治 療効果に関してはいまだ不明な点も多い。装具療法を行 った特発性側弯症患者の治療開始時年齢, Risser sign, Cobb 角, カーブパターン, 装具の種類, 装具内の最大 矯正率を比較し, 変形進行の危険因子について検討した い。
5. 環軸椎亜脱臼を来した歯突起骨の病態と手術法 の研究(野原博和, 我謝猛次, 黒島聡)
環軸椎亜脱臼は歯突起骨, 関節リウマチ, 歯突起骨折 が原因で第一頚椎(環椎)と第二頚椎(軸椎)間で亜脱臼を 来たす疾患である。歯突起骨は歯突起基部と環軸椎体骨 核との癒合不全の先天異常と考えられているが, 外傷後 癒合不全の後天説もありいまだに定説は無い。私たちは, 歯突起骨に椎間関節の形態異常や椎骨動脈の走行異常を 合併する多くの症例を経験してきた。さらに, 整復の可 否, 亜脱臼の動態, 椎骨動脈走行を画像的に解析し, よ り効果的かつ安全な手術方法とその治療成績を検討した。
その結果, 術後の頚椎可動域制限を最小限としたスクリ ューを併用した環軸椎固定術を施行し腸骨を移植する Magerl 法を第一選択とした。整復不能例, 椎骨動脈の走 行異常を伴う症例に対しては後頭頚椎固定を施行した。
今後は動態解析により歯突起骨や関節リウマチによる環 軸椎亜脱臼の発生機序を解明していきたい。
6. 馬尾圧迫モデルラットにおける血管新生につい て(三好晋爾, 米嵩理, 野原博和)
腰部脊柱管狭窄症は黄色靱帯の肥厚, 椎間板ヘルニア などによる脊柱管狭窄のため馬尾神経が圧迫され, 腰痛, 下肢痛, 間欠跛行を来す疾患である。馬尾神経と神経根 における血流障害が関与していると考えられている。実 験的に馬尾圧迫モデルラットが自然に機能回復すること が報告されており, その原因が血管新生の発生によるも のと仮定し, 当教室の米嵩らが血管新生因子である VEGF が圧迫モデルにおいて有意に増加していることを 報告した。しかし, 他の血管新生因子である VEGF 受容体 (Flk-1, Flt-1)などについては, 不明のままである。本 研究では馬尾圧迫モデルラットにおける血管新生のメカ ニズムを解明するためFlk-1, Flt-1 などの血管新生因子 を免疫染色や PCR 法で解明し, 腰部脊柱管狭窄症の治療 に結びつけたいと考えている。
7.悪性骨軟部腫瘍の患肢温存術・再建法(半澤浩明, 前原博樹)
化学療法の発達と手術技術の進歩に伴い骨軟部腫瘍の 治療成績が著しく向上している。切断術に代わる根治術 として Rotation-plasty (患肢温存的回転骨切り形成術) または血管柄付き腓骨移植術, パスツール処理骨を用い た Canadel 法などはその代表的な患肢温存手術となって いる。本邦初の Rotation-plasty は当教室で行われ(井上
ら), 根治性と術後機能に優れているためこれまでに 30 例近い実績を持っている。また適応のある症例では Canadel 法により患肢の温存に努めている。
8. 骨肉 腫 にお け る ミッ ド カイ ン の抗 腫 瘍効 果 ( 前 原博樹, 半澤浩明, 大湾一郎)
腫瘍増殖因子であるミッドカインは, 消化器癌, 肺癌, 肝癌, 前立腺癌など多くの腫瘍で発現増強が認められ, 近年, 予後因子としても注目されている。
すでに我々は, ミッドカインが骨肉腫でも高発現して おり, その発現強度が予後因子となりうる可能性, およ びin vitro において抗ミッドカイン作用による骨肉腫細 胞の増殖抑制効果について報告した。また, ミッドカイ ン干渉 RNA による増殖抑制には apoptosis が関与してい ることも報告した。そこで骨肉腫細胞をヌードマウス皮 下移植し, 骨肉腫を誘発させ, 腫瘍が適切な大きさにな った後, ミッドカイン干渉 RNA を腫瘍周囲へ局注するこ とにより, in vivo においても腫瘍増殖抑制効果が得ら れることを検討する。
9. 骨軟部腫瘍株と骨髄細胞の共存培養による破骨 細胞形成(前原博樹, 半澤浩明, 大湾一郎)
癌とくに乳癌の骨転移の研究はこれまで数多くなされ ており, そのメカニズムも解明されつつある。ある種の 乳癌細胞では, マウスの骨髄細胞と共存培養すると破骨 細胞形成が誘導されることが報告されており, 癌細胞の 骨組織への浸潤は, 破骨細胞が何らかの役割を果たして いることが考えられる。骨軟部腫瘍においても骨組織の 破壊に破骨細胞が関与していると考えられるが腫瘍細胞 自身に破骨細胞を形成する能力があるのか解明されてい ない。骨軟部腫瘍株とマウスの骨髄細胞を共存培養し, 破骨細胞が形成されるのか実験中である。
10. 骨粗鬆症と大腿骨近位部骨折(大湾一郎, 新垣 晴美)
大腿骨近位部骨折には大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部 骨折の 2 つが含まれ, どちらも高齢者に多い骨折である。
脳卒中に次ぐ寝たきりの原因疾患として注目されている。
一般に 79 歳までの前期高齢者には頚部骨折が多く, 80 歳以降の後期高齢者には転子部骨折が多い。沖縄県内で の 2004 年の 1 年間 に発生した大腿骨近位部骨折は 1, 267 例で, このうち頚部骨折は611 例, 転子部骨折は656 例であった。通常, 転子部骨折の発生件数は頚部骨折の 1.5 倍程度と報告されているが, 沖縄県では他の地域と 比較して頚部骨折の割合が高い。このような差違がなぜ 生じるのかを明らかにするために, 沖縄県の高齢者にお ける骨粗鬆症の罹患率と程度について検討する予定であ る。また大腿骨近位部骨折罹患後の予後調査や罹患前後 の ADL や QOL の変化について調査したい。将来的には大 腿骨近位部骨折を予防するために, どのような具対策が 必要なのかを検討したい。
11. 血友病性関節症に対する人工膝関節置換術およ び リハ ビリテ ーショ ンの 有用性 につい ての 検討( 新 城宏隆, 池間康成, 久保田哲也, 新垣薫, 仲宗根哲, 大湾一郎)
血友病性関節症は膝・足・肘関節に多く見られ, 中で も膝関節の障害は日常生活に高度な支障を来しやすい。
本疾患は, 整形外科に加え内科を含めた複数の診療科体 制で治療を行う必要があり, 現状では一般病院での治療 が困難である。そのためか障害があるにもかかわらず, 整形外科的な治療を受けていない患者が比較的多く見ら れる。当院では内科医の協力のもと, 進行した関節症に 対して手術治療が可能となっています。血友病患者の ADL 改善, 高い QOL の獲得を目的とし, 30〜40 代の患者に対 して人工膝関節置換術(以下 TKA)を行い, 積極的なリハ ビリテーションを行っている。これまで変形性膝関節症 に対する人工関節置換術の有用性はいわれているが, 血 友病性関節症に対する人工関節置換術の評価はあまり行 われておらず, 問題点や疑問点も多い。そこで当科では, 術前後の X 線学的評価, 日常生活における下肢機能評価 および患者満足度評価を行い, 人工関節置換術およびリ ハビリテーションの有用性, 問題点などにつき検討して いる。
12. 骨軟骨欠損部に対する, 骨髄由来間葉系幹細胞 を用いた再生医療(新城宏隆, 大湾一郎, 六角高祥) スポーツによる外傷, 離断性骨軟骨炎, 特発性骨壊死, 骨折などに伴い, 関節の軟骨損傷, 骨軟骨欠損が起こる と, 軟骨組織は修復能力が乏しいために, 変形性関節症 への一途をたどる。特に膝関節の障害は日常生活では高 度に支障をきたすようになる。しかし軟骨損傷に対する 確立した治療法がないのが現状である。当科では骨軟骨 欠損に対する治療法確立のために, 細胞工学的手法を用 いた組織再生の基礎研究を行っている。骨髄由来の間葉 系幹細胞を scaffold(コラーゲンとβ‐TCP(リン酸化カ ルシウム 3 燐酸)の複合材料)に播種, 3 次元培養し, 骨軟 骨欠損部に充填することにより, 関節軟骨である硝子軟 骨へ修復されるかどうか評価, 検討を行っている。
13. 関節リウマチに対する抗ミッドカイン療法( 池 間康成, 堀苑英寛, 大湾一郎)
滑膜炎が主体であり多発性関節痛と腫張を主症状とす る関節リウマチ(以下RA: Rheumatoid Arthritis)は, 未 だ原因不明の全身性疾患である。RAは抗炎症薬や抗リウ マチ薬などの薬物療法でも, 関節破壊が進行し, 手術療 法に移行する例が少なくない。近年では, infliximabや etanercept といった炎症に関与するtumor necrosis factor-α(以下:TNF-α)を阻害する生物製剤の出現によ り, RAの治療方法は劇的に改善した。しかしながら, こ の生物製剤に対する薬剤耐性や副作用, 経済的側面とい った問題があり, 全ての患者に導入できず, 本邦では約 5%の導入率と報告されている。そこで消化器癌, 肺癌, 肝癌などで発現し, 治療に関する研究も報告されている ミッドカインは, 炎症や細胞増殖に関与すると言われて おり, 滑膜炎を主体とするRAとの関与も報告されている
。したがって抗ミッドカイン療法は, 抗TNF-α薬と並ぶ 治療法になりうる可能性が高く, 本研究が考案された。
本研究ではラットの滑膜炎モデルを用いて, ミッドカイ ンの発現を抑制する干渉RNAを関節内投与することによ り, その効果を検討することである。