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 はじめに、研究課題

1-1

について考察する。インタビュー調査で得られた行 動因子を図表

25

と照らして新たに作成すると、図表

26

のように修正された。

われわれは、各オフィス空間で行われている知識創造行動を以下のとおりにま とめることとしたい。

結論3:オフィス・ゾーンで行われる知識創造行動は表出化、連結化、

内面化なので、「対話場」、「システム場」、「実践場」である。

結論4:クリエーティブ・ゾーンで行われる知識創造行動は共同化、表 出化、連結化なので、「創出場」、「対話場」、「システム場」であ る。、

結論5:コンセントレーション・ゾーンで行われる知識創造行動は表出 化、連結化なので、「対話場」、「システム場」である。

結論6:リフレッシュ・ゾーンで行われる知識創造行動は表出化、共同 化、内面化なので、「対話場」、「創出場」、「実践場」である。

結論7:イントラネットを活用して行われる知識創造行動は連結化なの で、「システム場」である。

図 表表 2 6: イイ ンン タタ ビビ ュュ ーー 調調 査査 にに よよ りり 追追 加加 ささ れれ たた 行行 動動 因因 子

 次に、研究課題

1-2

に対して考察する。われわれは社員の各オフィス空間に 対する認識についてインタビュイーの発言から推測していくこととする。イン タビュイーはこう語る。

 C 氏

「クリエーティブ・ゾーンであろうが、コンセントレーション・ゾーンであろうが空 いていれば利用している。

「部下に対して使い方について強制していない。本人が使いやすいところで使用すれ ばよい。

 D 氏

「フリーアドレスと PHS があるので 1 ヶ所に縛られずに、フロア内のどこでも仕事が できる。また、必要があれば PHS で相手をすぐにつかまえることができる。その結果、

コミュニケーションが増えることに繋がっている。

 E 氏

「自分で決めて、自分の責任のもとで、自分のペースで、自分のやり方で仕事ができ (c)インタビュー調査で検証した   対応関係

オフィス ゾーン 共同化因子

クリエーティブ 表出化因子 ソーン

連結化因子 内面化因子

イントラネット コンセントレーション

ゾーン リフレッシュ

ゾーン

オフィス ゾーン クリエーティブ 表出化因子 ソーン

連結化因子

内面化因子

イントラネット コンセントレーション

ゾーン リフレッシュ

ゾーン

顧客因子 社外(顧客)

(a)仮説での対応関係

共同化因子

追加した行動因子

るので、仕事にとらわれずに楽しくできる。

「自分で意識して場所を使い分けているというより、自然に空いているところを見つ けて、そこに移動して仕事をしている。そのため、リズム感よく仕事ができる気がし ている。

 インタビュイーは各オフィス空間に対する自らの意思により能動的に、即興 的に使い分けていると推測する。C 氏によれば「クリエーティブ・ゾーンであ ろうが、コンセントレーション・ゾーンであろうが空いていれば利用している。」 という発言であり、E 氏によれば「自分で意識して場所を使い分けているという より、自然に空いているところを見つけて、そこに移動して仕事をしている。

そのため、リズム感よく仕事ができる気がしている。」という発言から伺える。

 すなわち、社員はオフィス環境にデザインされた「場」を再定義することに より、「場」を生成していると考えられる。しかもその生成は、即興的である。

 「状況論」という認知科学の分野が最近注目を浴びている。状況論はサッチ マン(1987)が『プランと状況的行為』という著書の中で「状況的行為(situated action)」という概念を提唱したことから始まる。「状況的行為」とは、「すべて の 行 為 の コ ー ス は 、 本 質 的 な あ り 方 で 、 物 質 的 ・ 社 会 的 な 周 辺 環 境

(circumstances)に依存したものだという見方を強調する」というものである。

そして、状況論によれば、「プランは状況的行為のためのリソース(資源)であ って、どのような強い意味でも、コースを決定するというものではない」ので ある。例えば、このような例がある。

「カヌーで急流を渡ることをプランするとき、その人が滝の上かでしばらくと どまり、下り方をプランするというのは非常にありそうなことである。このプ ランは、『可能なかぎり左側の方を行こう、そして二つの大きな岩の間を抜けよ う、それから次の岩石群のあたりを後ろ向きに右に行こう』というようなもの かも知れない。多くの考慮、議論、シミュレーション、再構成が、こうしたプ ランの中に入るかもしれない。しかし、それがどのように詳細なものであれ、

プランはカヌーに滝を通り抜けさせる実際の仕事には及ばない。実際、流れに 応じたり、カヌーを操る詳細ということになると、人は見事にプランを捨て、

その人に使うことができるありとあらゆる身体化された技能をよりどころにす る。このカヌーにおけるプランの目的は、流れを通してカヌーを移動させよう ということではなく、むしろその人の成功が依存している、これらの身体化さ れた技能を用いるための最適の可能な位置を、最終的な分析で得ることができ

るようにその人を方向づけるというものである。15

 各オフィス空間をデザインするということは、「場」を生成するためのリソー ス(資源)を用意するということと考えられる。社員が状況に応じてリソース を用いて「場」を再定義していると考える。このように考えると、各オフィス 空間で行われる行動が一義的に決まると考えるより、状況に応じて多様な「場」

が生成すると考えるのが自然である。すなわち、われわれは、「オフィス環境そ のものは『場』ではない」と結論づけることができる。

 次に、研究課題 2 に関しては「4.2.3 定性的分析」でインタビュイーからの 具体的な活用事例をまとめているので、この課題については達成されたとする。

 続いて、研究課題 3 を考察する。これまでわれわれの立場は決定論に基づい ていた。しかしながら、研究課題 1‑2 で結論したように、「オフィス環境をデザ インすること」と「場が生成すること」とは別である。研究課題 1‑2 の結論は、

「オフィス環境をデザインする主体と『場』を生成する主体とは異なり、『場』

の生成は、主体である社員の状況的行為ではないか」というものである。

 このように、決定論の立場ではオフィス環境と「場」について論じていくこ とが困難になった。この研究において引き続き「場」の生成について議論を進 めるには、概念枠組みの修正する必要がある。そこで、次章で概念枠組みを修 正し、また研究課題 3 について設定しなおすこととした。

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