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第 6 章 の要約

7.1. 研究の結論 7.2. 残された課題

本章では,本研究で得られた成果を 7.1.で示し,本研究で考察ができな かった課題を7.2.で述べる.

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7.1. 7.1.

7.1. 7.1.研究 研究 研究 研究の の の結論 の 結論 結論 結論

従来,図形領域の学習指導,特に論証において生徒が演繹的な推論の必 要性を感じていないという問題点が指摘されている.これに対し,生徒が 演繹的な推論の必要性を感じとるためには帰納的な推論を行わせ,推測を 構成する活動が必要であることを主張する研究も見られる (例えば前田,

1979;宮崎,1995).しかし,前田(1979)は当時の学習環境では推測を帰 納的に構成することが困難であったことも指摘している.これに対し,現 在ではCabriGeometryやGeometric Constructor Winといった動的幾何 ソフトの使用により生徒が自ら図を自由に移動・変形させることが可能と なっている.このようなテクノロジーの発達によって,今日では推測を帰 納的に構成しやすい学習環境が構築可能であることが明らかにされている

(例えば Laborde,2000;Hadas,2000;垣花&清水,1995 など).これ

を受け,本研究の関心は推測を帰納的に構成しやすい学習環境を用意する ことで,生徒が演繹的な推論の必要性を感じる学習指導を行うためにはど うすればよいかということにある.

これについて第2章では動的幾何環境を用いた証明の学習指導に関する 先行研究を概観し「動的幾何を用いた証明そのものに関する研究」と「ど のように証明の必要性を与えるかに関する研究」,に関わる分野の研究から 課題を得ることができた.

これらの課題から,第3章では本研究の考える,生徒に真偽が明らかで ない命題を与える学習指導を提案した.これにより,その真偽を探求する 中で帰納的な推論を行うことから,より一般的な性質の推測を構成するこ とを期待し,構成した推測が普遍妥当であることを示すために演繹的な推 論を用いる必要性が生じると考えられた.このとき,教師が動的幾何環境 に認める役割として次の2点が考えられた.

・ 帰納的に事実を集め,推測を構成しやすくする役割.

・ 推測が普遍妥当であることを示すための見通しを与える役割.

次に,これらの2つの役割をどのように学習指導に活かすべきか,が課 題となる.これに対し,第4章と第5章ではこれらの役割を学習指導に活 かすために,動的幾何環境下における生徒の活動とそれに対する教師の支 援を知るため,教授実験を行った.

第4章では帰納的に事実を集め,推測を構成しやすくする役割を学習指 導に活かすために教師は何をすべきかを課題として,高校生を対象とした 教授実験を計画・実施し,その結果をから次の枠組みが得られた.

第5章では,推測が普遍妥当であることを示すための見通しを与える役 割を学習指導に活かすために教師は何をすべきかを課題とし,大学生を対 象とした予備実験をもとに,中学生を対象とした教授実験を行い,次の枠 組みを得た.

動的幾何環境下における論証を目指した活動の相

支援:帰納的に推測を構成しやすい事象を提示する

支援:構成した推測が何を意味するのかを考えさせる

帰納的に事実を集める方法を特定していない活動の相 解決に直接的でない推測を構成している相

目的を定めず推測を構成している相

動的幾何環境下における論証を目指した活動の相

問題場面を作図する相

問題場面の持つ条件を考察する相

解決に決定的な条件を考察する相 支援:問題場面の持つ条件を考察させる.

支援:課題を捉え直させる.

支援:演繹的に説明することを促す.

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納的な推論と演繹的な推論が相補的に生じながらよりよい推測を作り上げ るという,ラカトシュの言う証明を構成するための手段として位置付ける ことが考えられた.また,どちらの推論も構成することが困難な生徒に対 しての学習指導を考える際には,その手立てとして前田(1979)の主張をも とに帰納的な推論から演繹的な推論へと指導を行うことが考えられた.

7.2. 7.2. 7.2.

7.2. 今後 今後の 今後 今後 の の課題 の 課題 課題 課題

本研究に残された課題として,以下の点が挙げられる.

1 つは,教授実験で用いた課題は既存の定理を対象に合わせて改変して いるが,本研究で提案した学習指導の目的・枠組みに基づいたとき,どの ような問題を設定すべきか,その方法が明らかにできていない.

さらに,教授実験における結果の考察方法のあいまいさが指摘できる.

この考察方法の厳密さを高めることが,枠組みをより精緻なものに改良で きると考えられる.

また,枠組みを用いた学習指導の検証が課題として挙げられる.本研究 では枠組みの構築に重点を置き教授実験を行ってきたが,その妥当性の検 証が行われていない.また,教授実験は個人を相手に行ったものであるの で,30 人~40 人の通常の学習指導で想定される人数に対してこの支援の 枠組み,そして学習指導は有効であるかどうかが検証されなくてはならな い.

これらの課題が,今後の課題として残されている.

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7.3. 7.3. 7.3.

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