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第 4 章  ことばの遅れをもつ幼児を対象とする指導の評価 に関する実践的研究

2  研究方法

第 4 章  ことばの遅れをもつ幼児を対象とする指導の評価 に関する実践的研究 

   

1  研究目的 

 

 

本研究では,ビデオ映像の分析結果を基礎資料とし,指導実践を数値で評価する試行 について検討を加える. 

  本研究で取り上げる指導実践は,ことばの発達の遅れを主訴とする幼児を対象とした 行動空間療法(後藤ら,1984)によるものである.この指導実践の関係行動について,後 藤ら(1983)の開発した行動空間分析方法を用いて明らかにする.行動空間分析法は,行 動空間療法による指導実践を評価するために開発された分析方法である.ここでは,特 に,①対人関係,②対物関係,③空間の共有,の 3 つの視点から著者(金澤,1994)が開 発した個人および集団の「かかわり行動係数」の推移を中心にして,幼児の関係行動の 発達的変容の様相を明らかにしていく. 

   

2  研究方法 

 

 

2.1  分析対象 

 

  分析の対象は,指導対象児 4 名と指導者 3 名(内訳は,チーフ,サブ,アシスタント 各 1 名である)の計 7 名である.指導対象児はことばの発達の遅れを主訴とした幼児 4 名(以下,太郎,次郎,三郎,四郎とする)で,初回指導時の年齢は 2 歳 8 ヵ月から 3 歳 3 ヵ月であり,平均 3 歳 0 ヵ月である.図 4−1 は,初回指導時の対象児の関係行動を 3 名の評定者により評定した結果をまとめたものである.この行動評定は,関係行動の特 徴を把握するために開発されたものであり,評定値は 7 に近づくほどその評定項目の特 性が強くなることを意味している(後藤ら,1992).本研究で用いた子どもの働きかけ行 動評定は,「他の子どもへの働きかけ」「指導者への働きかけ」の 2 つのクラスターから 構成されており,それぞれ 5 つの下位項目からなっている.全般的に 4 名の中では,三 郎が関係行動のそれぞれの項目において 7 方向にあり,強い関係行動の傾向を示してい る.それと対照的な傾向を示しているのが,次郎である.太郎と四郎は,これらの中間 にいる. 

                             

図 4−1  初回指導時における働きかけ行動評定プロフィール   

 

  指導は,1990 年 10 月から同年 12 月に計 17 回実施している.指導法には,第 2 章で 述べた後藤ら(1984)の行動空間療法を用いている.図 4−2 は,指導を行うプレィルー ムで,6.65m×7.50m の広さである.なお,この指導実践は,著者が後藤らの研究プロ ジェクトに初めて参加した時期に行われている. 

                         

  図 4−2  行動空間 

1 3 5 1 協調7

2 接触・交渉 3 注視

4 情報の提供 5 相互交渉的遊び 1 協調

2 接触・交渉 3 注視 4 情報の提供 5 相互交渉的遊び

太郎 次郎 三郎 四郎

他の子どもへの       働きかけ 指導者への

    働きかけ

  2.2  分析方法 

 

(1)  分析資料の選択 

  分析資料となるビデオ映像は,プレィルームに設置された可動式のカメラを観察室よ り操作し,収録する.17 回の指導を通した発達的変容を捉えるために,本研究では指 導初回(1990 年 10 月 18 日),最終回(1990 年 12 月 20 日)の 2 回分を分析資料とする. 

 

(2)  分析方法 

(a)  行動空間分析法 

  分析資料であるビデオ映像をビデオコーダーで再生しながら,行動空間分析法を用い て,分析対象者 7 名の関係行動を分析単位時間 5 秒毎に図 4−3 の関係カテゴリー型に 基づいて分析する.この場合,関係行動が成立した相手を特定できるように分析し,関 係カテゴリー型の決定にあたっては,対人関係を含む場合,その相手との間で 5 秒間に   

                                         

  図 4−3  関係カテゴリー型 

結ばれたもっとも構成度の高い関係カテゴリー型を選択する.関係カテゴリー型は,Ⅵ 型→Ⅰ型の順に構成度が高くなり,Ⅱa 型とⅡb 型では本人が対物関係を保持している

Ⅱa 型の方が高い(小笠原・後藤,1989). 

  ここでは,行動空間を図 4−2 に示す Communicative Space(以下,Co 空間とする)と Round Space(以下,Ro 空間とする)の 2 つに分割する.なお,Co 空間は高さ 15 ㎝の正 方形の舞台(270 ㎝×270 ㎝)と,その上にのせられた直径 180 ㎝の円形の舞台から構成 されている. 

  分析は,結果を比較分析する目的から同一の分析者が担当する.ただし,このことに 伴う信頼性の問題は今後の課題として残されている.1 回の指導の分析対象時間は 30 分であり,分析単位時間が 5 秒なので分析対象コマ数は 360 コマとなっている. 

 

(b)  個人および集団かかわり行動係数 

  本研究では,関係行動の発達的変容を数値に表すことを目的にして,個人および集団 のかかわり行動係数を算出する(金澤,1991).算定式は,以下の通りである. 

                                   

  これは,行動空間分析法の分析結果を基礎資料として,3 つの要因,つまり,①他者 とのかかわり,②遊具とのかかわり,③チーフとの空間共有,がどの程度,関係行動の 系に組み込まれているかを表す係数として考えたものである.この算定式は,分析対象 コマ数内において,それぞれ要因別に考えられ得る最大可能数値が実際の分析で,どの