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研究成果と今後の課題

5.1  研究成果

まず、「理念と組織活動」の考察により、組織活動における理念の位置づけと機能 について、仮説として可視化することにより、理念が組織活動、特に組織変革と組織 文化に大きな影響を与えることが認識され、これらの関係を導いた。

組織活動(組織変革・組織文化)と理念の関係

①「組織変革」に対し「理念」「リーダーシップ」が大きな影響を及ぼす

②「理念」「リーダーシップ」により「組織文化」は大きな影響を受ける

③「組織変革」と「組織文化」は相対する性質を持つ

また、電機機器企業における組織活動と研究開発が一体化しない事例を考察し、各 種の組織形態における理念の柔軟な位置づけと影響について認識した。つまり、組織 変革、組織統合などにおいて、理念が重要な機能をはたすということである。しかし、

理念は存在することに意義があるのではなく、組織内に浸透することが重要であると いう課題も同時にあらわれたため、理念浸透を実現するための「浸透施策」について パターン分類を行い、「電機機器業界における理念と浸透施策」の現状を確認した。

実際の組織活動における理念浸透施策のパターンと、組織活動成果としての企業業績 との比較により、理念浸透施策のパターンと企業活動成果の関係を明らかにした。具 体的には、「中長期的な企業業績」および、成長性、短期的な企業業績判断による「優 良企業」と、理念浸透施策のパターンとについての関係である。

理念浸透施策パターンと企業業績の関係

① 具体的(独自性)な「理念(の提示)」「浸透施策」と「中長期業績」には、関 係は見られない

  ② 具体的(独自性)な「理念(の提示)」「浸透施策」と「短期的業績」には、関 係が見られる

  ③ 具体的(独自性)な「理念(の提示)」をしている企業のうち、具体的(独自性)

な「浸透施策」をしていない企業は、している企業と比べて「中長期業績」に優 位性が見られる

  ④ 具体的(独自性)な「理念(の提示)」をしている企業のうち、具体的(独自性)

な「浸透施策」をしていない企業は「中長期業績」における売上高、営業利益、

税引前最終利益の向上率とほぼ比例した、研究開発費の増加を行っている   ⑤ ①②③④については、本研究により明らかになった事実であり、「浸透施策」を

していない事柄のみが「中長期業績」に貢献しているとは断定できない

    ⑥ ⑤については、今回の調査が「理念(の提示)」「浸透施策」による企業分類、

パターンの適用による「中長期業績」「短期的業績」との関係調査であることか ら、「理念(の提示)」「浸透施策」が「中長期業績」「短期的業績」に何らかの影 響を与えることが考えられる

さらに、理念および、浸透施策単独では機能をはたさないことから、「組織におけ る理念と浸透施策の接続性における課題」について、組織内理念浸透の3つのプロセ スを定義した。この中で、理念浸透促進の段階(第2段階)である「理念および浸透 に関する組織展開・施策」について、理念と浸透施策との接続性の課題に対する有効 な理論である知識創造プロセスの転用を行い、理念の浸透段階における理念と浸透施 策の関わりが変化と対応について明らかにした。

  本研究成果により、これまで組織において、所与のものとなっていた理念について、

組織内に理念を浸透させることの重要性および、理念を浸透させることを目的とした、

理念と浸透施策の関係性を示すことができた。これらの成果は、実際の理念浸透活動 における自組織の状況確認、および、浸透施策構築、浸透促進を行うに際しての指標 になると考えられ、理念の浸透に苦慮している経営者および、関係者の一助となれば 幸いである。

5.2  今後の課題

  本研究により、研究成果に示した重要な成果を示すことができたのであるが、研究 をつうじて生じた以下の2点について、今後一層の調査研究を要する。

① 実際の組織活動における理念が浸透している状態の確認と至るプロセスの考察   ② 理念浸透施策パターン分類の多角的な考察

  理念が組織活動に大きな影響を与えることを認識でき、具体的な浸透施策について も、パターン化により組織活動成果としての企業業績との関係を導き出したのである が、企業業績以外の観点、例えば、マネジメント活動、組織の構成員たる働く人々の 活動については、認識ができていない。また、理念浸透のパターン分類についても、

特定業種および、特徴的なパターンの考察に留まったため、多角的な考察が不十分で ある。

  これらの課題について、実際の組織活動の観察、人的資源の観点からの考察、知識 創造と理念浸透との関係性の観点、および、理念浸透施策のパターン分類データの多 角的な再分析・考察を行うことを、今後の研究課題としたい。

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