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研究協力

ドキュメント内 岡山50周年記念誌.indd (ページ 90-98)

観測所インフラの大学への提供

岡山天体物理観測所は、日本国内においては非常 に良好な光赤外天文観測環境を有するサイトに位置 している。また、長年にわたる共同利用を通じて、

基盤設備(インフラストラクチャー)と技術基盤が 蓄積されている。これらを生かして、国内における 光赤外観測天文学の基盤を充実させようという試み は、この 10 年の間にもいくつか行われた。

その先駆けとなったのが、京都大学宇宙物理学教 室の 3m 光赤外望遠鏡計画を支援するための大学間 の連携組織、岡山新望遠鏡計画大学連絡会の発足で あった(2000 年)。この連絡会には、京都大学をは じめ、広島大学、岡山大学、神戸大学、大阪教育大 学などが名を連ね、岡山観測所も参加した。3m 望 遠鏡計画は、その後、3.5m 望遠鏡計画、3.8m 望 遠鏡計画と発展していったが、当初から岡山観測所 サイトをその建設候補地として計画が進められてい た。大学連絡会の基本構想は、国内で有数の観測適 地である岡山観測所に、京都大学の 3 〜 4m 望遠鏡 を中心として複数の大学が観測ファシリティを共通 して持つことで大学の天文学教育研究基盤整備を行 うというものであった。そして、その中には広島大 学が推進しようとしていた、赤外シミュレータ移管・

移設計画も含まれていた。これを受けて、岡山観測 所構内の数か所を京大望遠鏡と広大望遠鏡の候補地 と定め、埋蔵文化財調査の試掘などが行われた。

しかし、この大学連絡会構想は、様々な理由から 思惑通りには進まず、頓挫した。特に京大の計画は 予算規模の大きさや学内調整の難しさなどによって、

すんなりと通る状況ではないことが判明した。そこ で、2001 年末に、手をつけやすい広大の赤外シミュ レータ移設計画を独立して先に推進することになっ た。2002 年に入り、この計画は関係者の努力によ り急速に発展し、年末には国立天文台運営協議会で 広大への赤外シミュレータ移管が承認されるに至っ た。この間、岡山観測所は広島大学や国立天文台執 行部との協議を重ね、敷地内のシーイング調査や自

治体との折衝などを行った。

こうした動きと並行して、岡山観測所のサイト条 件の良さに着目した東京工業大学・高エネルギー宇 宙観測のグループが、ガンマ線バーストの可視フォ ローアップのための 50cm 望遠鏡を設置する計画を 進めており、岡山観測所もその実現に向けて積極的 に協力することとなった。望遠鏡・ドームの仕様決 定、概念設計に加えて、ドーム建設場所の選定、イ ンフラの整備、自治体との交渉など、岡山観測所 は 50cm 望遠鏡建設のためのほとんどの作業を受 け持った。さらには、望遠鏡・ドーム制御系の開発 も行った。こうした努力が実り、2003 年に東工大 50cm 望遠鏡 MITSuME(みつめ)が岡山観測所構 内に完成し、後にこの望遠鏡は国立天文台に移管さ れた。その後、2009 年には惑星トランジット観測 のための専用小型望遠鏡が、東工大の系外惑星探査 グループによって岡山観測所構内に建設された。

一方、広大の赤外シミュレータ移設計画は 2003 年に大幅な軌道修正が行われ、移設先は岡山観測 所敷地内ではなく、東広島市福成寺付近と決まった。

この軌道修正のため、当初の大学連絡会構想はほぼ 瓦解することとなる。しかし、岡山観測所はその後 も広大計画を広義の共同利用支援と位置づけ、赤外 シミュレータの移設に向けてさまざまな面で協力を していった。2004 年の広島大学宇宙科学センター 設置を経て、2006 年に赤外シミュレータの広島大 学への移設が行われ、東広島天文台が実現した。移 設された赤外シミュレータはかなた望遠鏡と名づけ られた。岡山観測所は、この移設計画に主に技術的 な側面から全面的に協力した。こうした活動も、観 測所インフラの大学への提供と位置づけることがで きよう。

一度は頓挫するかに見えた京大望遠鏡計画は、

2006 年にインターネット総合研究所の藤原弘所長

の出資によるナノオプトニクス研究所(現在はナノ

オプトエナジー)設立によって大きく前進すること

になる。望遠鏡計画は、京大を中心としてナノオプ トニクス、名古屋大学、そして岡山観測所の四者合 同で進めることとなった。望遠鏡口径 3.8m、分割 鏡主鏡、軽量化架台、研削による主鏡製作などコン セプトが具体化し具体的に計画が進み始めた。岡山 観測所は主にインフラ整備・ドーム建設支援の立場 から、望遠鏡設置場所の選定および整地、さらには 地元自治体の協力を得て埋蔵文化財調査などを行っ た。3.8m 望遠鏡は、2012 年度完成を目指して開 発が進められている。

こうした望遠鏡建設計画の他にも、岡山観測所の インフラを利用した取り組みはいくつも行われてき た。その一つが、岡山観測所が所有しているユニー クな装置の一つとしての大型蒸着装置の利用であ る。宇宙科学研究所の 1.3m 望遠鏡主鏡と広島大学 かなた望遠鏡の 1.5m 主鏡の岡山観測所における再 蒸着作業は、赤外シミュレータ移設と軌を一にして 始まり、宇宙研の鏡は隔年に一度、広大の鏡は毎年、

岡山観測所で再蒸着を行っている。この他にも京大 の 1m 鏡、ウズベキスタン・マイダナック天文台の 60cm 鏡、40cm 鏡などを再蒸着作業も請け負った。

さらに、東大宇宙線研究所のアシュラ計画のための 試験蒸着なども行った。

岡山大学、広島大学を中心として 2002 年に始め られた大学生の天体観測実習も、観測所インフラの 教育への提供として重要である。毎年、8 名程度の 学部生に対して 2 泊 3 日で観測実習を行った。この 事業は 2008 年まで続けられた。

以上に述べたようなさまざまな事業は、すべて 岡山観測所の良い自然環境および整備されたイン フラに着目して行われてきたものである。わが国に は、まだ、単独で巨大な天文観測ファシリティを建 設・運用できるような大学は少ない。天文学専門の 学科のある大学がそもそも希少である。天文学ス タッフのいる大学でも、多くが他の関連学科の一部 として天文教育や研究が行われており、大学当たり

の天文教育研究スタッフの数はきわめて少ない。こ のような状況下でも、力のある大学は海外に天文施 設を建設し、研究活動を展開している。しかし、そ のような大きな大学でさえ、インフラ整備や維持に おいては地元の研究機関にかなりの部分を依存して いる。海外の観測適地は、岡山観測所よりはるかに 優れた観測条件を備えているのは明らかである。し かし、わが国の現状を冷静に見た場合、大学主導の 中小規模の施設計画にとっては、インフラが整備さ れ、国内においては非常に良い観測環境を持つ岡山 観測所の重要性はますます増していると言ってよい であろう。

最後に、現在進められている大学間連携事業につ いて述べておきたい。

京大望遠鏡計画の大幅な前進を受けて、2000 年 代に入って多数作られ始めた大学所有の 1m クラス の小口径望遠鏡の密接な連携が検討されるように なった。一度は瓦解した大学連絡会が、形と内容を 変えて復活したと言ってよかろう。岡山観測所を中 心とした大学連絡会構想と異なり、この新たな「大 学間連携」構想は、各大学の持つ望遠鏡を連携させ て「多地点・多モードによる突発天体研究」をその 主な研究目的とした分散型の連携システムを目指し ている。参加機関は、2010 年時点で、国立天文台、

京都大学、東京大学、名古屋大学、広島大学、鹿児 島大学、東京工業大学である。東京大学がチリに、

名古屋大学が南アフリカにそれぞれ望遠鏡を持って いることにより、突発天体観測において地球規模の 連携が可能となっている。本「大学間連携」構想で は、さまざまなキャンペーン観測の共同実施や共同 研究などの推進と同時に、研究者および学生の相互 の行き来や共同での教育事業の推進なども視野に 入れている。国立天文台は、この連携の窓口であり、

まとめ役を担う。この構想の中にあって、岡山観測

所は 188cm 反射望遠鏡等を連携事業の中に組み込

む一方、人材やインフラを提供することが期待され

ている。

国際研究・開発協力

2000 年から 2010 年の 10 年間に、岡山天体物理観測所を研究拠点 とした国際協力は大いに発展した。

韓国(大韓民国)との協力は、1990 年代に岡山天 体物理観測所に、韓国天文台(Korea  Astronomy  Observatory、現在は Korea Astronomy and Space  Science Institute)の普賢山光学天文台(Bohyunsan  Optical Astronomy Observatory)から、真空蒸着 設備の技術情報を求めて関係者一行が二回に亘り来 所したことから始まった。2000 年代中盤、双方が 高分散分光器を定常運用するに至り、普賢山と岡山 の交流は太陽系外惑星の共同探索という形へと発 展している。この共同研究では、2005 年 1 月から、

普賢山と岡山で、ドップラー法による太陽系外惑星 の探査を協力して進めている。2005 年度からの 3 年間の科学研究費補助金「視線速度観測による太陽 系外惑星の探索」(研究代表者:安藤裕康)と 2005 年 7 月から二年間の日本学術振興会二国間協力事業

「G 型巨星における太陽系外惑星の共同探査」(日本 側代表:泉浦秀行)による活動資金の補助を受ける ことができた。この共同研究は、普賢山天文台 1.8m 反射望遠鏡に設置されたファイバーフィード瞳移行 型高分散エシェル分光器(Bohyunsan  Observatory  Echelle Spectrograph, BOES)と岡山天体物理観測 所の 188cm 反射望遠鏡に設置された高分散エシェ ル分光器(HIDES)を使っている。星のまわりをケ プラー運動する惑星により引き起こされる星のふら つきが、地球から見たときにごく僅かな星の視線速 度の周期的な変動として現れるのを検出する。精密 測定の実現には、どちらもヨードセルを使っている。

普賢山のヨードセルはドイツの研究者により持ち込 まれ、岡山では国内の研究者主導で共同開発された。

現在、普賢山と岡山で合わせて G 型巨星約 180 星 の視線速度モニター観測を続けている。2009 年に は最初の成果、G 型巨星 HD119445 における褐色 矮星質量の伴天体検出を公表した。この星は、恒星 未満質量の伴天体が見つかった星の中では二番目に 質量の大きい星で、かつ、恒星未満質量の伴天体と しては最も質量の大きい伴天体である。このほかに も複数の惑星質量伴天体の候補が見つかり、公表の 準備を進めている。

図 4-1 BOAO1.8m 望遠鏡ドーム(左)と 1.8m 望遠鏡(右)

図 4-2 BOES のモザイクエシェル(左)とクロスディスパーザープリ ズム(右)

図 4-3 褐色矮星候補天体を示す視線速度変動の図。横軸はユリウス日、

縦軸は視線速度(m/s)。黒丸が普賢山、白丸が岡山の観測点(Omiya  et  al. 2009, PASJ, 61, 825)

図 4-4 主星質量と伴星質量の関係の図。横軸は主星の質量(太陽質量)、

縦軸は伴星の質量(木星質量)。星印が日韓協力で見つかった褐色矮星候 補天体(Omiya et al. 2009, PASJ, 61, 825)

 韓国との協力(普賢山 1.8m)

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