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研究ノート

ドキュメント内 ときわ コミュ16.indb (ページ 112-136)

* 常磐大学コミュニティ振興学部 教授

A Study on the Differentiation of General Community Care Center

地域包括支援センター整備の地域間格差に関する研究(その1)

松 村 直 道 *

1 課題の設定

『厚生労働白書(平成 22 年版)』は、第2部第2章で「参加型社会保障(ポジティブ・

ウェルフェア)の確立に向けて」と題して、社会保障・労働政策全般の再定義を提案して いる。この提案の背景には、これまでの社会保障は「消費型・保護型」であり、「各制度 ばらばらに改革を行ってきた結果、制度のすきまが生じるなど、セーフティネットとして の機能が弱っている」(注1)という認識がある。

1990 年代以降、こうした事実が生じていることは否めないが、その主原因は社会保障 制度の欠陥というより、労働政策全般で強力に進められてきた規制緩和政策の結果、従来 の社会保障制度では対応できなくなったというのが実情であることを注視せねばならない。

それでは「参加型社会保障」とは何か。「白書」は次のように定義する。①「機会の平等」

の保護のみならず、国民が自らの可能性を引き出し、発揮することを支援する。②働き方 や、介護等の支援が必要になった場合の暮らし方について、本人の自己決定(自律)を 支援する。③社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)の考えに立って、労働市場、

地域社会、家庭への参加を保障する。

こうした参加型福祉の考え方は、1980 年代にも散見され、特に目新しいものではない。

しかし 80 年代のそれはボランティア活動振興や地域福祉活動支援に典型視されるように、

住民個々人やインフォーマルな組織を対象にした参加論であった。今回のそれは、2010 年4月に公表された「厚生労働省の目標」において「少子高齢社会の日本モデル」を地域 社会レベルで具体化したものである。この提案の評価はさて置き、筆者がそれに注目した のは、国民のニーズに答えるための制度横断的な4つのシナリオの一つとして、「地域で 暮らし続ける」があり、具体的には 2020 年に「中学校区の単位で充実した福祉サービス

松 村 直 道

が受けられる社会のイメージ」が、本論文の主題である「地域包括支援センター」の構想 とほぼ重なるためである。

以上を要約すると、参加型福祉の考え方が 80 〜 90 年代は非制度的なボランティア活 動や地域福祉活動としてマンパワーを主体に構想されてきたが、21 世紀に入り制度的な レベルで施設機能や福祉サービスのネットワークとして構想されつつある、ということで ある。参加型社会保障の地域社会版は、分権型社会福祉の骨格を形成するという点で、無 視できない政策提案である。

しかし、こうした政策提案を受容する受け皿が、地域社会や基礎自治体の中に形成され ているのかといえば、大きな疑問がある。今後 10 年間で、少子高齢化が生み出す諸問題 に対応するための「地域包括ケア推進」の整備状況が、地域自治体によりあまりにも格差 が大きい。その是正を考える前に、なぜこうした地域間格差が生じているのか、それを具 体的に検討するのが本論の課題である。

検討の柱は、地域包括ケア推進の中核組織である「地域包括支援センター」に置きたい。

以下では、最初に、在宅介護支援センターから地域包括支援センターに至る地域包括ケア 政策の歴史的な経緯を整理する。次に、地域間格差を確認した上で、地域包括ケアの2つ のシステム類型(一極集中型と地域分散型)がなぜ生じるのか、社会的背景になる諸要因 を検討しながら明らかにしたい。

2 地域包括ケア政策の歴史的展開過程

2−1 ゴールドプランと在宅介護支援センター

地域社会を単位とした高齢者在宅福祉の組織的計画的な対応が始まるのは、1989 年の 高齢者保健福祉推進十か年戦略(通称、ゴールドプラン)からである。ここでは在宅福祉 3本柱(ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイ)の整備が中心になるが、

翌 1990 年に地域包括ケアの萌芽ともいうべき在宅介護支援センターが創設された。

在宅介護支援センターは、老人福祉法第5条の3に定められた老人福祉施設の一つであ り、原則として市町村が設置し、在宅の高齢者や家族に対して、在宅介護についての相談 や助言、各種の保健・福祉サービスの紹介、行政窓口への保健福祉サービスの申請代行等 が主要な業務である(注2)。

94 年の新ゴールドプランでは、基幹型支援センターを中核にして、中学校区単位に 地域型支援センターを設置することが目標とされた。基幹型支援センターは行政責任で

整備が進んだが、地域型支援センターは公益性の高い社会福祉法人や医療法人に委託され たため、地域により整備は遅れ、内容的にも格差が生じることになった。当時、在宅介護 や介護予防に関する住民の意識や関心は一般に低く、そうした状況が地域型支援センター 整備を遅らせたことは否めない。

2−2 介護保険制度の創設による居宅介護支援事業所との関係

2000 年に介護保険制度が発足すると、在宅の要介護者の介護ニーズを確認し、様々 な居宅サービスの利用計画を作成し管理するために、介護支援専門員(ケアマネジャー)

制度が創設された。介護支援専門員は、介護サービス提供の扇の要として、民間の居宅 介護支援事業所の専門職員として働くことになった。しかし、その利用対象者が「要介 護認定を受け、要支援以上と判定された者」、業務内容が「要介護認定調査、ケアプラン 作成、介護保険サービスの調整」であったために、在宅介護支援センターの利用対象者・

業務内容と重複することになった。

在宅介護支援センターの職員であるソーシャルワーカー、保健師、看護師、介護福祉士 等は、介護支援専門員の資格を取って、在宅介護支援センターの中で居宅介護支援事業 を展開することは可能である。しかし、その事によって本来の在宅介護支援センターの 業務である「非要介護認定者も対象にした、介護予防事業や高齢者の実態把握」等に影響 が出ることは否定できない。

『いばらき高齢者プラン 21』は、「地域ケア体制の構築」の冒頭で、「今後の高齢化に 備え、高齢者が自立した生活を送れるような地域社会づくりを進める必要があります。

そのためには、在宅介護支援センターを中心に関係機関が連携し、効率的かつ効果的に サービスを提供できるネットワークを築くとともに、ボランティア活動などを通して、

住民相互が支え合い、助け合うあたたかな地域社会を築いていく必要があります」(注3)

と述べている。しかし、国からの補助金削減やケアマネジャーへの関心増加により、在宅 介護支援センターが地域社会での介護予防事業等を制約されることになったのは確かで ある(注4)。

2−3 介護保険制度改革による地域包括支援センター創設との関係

介護保険制度が発足して3年後の 03 年6月、厚生労働省の高齢者介護研究会が「2015 年の高齢者介護」を取りまとめ、その中で「在宅介護支援センターが地域包括ケアのコー

松 村 直 道

ディネートを担うためには、その役割を再検討し、機能を強化していく必要がある」旨の コメントをしている。

在宅介護支援センターの全国組織である全国在宅介護支援センター協議会は、04 年 4月に報告書「これからの在宅介護支援センターの在り方」を刊行し、組織の危機打開の ために、以下のような「機能強化のための3項目の提案」と「実効性を高めるための3項 目の努力目標」について述べている(注5)。

機能強化のための3項目の提案

①地域の高齢者の実態把握。

一人暮らしや高齢者だけの暮らしに不安を持つ世帯、介護サービス利用や消費生活面で 保護が必要な者など、支援が必要な高齢者を積極的に発見し、サービスに結び付ける。

②総合相談支援。

介護を必要とする高齢者が、同時に家族関係や生活面での課題を抱えており、介護に 限らず幅広い相談が必要。痴呆性高齢者が増える中で、行政に代わり権利擁護をする 拠点になる必要がある。障害者も利用しやすい最初の相談窓口になる事が考えられる。

③介護予防マネジメント。

「教室での座学が中心で、個別のプログラムを作成してトレーニングを実施している 所は少ない。」という指摘に答えて、地域における介護予防の中核を担わねばならない。

実効性を高めるための3項目の努力目標

①住民に身近な場所にする。

住民の日常生活圏域を考慮して、気軽に立ち寄れる場所にあることが必要。

②地域のネットワークとの連携。

支援を必要とする住民を早期に発見し、サービスに結び付けるために、フォーマル・イ ンフォーマルな様々な専門職やボランティアとの連携が不可欠。

③経験を積んだ専門職員の配置。

総合相談支援や個々の高齢者の生活機能を評価して介護予防プランを作成できる専門知 識と技術が必要。

これらの提案と努力目標の提示の背景には、国や自治体から次々と新しい支援機能が 期待され提示される中で、それに対応できる所とそうでない所の質的多様化が進み、上部 団体としての苛立ちと必死の改善努力が伺われる。

ドキュメント内 ときわ コミュ16.indb (ページ 112-136)

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