高精細 MRI 機能イメージングと神経鎖イメージングを用いた高次脳機能の解明 と神経精神疾患の病態解析
【研究チーム】
所属 職名 氏名 備考
チームリーダー 超微形態科学 教授 遠山 稿二郎 学内メンバー 内科学呼吸器内科 教授 山内 広平
内科学神経内科 准教授 高橋 智 ~H24 内科学神経内科 講師 大塚 千久美 H24~
内科学神経内科 助教 高橋 純子 H24~
脳神経外科 助教 藤原 俊朗 ~H22 産婦人科学 講師 西郡 秀和 ~H22 産婦人科学 講師 三浦 史晴 H23~
小児科学 講師 亀井 淳 H23~
小児科学 助教 赤坂 真奈美 H23~
神経精神科学 講師 大塚 耕太郎
神経精神科学 助教 福本 健太郎 H24~
生理学病態生理 助教 深見 秀之 動物実験医学 准教授 花木 賢一 超高磁場MRI 教授 佐々木 真理
超高磁場MRI 助教 山下 典生 H23~
超高磁場MRI ポスドク 伊藤 賢司 H24~
薬剤治療学 教授 西郡 秀夫 ~H24 薬剤治療学 教授 三部 篤 H25 学外メンバー 産業総合研究所 研究グループ長 杉田 陽一
オブザーバ 脳神経外科学 大学院 村上 寿孝 H23~H24 脳神経外科学 大学院 南波 孝昌 H24~H25 超高磁場MRI 研究員 横沢 俊 H24
超高磁場MRI 技術員 齊藤 紘一 H24~
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【研究成果の要約】
1)
コモンマーモセットの超高磁場MRI
活用法の確立独自の補助人工哺育法を確立し、飼育・繁殖技術を整備するとともに、等温遺伝子増幅
法
(LAMP
法)
に基づき、糞便より4
微生物(
緑膿菌、黄色ブドウ球菌、マウス肝炎ウイルス、マウスノロウイルス
)
を同時に検出する技術を新たに開発し、実験動物の微生物モニタリン グ体制を確立した*31
。さらに、神経疾患自然発症犬や健常コモンマーモセットの鎮静下MRI
検査法の安定したプロトコルを確立し、高磁場MRI
高精細画像を取得することに成 功した*32
。上記の画像と電子顕微鏡画像を組み合わせたコモンマーモセット脳の統合 画像データベースを作成中であり、本プロジェクト終了時までにホームページに公開する 準備を進めている。2)
越シナプスウイルストレーサを用いた神経鎖イメージングラットを対象にブタコロナウイルス
(HEV)
を用いて大脳皮質・深部灰白質ユニットの機能構 造解析に必要なウイルス量の特定、伝搬パターンについて基礎的データを得ると共に、電子顕微鏡解析によって越シナプスウイルストレーサの概念実証に成功した
*33
。また、イメージング手法として、反射電子像
(BSE)
による広範囲電顕手法(multi-scale electron
microscopy, MS-EM)
、極小径金コロイド粒子併用急速凍結・凍結超薄切・免疫電顕法、2
軸電子線トモグラフィー法を新たに確立した
*34
。また、神経向性ウイルスであるポリオウイ ルスの受容体(PVR)
のtyramide signal amplification
(TSA
)法による超高感度蛍光標識法 を確立し、標準的蛍光顕微鏡で観察することに成功した。しかしながら、コモンマーモセッ トへのウイルストレーサ感染が成立しないことが確認され、霊長類への応用は困難である ことが判明した。3)
神経細胞・グリア細胞相互作用の解明Purkinje
細胞特異的関連酵素の遺伝子をdelete
するとグリア細胞の動態に病的変化が起こること
*35
、軸索再生能とミクログリアの集積に関連が認められること*36
、conditional
遺 伝子導入技術でPDFR
標識された生後誕生オリゴデンドロサイトが有髄神経の新たな髄 鞘化に関与すること*37
を初めて明らかにした。さらに、MS-EM
法にて、Raniver
絞輪部 軸索は25
%程度しかグリア細胞で被われていないこと、グリア細胞に軸索膜が取り込まれ 絞輪部軸索膜のリモデリングが生じていることを初めて見出した*38
。4)
脳血行再建術後の認知機能変化メカニズムの解明頚動脈内膜剥離術
(CEA)
術前後の神経心理学検査の判定基準を新たに確立した後*39
、CEA
術前患者を対象に神経心理学検査、脳血流SPECT, iomazenil SPECT, MRS,
拡散 テンソル画像(DTI)
を施行し、術後認知機能改善例では、術前は脳循環低下に比しiomazenil
結合能低下が軽度であること、術後にiomazenil
結合能・MRS
脳代謝物・DTI
白質拡散異方性が改善することを初めて明らかにした*40
。一方、術後認知機能悪化例 では、術後にDTI
白質拡散異方性が低下しており、白質神経障害が主因となっているこ108
とが明らかとなった
*41
。また、本技術を心臓大血管手術患者に応用し、循環停止術後の 認知機能障害が同様のメカニズムで起こりうることを明らかにしつつある。5)
神経線維の機能変化のMRI
解析独自に開発した高解像度
MRI
容積拡散テンソル画像を用いて、拡散マッピングの精度を 検証するとともに、高血圧性脳出血の予後予測、三叉神経痛患者における三叉神経の 機能異常の検出、軽度認知障害(MCI)
における微細神経線維(海馬傍回帯状束)の早 期変化の検出に初めて成功した*42
。また、制限拡散の定量化を目的とした拡散尖度画像
(DKI)
解析ソフトウェアを独自に開発し、パーキンソン病・多系統萎縮症などの失調性神経変性の早期鑑別診断が可能なことを明らかにした
*43
。6)
神経変性疾患・精神疾患におけるモノアミン系神経伝達物質のMRI
解析独自に開発した超高磁場
MRI
神経メラニン画像を用いて、黒質緻密部・青斑核・中脳腹 側被蓋野の詳細な画像解剖を初めて明らかにした*44
。神経メラニンカラーマップの読影 実験によってうつ病・統合失調症の視覚的識別が可能であることを明らかにした*45
。また、新たに開発した
3D
神経メラニン画像を用いて黒質緻密部変性の半定量解析法を確立し、パーキンソン病の高精度早期診断が可能であることを明らかにするとともに、
MCI
におけ る青斑核の変性の可視化に成功した*46
。7)
画像統計解析による認知症の早期診断voxel-based morphometry (VBM)
の精度向上技術を複数確立し、アルツハイマー病(AD)
、 うつ病における微細構造変化の検出に応用した*47
。また、脳脊髄液を用いたVBM
手法 を独自に提唱し、特発性正常圧水頭症(iNPH)
の軽微な形態異常の定量評価法を確立し、解析用テンプレートをホームページで公開した
*48
。さらにtensor-based morphometry
(TBM)
による高精度経時的変化検出法、交絡因子調整機能を有する自動解析法を新たに開発し、
SPM
用汎用Toolbox
としてホームページで公開した*49
。8)
機能的MRI
による高次脳機能の解明7T MRI
による高解像度3D fMRI
撮像法を開発し、全脳解析による賦活部位ピンポイント特定技術の最適化を行った
*50
。本手法などを用いて、精神鎮静時における視覚・聴覚 情報処理過程の抑制、嗅覚刺激による一次嗅覚野の賦活、口蓋味覚刺激による一次味 覚野の賦活、人工甘味料における味覚刺激時による賦活などの検出を試みた*51
。また、呼吸苦中枢の特定と閉塞性肺疾患における変化を明らかにし、種々の肺疾患における バイオマーカーの検討を行った
*52
。【個別の研究成果】
1) コモンマーモセットの超高磁場MRI活用法の確立
本研究では、高次脳機能の解明と神経精神疾患の病態モデルとして期待される実験動物、コ モンマーモセットの実験環境整備として