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第 5 章 結論

5.1 研究のまとめ

近年,運動学習者の運動スキル獲得に向けたスポーツ環境の整備を行うことの必要性が 課題となっている.その一方で,運動スキル獲得において動作の修正を行う際に,客観的に 観察される行為と動作者本人の動作意識とのズレ(運動の不感性)が問題点として挙げられ る(杉原, 2003).運動学習において自身の動作を修正するためには,学習者自身が自身の 動作意識を正確に把握することが重要である.加えて,運動学習者は自身の動作修正に際し て,明確な課題設定を行わなければならず,認知的要因も運動スキル獲得に向けて重要な要 素であるといえる(Ericsson, 1993 ; Williamsら, 2008).つまり運動学習者の運動スキル 獲得において,動作意識に注意を向けさせ,さらに,明確な課題設定を行えるように練習活 動の環境を整えることは,運動学習者の運動スキル獲得に適切な支援を実施することに繋 がると考えられる.

以上を踏まえて本研究では,運動学習者の運動スキル獲得において,動作意識の把握,お よび明確な課題設定に向けて運動学習場面におけるスーパースロー映像の活用方法を提案 した.

第2章では,運動学習者が目指すべく運動スキル獲得に向けた「課題設定」を構成する要 因を明らかにすることを目的として,エキスパートやり投げ競技者を対象に,運動スキル獲 得に向けた学習課題の設定に関して,深層的・半構造的・自由回答的インタビューによって 動作意識の視点から明らかにした.加えて,スーパースロー映像をインタビューに用いて,

対象者の運動スキル獲得に向けた課題設定に及ぼす影響を事例的に検討した.

結果として,優れた運動競技者は自身の動作意識に注意を向けながら課題を把握し,指導

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者からの指摘を客観的に観察される動きと自身の動作意識の間で生じるズレを解消してい くことで動作意識の洗練化を図っていることが明らかとなったことに加えて,スーパース ロー映像を観察することで観察者の動作意識の洗練化を促進することが示唆された.

第 3 章では近年,運動学習に有効であるとされているスーパースロー映像の効率的な活 用方法を検討するため,優れた運動指導者を対象として,運動観察におけるスーパースロー 映像の観察行動を分析した.

分析の結果,スーパースロー映像を運動の観察に活用することで,動作の修正に対する指 導者の視点を動作意識に向けさせること,および通常の速度の映像と併用して観察するこ とによって動的姿勢における動作の課題設定に対する有効性が明らかとなった.

第4章では,第2章・第3章から明らかとなった結果を基に,実際の練習場面における スーパースロー映像の有効性の検証を試みた.ここでは,運動学習者に対してスーパースロ ー映像と通常の速度の映像を提示し,運動スキル獲得のための課題設定に関する発話を深 層的・半構造的・自由回答的インタビューによって得た.これらの手続きを5回にわたり行 い,実践前と実践後の運動学習者の運動スキル獲得における課題設定の変容を分析した.

結果として,運動スキル獲得に向けた運動学習者の学習課題の設定は,実践前と実践後に おいて「課題把握」,「学習の方向付け」,および「動作意識の洗練化」の3つのカテゴリー における各サブカテゴリーにそれぞれ変容が見られ,対象者は自身の試技のスーパースロ ー映像を観察することにより,観察される動きと自身の動作意識の間で生じる不感性を解 消させ,動作の自動化を図りながら課題を一連の動きの中でとらえることが可能になった.

加えて,各対象者の記録についても7名中 6名が実践後に自己ベスト,もしくはシーズン ベストを記録していることからも運動スキル獲得におけるスーパースロー映像の有効性を 示すものと考えられる.

以上のことから,本研究において運動スキル獲得におけるスーパースロー映像の活用提 案は実践的検証を基に,運動学習者の課題設定に有効な影響を及ぼし,学習者の記録向上の

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一助になったと考えられることから,その有効性が明らかにされたと考えられる.

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