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研究の総括と今後の展望

Ⅰ.研究の総括

ビジネスのあり方が変化するに従い、ビジネスパーソンが使用する国際ビジネス英語に も変化が見られる。本研究では、新しいモードのビジネス英語である BELF に注目し、議 論を展開した。

第 1 章においては、本研究の方向性と意義を説明した。そのために、まず国際ビジネス における英語使用の状況について概観した。次に、国際ビジネスコミュニケーションの研 究において英語を中心的に取り上げることの重要性と意義を説明した。

第2章では新しいタイプのビジネス英語であるBELFを取り上げた。その特徴として(1) 簡素化された英語、(2) ビジネス全般と専門に関係する特有の用語、(3) 話者の母国語の影 響を受けた話法、の3点を挙げた。これらの点から明らかなように、BELFはNSの英語 をモデルとしてはいない。この章では、BELFは日本人ビジネスパーソンが従来使用して きたビジネス英語とは異なる、新しいビジネス英語のモードであることを明らかにすると 同時に、日本企業および日本人ビジネスパーソンがいかに国際ビジネス英語のモードを変 え、BELFに同調していったかを観察した。

第3章ではこの分野ではまだ珍しいアジアのBELFを事例として取り上げた。取り扱っ たのはある日本企業と中国企業の間でやり取りをされた商取引メールの事例である。アジ アのBELFの研究は少ないと指摘されている。そのような意味において、第3章で提示し た日中の企業間でやり取りされたメールは、アジアのビジネスにおける英語の使用実態を 部分的に明らかにできる資料といえよう。また、この章においてはアジアのBELFから日 本人ビジネスマンのビジネス英語観に目を向け、既存のビジネス英語モデルをBELFの文 脈で整理した。

第4章では様々な英語の台頭により、同じ英語という言語を使用している場合において も、意思疎通が困難な状況が生じるという可能性を指摘し、ビジネス上でこれを回避する 方法が必要であると述べた。まず、NSとNNSの両方の英語の問題を概観し、国際水準に 則った英語が確立されるべきであるという立場を主張した。その上で、そのモデルと呼べ るグロービッシュを取り上げた。

第5章は前章で取り上げたグロービッシュの問題を分析した。グロービッシュはビジネ スコミュニケーションにおいて、有効なツールとして機能するという提唱者らの主張があ り、それを確認するのが目的であった。その結果、同モデルにはビジネス上重要な単語が 欠けていることが分かった。また成立上の問題点も明らかにし、同モデル以外の体系の必 要性を主張した。

第6章では、BELF時代の国際ビジネスコミュニケーションモデルを構築する上での条

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件と手順について考察した。提示したのはインタビュー調査から確認した必要性、平易さ の確保、語彙の限定、そしてビジネス領域の区分という観点からのアプローチであった。

グロービッシュは語彙の選択基準の曖昧さ、ビジネス用語の欠落などの問題点を抱えてい た。また、同章で取り上げたもう一つのモデルであるESNは、ビジネス関連語彙という点 では充実していたものの、NNS的な視点が欠けていた。そこで本稿では両者の折衷型モデ ルを提案した。

さらに、国際ビジネス英語モデルはビジネス領域と文化を考慮する必要性があることか ら、亀田(2013)の産業別BELF案というアプローチと、小林(2011)によるビジネス英 語を4つの領域に分割するアプローチを採用し、新モデルにそのフレームワークを組み込 むことの重要性を主張した。

Ⅱ . 今後の課題

国際ビジネス英語モデルの構築において重要となるのは、NNSとNSの双方にとり理解 可能なものを提示すること、そのためにはモデルの核となる語彙の選別を明確な基準で行 うこと、また、ビジネス領域を分けることが重要であると指摘した。本稿ではモデル構築 の条件と手順を提示した。今後は実際に国際ビジネス英語モデルの構築を行うために、次 のような研究の展開を視野に入れて行きたいと考える。

まず、ビジネス領域別の語彙リストの整理を行い、体系的かつ具体的な国際ビジネス英 語コーパスを作成する。この作業を行うためには第6章で扱ったグロービッシュとESNに 含まれる語彙の有用性をインタビュー調査、アンケート調査などから明らかにしていく必 要がある。どのような語彙が国際ビジネスにおいて決定的に必要となり、また反対に不要 であるのかを模索し取捨選択を行うことにより、モデルの核となる語彙リストが改良され ていく。またこの作業には、第6章において紹介した企業の社内辞書や基本用語集という 資料も参考にしたい。実用性のあるモデルを構築する上では、国際ビジネスを行う企業が どのような語彙を重要視しているかを見なくてはならない。このような作業を通じ、まず は具体的な試案を提示したいと考える。

英語を公用語とした楽天の三木谷社長は、既存モデルのグロービッシュを社内の中心言 語としていると公言している。グロービッシュは問題の多いモデルであるが、企業のニー ズを吸収していけば、ビジネスコミュニケーションに効果を発揮する体系へと進化する可 能性がある。今後の研究で行いたいのはまさにこの点である。まずはモデルの試案を構築 し、批判を受け、修正を施し、改訂版のモデルを提示するという流れの中で、国際ビジネ ス英語のモデルは実際のビジネスコミュニケーションのニーズから乖離が少ないものへと 成長していくであろう。この部分の追求が、今後の課題である。

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