MORLEY VON STERNBERG, RICHARD POWERS / GETTY IMAGES
多くの製品がバイオミミクリーのア プローチを使って開発されており、こ の中には数多くの「フィッシュ博士の 瞬間」が含まれています。
例えば、ナイキは松ぼっくりが温か いときに開いて種をばらまき、寒いと きには閉じるという仕組みに基づいて フィットネス用の衣服のための素材を 開発しました。最も最近のオリンピック では、パラリンピックはあまり注目され ないイベントではなくなり、生物学的 なヒントを得た人工装具の助けによ り、競技者は人間の身体を限界まで押 し上げました。また、最近ではクラゲと 同じ方法で水を凝固させる新しいタイ プのおむつが開発されています。
現 在、他 にも多くのバイオミミク リー製品が研究段階にあり、既に開発 されてコンシューマー向けアプリケー ションの発見を待っているものもあり ます。しかし、ニコル・ミラー氏は、バイ オミミクリーはもともと消費者主導の ものではなく、会社自体の未来へのビ ジョンに基づいていたものであると言 います。ここでまさに変化が起こってい ます。自然に興味を持ち、自然を理解 することが、その可能性を本当の意味 で見抜くためには欠かせまん。
「自然のなかにいると創造力が解 き放たれるということを示す研究はい くらでもあります」と彼女は言います。
や木という素材が人々から肯定的に 受け入れられていることにもよります。
多くの建築家が建築物を周囲の環境 に溶け込ませ、動植物の生活を邪魔 しないようにするため、以前よりも頻 繁に建築プロジェクトに自然を採り入 れるようになっています。世界各地で 建築規制が変更されたことで、より高 い木造建築物が可能になりつつあり ます。鋼とコンクリートとの闘いのなか で、高さのある木造構造は都市社会の なかですぐに勢いを得る可能性があ ります。
建築家、ナイキの製品開発者、アー ティストにかかわらず、最も影響力の ある人々とは自分の周辺環境からアイ デアを吸収し、それを全く違う状況の 中で現在に通用するものに作り直すこ とのできる人々です。
自然はソリューション、原材料、数 百万年もの経験を持っています。資源 をもっと効率的に、節約して利用でき るようになることだけでなく、自然に対 してもう少し優しくなる方法を私たち に教えてくれるでしょう。シベリウスの 感情移入、ハイデガーの実用主義、そ してフィッシュの創造力で明日の課題 に対処するために。あるいはまた、バ イオミミクリー3.8のマーク・ドーフマン の言葉:
「iPhoneが大好きです。個人的には 石器時代に戻りたいとは思いません。
私が本当に望んでいるのは、環境に対 して石器時代の影響力を持った、宇宙 時代の技術です。」という言葉を使うた めに。̶
多くの製品がバイオミミク リーのアプローチを使って 開発されています。1950年 代デンマークの先駆的デザ イナー、アルネ・ヤコブセン
(Arne Jacobsen)は彼の 愛する自然の形に基づいて
「Egg」(左)と「Swan」(右)
をデザインしました。
「私たちが自然とそのエコシステムの なかで役割を持っていることに気づ き、理解すること、そして自然から引き 出すだけでなく自然から学ぶことが重 要です。」
100年近くも前に、ドイツの哲学者
ハイデガーは、その大作『存在と時間』
の中でまさにこのことを指摘していま す。ハイデガーはこの中で、人間が自 然におけるその立場についての方向 感覚を失ったという考えを展開してい ます。技術の進化のために自然を利用 しようという私たちの試みのなかで、
自然をそのままの状態で味わう能力 を失ってしまいました。
この論拠に基づけば、川は人間が 川の中に水力発電所を作ってはじめ て意味を持つことになります。たとえ多 くの人が現在でもこのように考えてい るとしても、反対方向への強い動きは 始まっています。多くのイノベーター やデザイナーは現在、自然とその固有 の意味が製品の本当の強みとなるよ うにしています。自然素材を利用する ことで、人工のものでは置き換えられ ない感覚を実現しています。
このトレンドは建築の分野でも顕 著です。今日、素晴らしい木造建築物 を設計する建築家の数は増え続けて います。もちろん、これは一部にはサス テナビリティの問題ですが、美的感覚
INSPIRE.1̶2017年―p. 31 バイオミミクリー
INSPIRE.1̶2017年―p. 32 ここにもそこにも、イグスンド
R E S E T / ここに もそこに も 、イグスンド
自然の近くから
写真̶リンドステン(Lindsten)/ニルソン(Nilsson)
ビジネスをできる限り環境に優しく運営するというイグスンド・ペーパーボードの 任務におけるカギとなる 2 人の人物、 ヨハン・グラナス ( Johan Granås ) とイア ン・ブラック ( Ian Black ) (両者ともイグスンドに入社して 20 年) をご紹介します。
「現 在は、しばらくサ ステナビリティ・コミュニ ケーションマネージャー を務めています。私の仕 事は、当社のサステナビ リティを興味深く、分かり やすい方法で市場に伝 えることです。また、サス テナビリティは全体とし て私たちのコミュニケー ション全体において自然 に受け入 れられていま す。市場のサステナビリ ティへの希望を当社組織 に組み込み、私たちが継 続的に発展できるように するのも私の役目です。
今日、以前には存在しな かった、こうした問題へ の 関 心 が 高まっていま す。これらの問題は私た ちにとって大切なことで すから、私たちの仕事は 以前にも増してやりがい に満ちています。
「時には、サステナビ リティによって仕事が決 まることがあります。例 えば、お 客 様 がF S Cや P E F Cに 従って認 定を 受けたペーパーボード
(板紙)を供給するよう求 めている場合などです。
しかし、当社のコミットメ ントが当社を訪れるすべ ての人に明 確に伝わる ことも非常に重要です。
私たちは、より規模の大 きい状況においてもこれ らの問題に対処している ことを示せなければなり ません。サステナビリティ は原材料、工場、物流と いった、当社のすべての 生産段階で一貫して行 われなければならないの です。」 ̶
「この土地の素晴らしい 自然に近いことが、私と 家族がイグスンドに住む ことに決めた大きな要因 でした。森は、文字通り、
私たちの農場のすぐ近く にあります。私は余暇の 多くの時間を家族と共に 森の中で過ごします。ここ で私は運動して、ベリー やきのこを摘み、シカを 狩ります。私は森林を所 有する家族に生まれ、家 族の持つ森林地を管理 する5代目です。
「今 年はイグスンド・
ペーパーボードで働い て20年になります。思い 出せば、採用プロセスは 非常に打ち解けた雰囲 気のものでした。電話を もらい、「私たちがどのよ うに仕事をしているか見 にきませんか」と言われ たのです。それで、会社を 見に行ったんです。それ 以来、いくつかの職務に 就きました。イグスンド工 場で開発に関わったこと もありますし、Invercote
(インバーコート)の製品 マネージャーを務めたこ ともあります。それだけで なく、様々な事業開発に も携わってきました。
ヨハン・グラナス
(Johan Granås)、
イグスンドの自宅 付近で撮影
R E S
イアン・ブラック
(Ian Black)、ワー キントンの自宅近
くにて撮影
「自然との最初の触れ合
いは、3歳の時に父がこ
こカンブリアのヘルベリ ン山の頂 上まで私をお んぶして連れて行ってく れたときのことです。ヘル ベリン山はイングランド で3番目に高い山で、現 在ここを歩いてみると、ず いぶんと軽はずみな行動 だったように思えます。
「それ以来、私は自然 環境に一貫して興味を抱 いています。自然を素晴 らしく思う気持ちは毎年 高まり、素晴らしい体験と そうでもない体験とを区 別することはありません。
何年も探し求めた結果、
英国で最後の生き残りの イヌワシを1990年代後 半に間近で見ることがで きました。素晴らしい体 験でした。ですが、私は庭 に住んでいるコマドリの ことも同じように楽しんで います。このコマドリは正 面ドアを抜けて2回飛び 上がり、居間まで入って きたんです。
「個 人 的に自然に興 味 があるので 、当 社 の ワーキントン工場の工程 や製品の確実かつ持続 可能な発展の一部となっ ていることを嬉しく思って います。イグスンド社で勤 務して20年になり、現在 はパルプ・電力部門長を 務めています。
「バラエティに富んで いることが私の仕事の一 番良いところです。生産 パフォーマンスを毎日最 適化するというのが身近 な課題ですが、長期的な 工場の発展にも目を向 ける必要があります。再 生可能エネルギー発電 所が稼働してから3〜4 年になりますが、エネル ギーパフォーマンスと環 境開発、そしていかにイ ンカダの品質の継続的 な向上をサポートできる かという点において一生 懸命取り組んでいます。
発電所は政府に登録さ れた英国の再生可能エ ネルギー発電所であるた め、当社の持続可能な燃 料源や再生可能エネル ギー発電、効率性、二酸 化炭素排出量を認可す る政 府 機 関と一 緒に仕 事をする機会も多くあり ます。
「環境のために行って いる私たちの取り組みに ついて訪問客に話すだ けではなく、ここカンブリ アの美しい湖 水 地 方に 人々を招待してそれを見 せるようにしています。多 くの人が、このようなライ フスタイルや経験に次第 に感銘を受けるようにな りました。それが、この場 所を訪問してもらうことに よって長期のビジネス関 係の形成が促されるとい う理由です。訪問客は工 場や森を訪れたことを忘 れないと思います。」 ̶
INSPIRE.1̶2017年―p. 33 ここにもそこにも、イグスンド
写真̶アンドリュー・フィンドレー(Andrew Findlay)