1. 「沖縄 21 世紀ビジョン基本計画」策定後の県内経済・産業の状況
3次30年の沖縄振興開発計画及び沖縄振興計画に続く新たな振興計画として、平成24年5 月に「沖縄21世紀ビジョン基本計画」が策定されてから3年が経過した。
この間、同計画に基づき様々な振興施策が展開され、国内経済の好転とも相まって、既存産 業の発展や新たな産業の芽生えなど、新たな成長の流れが生じている。
例えば、本県のリーディング産業である観光関連産業においては、平成 19 年度以降横這い 或いは減少傾向にあった入域観光客数が大幅な増加に転じ、特にアジアを中心とする外国人観 光客がここ3年間で3倍以上に急増している。また、情報通信関連産業においては、従来立地が 進んでいたコールセンターに加え、ソフトウェア開発やコンテンツ制作のほか、リスク分散拠点や データのバックアップ拠点としての活用も増加するなどビジネスモデルが多様化し、さらなる成長 に向けて新たな展開を見せている。
県外に比べ伸び悩んできた製造業においても、ものづくり基盤技術の高度化に向けて産学官 連携の促進や県内生産体制強化などの取り組みが進められ、素形材産業振興施設を中心に金 型などサポーティング産業の集積が進み、企業誘致や連携、人材育成の成果などが実りつつあ る。
また、新たなリーディング産業として今後の発展が期待される国際物流関連産業においては、
ANAの国際物流ハブが当初の 8 路線から現在の12 路線へとネットワークを拡大し、その輸送 機能を活用した農林水畜産品や加工食品等の県産品の輸出拡大が拡がるとともに、ヤマトグル ープにより、国際物流ハブを活用した国際宅急便やパーツセンターの事業化が実現するなど、国 際物流拠点化に向けた取り組みが進展している。
このように、「沖縄 21 世紀ビジョン基本計画」の策定後、観光関連産業や情報通信関連産業 等の基幹産業、或いは、これまで伸び悩んできた製造業においても新たな展開が見られるととも に、ANA の国際物流ハブを中心とする国際物流拠点機能及びその物流機能を活用する産業の 増加など、新たな産業の芽生えが見られる。
これらの成長の動きをさらに加速させ、本県の経済・産業を新たな成長ステージへと引き上げ るための新たな施策展開が求められている。
2. 今後取り組むべき課題
先に示したとおり、沖縄21世紀ビジョン関連施策の実施により、産業振興に一定の成果が現 れている。しかし一方で、更なる成長に向けて、多くの課題も抱えている。その主な課題を以下に 示す。
○ 観光客数 1,000 万人、うち外国人観光客数 200 万人への対応
沖縄県観光振興基本計画には観光客数1,000万人、うち外国人観光客数200万人の目 標が示されているが、入域観光客数は増加傾向にあり、特に外国人観光客については急増 傾向がみられる。このままでいくと、目標の早期達成または凌駕も予想され、オーバーフロ ーを防ぐための、供給体制の急速な整備が求められている。とりわけ、大型クルーズ船の寄 港は対応できず断る事例もあり、喫緊の対応が求められている。
また、自家用ジェットで来県する海外富裕層も存在しており、空港における駐機場、ヘリ ポート等の対応も遅れている。急増する観光客に対する情報提供のコンシェルジュ機能等 のサービスをはじめ、那覇-名護間の鉄軌道の敷設等の交通手段の拡充等、ハード・ソフト インフラの整備を急がねばならない。
○ 人材の育成・確保
アジア等の海外を市場とするビジネスを展開するためには、語学力や国際感覚と併せて 当該ビジネスの高いスキルやノウハウを有するグローバルな産業人材が必要となる。現時 点は、各産業分野総じてそのような人材が不足しており、人材の育成・確保が必要な状況に ある。
沖縄県アジア経済戦略構想の実現の基礎となるのは「人材」である。英語圏にとどまらな い語学力や国際感覚と併せて、当該ビジネスの高いスキルやノウハウを有する産業人材が 必要となるが、その全てを県内で賄うことは現実的に不可能であり、当初は県外からの人材 にも頼らざるを得ないと考える。
しかし、日本経済だけでなく沖縄経済を本格的に成長軌道にのせていくためには、県内 の人材を確実に育て、産業界に供給していくことが必要不可欠である。本構想は県内にお ける基幹産業の実現を目指すものであり、継続的な人材の供給がなければ、その実現はな いことを教育界・経済界が強く認識すべきである。
○ 空港・港湾機能及び周辺産業用地の確保
離島県である沖縄にとって、空港・港湾からのネットワークが人流・物流の唯一の手段で あり、その充実度が経済・産業の発展に極めて大きく影響する。
現在の沖縄の状況を見ると、最も重要となる那覇空港においても、①第2滑走路の早期 完成、②国際・国内旅客ターミナルの拡大とその連絡性等の機能性向上、③旅客便・貨物 便両方の航空機スポットの不足など、早期対応が求められる多くの課題を抱えている。
また、港湾においては、①海外航路の拡充、②輸送運賃の低減、③港湾機能の充実、
④片荷輸送の解消、⑤狭隘化の解消などの重要な課題を抱えている。
また、アジアとの近接性、すなわちスピード性が沖縄の対アジア戦略の重要な要素であ るが、そのスピード性を生かせる最も重要な拠点である那覇空港内や那覇港内及びその周 辺地域に産業用地として利用可能なスペースがないことが、将来の発展可能性の大きな阻 害要因となっている。
○ 那覇-名護間の鉄軌道の敷設
アジアのシームレスな交通体系に連動した海、空、陸の交通システムの構築する一環と して那覇-名護間の鉄軌道を敷設する。現在沖縄県と内閣府が「沖縄県における鉄軌道を 含む新たな公共交通システムの導入」について検討しているが、その実現はアジア経済と の連携や沖縄の均衡ある県土の構築、北部振興や拠点の形成による観光、ビジネス、まち づくりにおいて重要である。
多くの観光客が訪れる「沖縄美ら海水族館」が存在する。今後北部地域での展開が期待 される世界ブランドのテーマパークが新たな観光拠点になり、全国でも有数の交通渋滞を解 消し、アクセスを確保して、とりわけ外国人観光客のさらなる増加を図るうえで、鉄軌道の敷 設が必要不可欠である。
○ 情報のワンストップ機能の整備
海外からの投資や企業・ビジネスの誘致、観光客の誘客等を呼び込むのに必要な沖縄 の情報が、海外から入手しにくい状況にある。
海外の先進地域では、必要な情報を集約させたWebサイトでの情報のワンストップ・サ ービスを多言語で提供することにより、観光客や投資、ビジネスの誘致を促進している。
また、外資企業の立地や投資に必要な情報の提供や相談を一括して行うビジネスコンシ ェルジュ機能を持つ組織・窓口を設けて、企業誘致や投資を促進している。
沖縄においてもこれらの機能を構築し、機会損失の低減或いは誘致や投資の促進を図 ることが求められる。
○ ビジネスやサービスの多様化・高付加価値化の推進
例えば、観光関連産業においては、パックツアーによるショッピングや代表的な観光地を 巡る画一的な旅行形態に加え、ダイビングや伝統文化等の体験型旅行やヘルスツーリズム、
離島ツアーなどのニーズの多様化に対応し、外国人観光客のリピーター率を高める必要が ある。
また、食事やお土産、アクティビティ等のコンテンツの充実に加え、富裕層や長期滞在型 旅行者の受入環境の向上等により高付加価値化を図り、観光関連収入の増加を図ることが 求められている。
情報通信関連産業やものづくり産業等のその他の産業分野においても、製品やサービ スの高付加価値化を促進し、県民所得の向上を図る必要がある。
○ 創貨を実現する施策展開
ものづくり産業は、食品産業、観光、医療、環境・エネルギー、情報通信産業等の他の産 業との連携の可能性を有し、ひいては沖縄発の物流を生み出す原動力にもなる。
税制優遇措置や様々な取り組みの結果企業誘致などに一定の成果はみられるものの、
誘致企業と県内企業の連携や、産業への広がりを持った施策展開が充分に進んでいない 状況にある。
特に、企業における実用化等を中・長期的に切れ目なく支援する体制や機能がなく、原