• 検索結果がありません。

Ⅰ 年度当初の試験研究計画とそのねらい

平成28年度の研究は,社会・行政ニーズや技術分野の 将来動向を考慮し,重点研究,指定研究,基盤研究およ び調査として承認された下記の項目を計画した。

1. 航空路監視技術高度化の研究

2. マルチスタティックレーダによる航空機監視と性能 評価に関する研究

3. 空港面異物監視システムの研究

4. SWIMのコンセプトによるグローバルな情報共有基 盤の構築と評価に関する研究

5. 空地通信技術の高度化に関する研究

6. 監視システムの信号環境と将来予測に関する研究 7. 空港面と近傍空域のシームレスな全機監視方式の研

8. ADS-B方式高度維持性能監視の研究

9. 低高度における状況認識技術に関する研究

10. 走査型親局を想定する受動型レーダの覆域拡張技術 の研究

11. カオス論的な発話音声評価アルゴリズムの信頼性向 上のための研究

12. UAS のための GPS に代わる位置推定法に関する研 究

13. 航空機内データ通信(WAIC)における電磁環境評価 に関する基礎研究

14. 管制方式等の規則の構造化と運用手法の機械学習に 関する調査

15. ミリ波帯による高速移動用バックホール技術の研究 開発

16. 新世代ネットワークの実現に向けた欧州との連携に よる共同研究開発および実証

17. 樹脂系複合材料を用いた次世代航空機における電磁 環境両立性解析技術の研究

18. 次世代航空通信向けマルチユーザMIMO信号処理技 術の開発及び航空機縮尺モデルを用いた評価 19. 携帯端末の電波直接探知による海上衝突予防に関す

る基礎的研究

20. ハイブリッド簡易高速電磁界計算による電磁波可視 化と実証実験による民間航空解析支援

21. 航空需要に対応する海上設置型ローカライザの設置 条件に関する研究

1~5は重点研究である。

1は,航空機監視システムとして現用のSSRモードS と,WAM (Wide Area Multilateration)やADS-Bなどの新シ ステムを連係させることにより,高性能・高信頼の監視 システムを実現することを目指す研究である。

2は,WiMAX技術を航空分野に適用して空港周辺のC

バンド空地通信網のプロトタイプを開発し,国際規格策 定に参画するとともに,実用的なアプリケーションを想 定した性能評価を行う研究である。

3 は,複数のミリ波センサーから構成されるセンサネ ットワークとITVカメラネットワークを用いるハイブリ ッドセンサネットワークを開発し,高度な監視情報を得 ることができる空港面異物監視システムに関する研究を 行う。

4 は , 異 な る SWIM(System Wide Information

Management)システム間でシームレスな情報交換と異種

サービス連携を実現する技術を提案するとともにその技 術を評価するSWIMの情報共有テストベッドを構築する 研究である。

5は,既存のAeroMACSプロトタイプを活用して,航 空機,車両,地上間で連接可能な航空用高速通信ネット ワークのプロトタイプを構築するとともに,AeroMACS の利用技術の開発や AeroMACS 技術の適用範囲拡大の 可能性を評価する研究である。

6~8は指定研究である。

6 は,監視システムに使用される周波数帯域において 地上及び上空での信号量を測定し評価することにより,

監視システム全体の性能を評価することを目指している 研究である。

7は,モードSトランスポンダを装備していない航空 機に対応したマルチラテレーションの開発・評価を中心 に,空港面から空港の近傍空域までを一元的にカバーす る監視システムの実現する研究である。

8は,短縮垂直間隔(RVSM; Reduced Vertical Separation

Minimum)の運用時に,ADS-Bを高度監視に用いる場合

の性能評価を行うとともにRVSM非適合機を判定するツ ールの開発を行う研究である。

9~11は基盤的研究である。

9 は,ヘリコプタなどが低高度を飛行する際に機体周 辺の障害物を検出することで安全運行を支援することを めざし,ミリ波レーダを改良する研究である。

10は,現在の空港監視レーダ整備・運用の今後の合理 化を念頭に,2 次監視レーダの質問信号の反射による航 空機測位技術を開発する研究である。

11は,発話音声を分析することにより覚醒水準を評価

するための尺度を定めるため,適切な発声課題の選定や 評価尺度に発生する分析誤差の軽減を目指す研究である。

12,13は萌芽的研究である。

12は,GPSに代わる位置情報源を提供することで,無人 航空機UASの運用信頼性を向上させる研究である。

13は,4 GHz帯を用いた航空機内データ通信(Wireless Avionics Intra-Communications,WAIC)の無線化を実現す るためにEMC評価技術を確立する研究である。

14は調査課題である。個々の航空機の最適経路の設定 からすべての航空機の最適経路の設定へのパラダイムシ フトを行うことを想定し,量子コンピュータによる人工 知能や機械学習を適用した技術方策について調査・検討 する調査である。

15~21はは競争的資金による研究である。

15は,ミリ波と光無線通信の技術を活用して,200km/h 以上の高速列車等との間で Gbps 級の通信を実現する技 術の研究開発を他機関との連携により目指しており,当 研究所は光逓倍による通信技術の開発を分担している。

16は,欧州と欧州外諸国との間で共同研究を実施する ために準備された制度Horizon2020に基づく日欧共同研 究である。航空分野への応用も期待される将来のネット ワーク基盤を構築するための基礎技術として,ミリ波帯 と光ファイバ通信を連携させるための研究開発や実証支 援を当研究所が分担している。

17 は,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を主要構 造材とする,次世代航空機等への電磁干渉影響の数値解 析推定技術を開発する研究である。

18は,マルチユーザMIMO(Multiple Inputs and Multiple

Outputs)システムの航空通信への適用を検討するために,

信号処理技術,空地でのアンテナ配置の検討,全体性能 評価に関する研究である。

19は,主に小型船舶を対象に,船舶乗車者の携帯端末 から発信される電波を活用し,船舶の位置特定技術の開 発,船舶衝突予防への適用評価に関する研究であり,当 研究所は,主に,携帯電波探知装置の製作を分担してい る。

20は,航空分野で利用される,もしくは利用を期待さ れる無線システムについて,環境に応じたハイブリッド 計算手法を開発し,運用者に電波の振る舞いを可視化す る研究である。

21 は,計器着陸装置(ILS)のローカライザを海上に 設置する場合,海面や海上構造物を考慮した電波伝搬を 解析し,設置条件を検討する研究である。

Ⅱ 試験研究の実施状況

「航空路監視技術高度化の研究」は最終年度であり,

これまでに構築したWAM/ADS-B実験システムを利用し て,高利得セクタ型アンテナによる性能試験を行い,研 究目標である最大覆域(WAM:200NM,ADS-B:250NM) まで拡大できることを示した。また,モードSデータリ ンクの性能改善にも有効であることがわかった。今後は,

ADS-B がプライマリセンサとなった場合に必要となる

ADS-B/WAM技術の開発・評価を,後継となる次期研究

において実施する。

「マルチスタティックレーダによる航空機監視と性能 評価に関する研究」では,昨年度までに整備したMSPSR 実験システムによる航空機の測位実験を行うとともに,

マルチスタティック処理のための実験システムの拡張を 行った。今後は,仙台空港内に設置した実験システムを 使用して,飛行実験や現行PSRとの比較等により光ファ イバ接続型パッシブレーダの性能評価を行うとともに,

複数の受信機による信号分離手法の実装や捕捉性能の向 上について検証を行った。

「空港面異物監視システムの研究」は最終年度であり,

仙台空港にてセンサー単体の検知性能の基礎試験,成田 空港にてハイブリッドセンサーシステムの総合性能を評 価し,目標としたシステム性能(滑走路から離れた場周 道路付近にセンサーを配置し,異物発生から10秒程度に 検出,カメラで撮像)を達成できた。検知率が低下する 一部の単体や夜間のカメラの撮像能力の低下については,

検知率向上を次年度からの指定研究で検討する。

「SWIMのコンセプトによるグローバルな情報共有基 盤の構築と評価」では,SWIMに基づいた将来の運用環 境を構築するため2つの国際実証実験に参加した。また,

飛行情報と監視情報の融合により監視精度の向上や監視 履 歴 デ ー タ と 気 象 予 測 デ ー タ に よ る 軌 道 ベ ー ス 運 航

(4DT: 4 Dimension Trajectory)飛行計画の作成などの研 究開発を行った。

「 空 地 通 信 技 術 の 高 度 化 に 関 す る 研 究 」 で は ,

AeroMACSプロトタイプを活用し,実験室内での空港内

地図の表示ツールの基礎実験を行うと共に,通信事業者 と共同で羽田空港における実環境下での基礎性能評価試 験を行った。また,平成27年度末のAeroMACS端末を 搭載した実験用航空機と地上の基地局との通信結果を追 加解析し,実験用航空機のアンテナ位置に基づく特性や,

上空での適用範囲拡大の可能性が示された。

「監視システムの信号環境と将来予測に関する研究」

では,信号環境測定装置の開発および実際に計測した結

関連したドキュメント