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(1) はじめに

平成 28 年4月 14 日(木)21 時 26 分、熊本県熊本地方を震源とするマグニ チュード6.5の地震で震度7を観測した益城町、4月16日(土)1時25分、

熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード 7.3 の地震で震度7を観測した 益城町及び西原村、両町村合わせて25人(直接死)の尊い人命を奪った「熊 本地震」が発生した。

首都直下地震、東海地震、東南海・南海地震及び南海トラフ地震の発生が報 道等でも取り上げられていた中、確率の低い熊本県で28時間の間に2回も発 生するとは誰もが予測しなかったことであろう。「まさか」の事態である。

今回の地震で益城町及び西原村には甚大な被害が発生して、人々の生活は一 変してしまった。消防職員の中にも被災したにも関わらず、職責を全うするた めに尽力した職員が多数いる。幸いなことに、職員及び家族に犠牲者が出なか ったことは、不幸中の幸いと言えるであろう。

また、益城町及び西原村では熊本県応援隊、緊急消防援助隊及び自衛隊、警 察等の関係機関の方々が災害対応にあたられたことに対し、感謝申し上げます。

益城町及び西原村を管轄する益城西原消防署として、今回の震災における活 動をここに記録する。

(2) 対応状況 ア 参集状況

(前震)

4月14日21時26分、地震(前震)が発生し、益城町で震度7を観測し た。非常災害基本計画において管内で震度5弱以上の場合は、自主参集とな っていることから職員は自主参集し、発災から3時間以内では参集が完了し た。

(表1 参集状況【4月 14 日】)

NO 時 分 参集人員 合計 参集率

1 21:26 ~ 22:00 12 人 12 人 33%

2 22:00 ~ 22:30 12 人 24 人 67%

3 23:00 ~ 23:30 7人 31 人 86%

4 23:30 ~ 00:00 4人 35 人 97%

5 00:00 ~ 01:00 1人 36 人 100%

13 益城西原消防署

(本震)

4月 16 日1時 25 分、本震が発生し、益城町及び西原村で震度7を観測した。

(表2 参集状況【4月 16 日】)

NO 時 分 参集人員 合計 参集率

1 01:25 ~ 02:30 7人 7人 29%

2 02:30 ~ 03:00 6人 13 人 54%

3 03:00 ~ 03:30 10 人 23 人 96%

4 03:30 ~ 06:00 1人 24 人 100%

※4人は、自宅や道路の損壊等により参集免除。

イ 消防署の状況

●益城西原消防署は、地震により停電した際に自家発電機に異常をきたし、車 庫の非常電源だけが稼動したため、署隊本部を車庫に設置した。

●車庫の車両は、地震の影響で車輪止めを乗り越えてシャッターに接触した。

損傷はあるが、運行に支障なかった。

●車庫周辺の側溝破損により、グレーチングをブリッジとして車庫前に全車両 を移動した。

●署隊本部脇には、トリアージポストを併設した。(使用実績なし)

198 第5章 199

(本震)

4月 16 日1時 25 分、本震が発生し、益城町及び西原村で震度7を観測した。

(表2 参集状況【4月 16 日】)

NO 時 分 参集人員 合計 参集率

1 01:25 ~ 02:30 7人 7人 29%

2 02:30 ~ 03:00 6人 13 人 54%

3 03:00 ~ 03:30 10 人 23 人 96%

4 03:30 ~ 06:00 1人 24 人 100%

※4人は、自宅や道路の損壊等により参集免除。

イ 消防署の状況

●益城西原消防署は、地震により停電した際に自家発電機に異常をきたし、車 庫の非常電源だけが稼動したため、署隊本部を車庫に設置した。

●車庫の車両は、地震の影響で車輪止めを乗り越えてシャッターに接触した。

損傷はあるが、運行に支障なかった。

●車庫周辺の側溝破損により、グレーチングをブリッジとして車庫前に全車両 を移動した。

●署隊本部脇には、トリアージポストを併設した。(使用実績なし)

ウ 熊本県応援隊の到着

10 消防本部29隊101人が益城西原消防署へ集結(発災3時間後)した。

応援隊の車両に益城西原消防署の職員が同乗し、道路案内役として対応し た。

エ 災害対応

【火災】

4月 14 日 21 時 50 分頃、益城町安永において建物火災が発生した。

(全焼火災はこの1件のみ)

時系列

入電:21 時 58 分 指令:22 時 00 分 現着:22 時 09 分 放水:22 時 14 分 鎮火:05 時 34 分

活動にあたっては、水利確保が困難な状況であり、全焼3棟、部分焼1棟、ぼや 2棟であった。

熊本地震における災害発生状況

(H28.4.14~H28.7.13)

区分 火災

救助

救急 活動件数 救出人員

益城町

事案数 1 43 64 226

出場隊数

(人員数)

益城西原消防署 出場

4隊

(13人)

24隊

(107人)

151隊

(453人)

熊本市出場 5隊

(17人)

50隊

(197人)

75隊

(225人)

西原村

事案数 0 6 8 49

出場隊数

(人員数)

益城西原消防署 出場

3隊

(10人)

48隊

(144人)

熊本市出場

2隊

(9人)

1隊

(3人)

事案数計 1 49 72 275

出場隊数計

(人員数計)

益城西原消防署 出場

4隊

(13人)

27隊

(117人)

199隊

(597人)

熊本市出場 5隊

(17人)

52隊

(206人)

76隊

(228人)

200 第5章 201

エ 災害対応

【火災】

4月 14 日 21 時 50 分頃、益城町安永において建物火災が発生した。

(全焼火災はこの1件のみ)

時系列

入電:21 時 58 分 指令:22 時 00 分 現着:22 時 09 分 放水:22 時 14 分 鎮火:05 時 34 分

活動にあたっては、水利確保が困難な状況であり、全焼3棟、部分焼1棟、ぼや 2棟であった。

【救助】

熊本地震後、管内の道路状況は劣悪で、橋梁は車両の進入ができないほどの段差 ができたため、人力で対岸へ資機材搬送を行い、消防団の所有する軽トラック等に 積載後、現場へ向かうという方法で対応した。現場到着に通常の何倍もの時間を費 やす状況であった。

オ 災害対策本部への署員派遣

益城町及び西原村の災害対策本部へ署員を派遣した。

カ 大規模捜索(ローラー作戦)

4月15日昼から消防、警察及び自衛隊による益城町を区域分けした大規 模捜索活動(ローラー作戦)を実施した。なお、消防学校に職員を派遣し、

緊急消防援助隊の誘導にあたった。

キ 東熊本病院からの転院搬送

4月15日22時47分、益城町惣領の「東熊本病院」から、地震により新 館が倒壊の恐れがあり、入院患者 30 人の転院搬送の要請があった。

熊本県応援隊及びDMATと連携して対応している最中、1時25分に本 震が発生した。幸いなことに隊員に負傷等の被害はなかったが、益城西原消 防署と中央消防署の救助工作車が地震の影響で接触し、損傷をした。

202 第5章 203

オ 災害対策本部への署員派遣

益城町及び西原村の災害対策本部へ署員を派遣した。

カ 大規模捜索(ローラー作戦)

4月15日昼から消防、警察及び自衛隊による益城町を区域分けした大規 模捜索活動(ローラー作戦)を実施した。なお、消防学校に職員を派遣し、

緊急消防援助隊の誘導にあたった。

キ 東熊本病院からの転院搬送

4月15日22時47分、益城町惣領の「東熊本病院」から、地震により新 館が倒壊の恐れがあり、入院患者 30 人の転院搬送の要請があった。

熊本県応援隊及びDMATと連携して対応している最中、1時25分に本 震が発生した。幸いなことに隊員に負傷等の被害はなかったが、益城西原消 防署と中央消防署の救助工作車が地震の影響で接触し、損傷をした。

ク 主訓練塔の解体

益城西原消防署に設置されている主訓練塔(5階建て:17m)が、地震の 影響で3階部分が損傷し、本震で西側の国道 443号線の方向に傾いたため、

国土交通省から熊本県を通じて撤去命令が下り、4月 19 日~25 日の7日間 で撤去工事を行った。

(3) 考察

このたびの熊本地震における活動は、「まさか」の連続で対応には苦慮した。

中でも、防災拠点である消防署の庁舎が被災したことにより、初動対応に大き な打撃を受けたことは想定外であった。しかしながら、冒頭にも記した職員・

家族に一人の犠牲者も出なかったことはせめてもの救いである。消防職員であ ることの『誇り』を胸に活動を行なった益城西原消防署50人の勇士に敬意を 表したい。

前震後の参集から不眠不休での災害対応でも、誰一人として脱落せずに「オ ール益城西原消防署」を合言葉に全力で災害に立ち向かった。

庁舎のライフラインが寸断され、職場環境は劣悪であり、この時「水」の有

難さを痛感させられた。日頃は、何不自由なく使っている水も、この時は貴重 な「宝物」であり、支援物資や職員の自宅からの提供で難局を乗り越えた。

食糧は、備蓄品や被害の少なかった職員が持ち寄ったもの、買出し品で対応 した。LPガスの復旧で、職員により提供された味噌汁が五臓六腑に染み渡っ たことを今でも思い出す。

庁舎の主訓練塔が解体になったのは、残念であり地震の大きさが窺われる。

平成 10 年に阪神淡路大震災級(震度7)の 1.25 倍の耐震強度で庁舎は設計 されていたが、訓練塔は 1.0 倍での設計であったのも起因しているのかもしれ ない。

消防車両も今回の地震で、損傷を受けた。前震で、車庫に輪留めをしていた 消防車が、輪留めを乗り越えてシャッターに接触した。車庫前の排水溝は地盤 沈下により破損したため、曲がったグレーチングでブリッジを作り、車庫前に 全車移動させての災害対応であった。

なお、火災対応は、益城町安永の建物火災だけで、阪神淡路大震災及び東日 本大震災と比較しても火災が少なく、また、前震後に通電した時の通電火災も

“ゼロ”であった。

これは、地元消防団等の広報活動及び九州電力の対応等が挙げられる。

また、人的被害も比較的に少なく、前震・本震ともに夜間帯でショッピング モールや展示場が無人状態であったことが起因しているものと考えられる。し かしながら、管内においては25人の方が犠牲となられ、心からご冥福をお祈 りする。

熊本県応援隊及び緊急消防援助隊の受援については、前震の3時間後には熊 本県応援隊が当署に到着(10 消防本部 29 隊 101 人)し、代表消防本部(熊本 市消防局)の被災により代行消防本部(有明広域消防本部)による中隊編成後、

災害現場には益城西原消防署員が同乗し、活動が行なわれた。

緊急消防援助隊は、当署救急隊の疲労ピーク時に3隊編成で益城町及び西原 村の避難所の救急事案に対応していただいた。4月 19 日 22 時から 21 日 20 時 まで、当署の隊員同乗で対応することにより救急隊の負担軽減が図られた。活 動いただいた緊急消防援助隊に感謝する。

このたびの「熊本地震」は我々にとって想定外「まさか」であったが、専門 家が言うには想定の範囲内ということであり、いかに情報が浸透していなかっ たかを感じさせられる。

情報化社会の現代において、必要不可欠な情報をいかに正しく伝えるかが今 後の検討課題であるように思料する。

消防の活動においては、今回初めての「受援」を経験し、冒頭にも述べたが 多くの機関の応援を受け感謝する。受援側としては、コーディネートに課題が あり、計画の見直しの必要性を痛感させられた。今後は、専門のコーディネー ターの養成が必要である。