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L3,L4は,それぞれL論拠のうち「栄養(水)摂取」,「呼 吸」,「発生」,「成長」による論拠をさす。
まず,ここでのL論拠のほとんどはL3(発生)とL4(成 長)であり,L1(栄養摂取)とL2(呼吸)はわずかであっ た。このことは,「発生」と「成長」が植物を生物と見な す 上 で の 有 力 な 手 が か り で あ る こ と を 示 す も の と 考 え ら れる。また,ある段階で上記のいずれかのL論拠が用い られると,その後はいずれかのL論拠が用いられる傾向 があるが,YLからYへと一時逆戻りする子どもが3名 見られ(被験者番号14,31,39),YからN(?を含む)
への変化も3名見られた(被験者番号11,14,22)。この ことからLY判断へと移行する際に約1/4の者(のべ6/26 名)において一時的な逆戻りや揺れが生じていることが わかる。
なお,エダマメで[N(?)→YL]または[Y→YL]
型の変化を示した者26名のうち,ヒマワリ,草,木でも [N(?)→YL]または[Y→YL]型の変化を示した者 はそれぞれ12名(46.1%),5名(19.2%),10名(38.5%)
名であった。また,逆に見て,ヒマワリ,草,木で[N (?)→YL]または[Y→YL]型の変化を示した者の うちエダマメで同様の型の変化を示した者は,それぞれ 12/15名(80.0%),5/7名(71.4%),10/15名(66.7%)
であり,これら3つの平均は73.0%(27/37名)であった。
これらの結果は,エダマメでYL判断への変化が生じて も必ずしも他の植物でそうした変化が生じるとは限らな いが,他の植物でYL判断への移行が生じた場合の約3/4 のケースではエダマメでも同様な変化が起こり,それが
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注.YL,Y,N(?)はTable6と同じ。数字は人数。
46
全 体 2 0 1 9 1 0 7 7
幼児における植物の成長プロセスと生命に関する認識の変化 203
他の植物の生命認識の判断に影響したことを示唆してい る。
Table9は,エダマメ,ヒマワリ,草,木についてのY L判断への変化の時期を示したものである。根と双葉の 段階を成長プロセスの前半部とし,茎葉,花,事後(実)
を後半部とすると,まず,4つの植物を合計した[N(?)
→YL]型において前半部(23名)と後半部(7名)と の間に有意差が見られた(x2(1,N=30)=7.50,P〈、01)。
また,エダマメの[N(?)→YL]型において前半部(11 名)と後半部(2名)との間に有意差が認められた(x2 (1,N=13)=4.92,p〈.05)が,他の植物については有 意差はなかった。これらの結果およびTable8の個人別の 変化の結果から,根と双葉の観察後にエダマメについて [N(?)→YL]型の判断の変化が生じやすい傾向がある といえる。
考 察
本研究の目的は,幼稚園でのエダマメ栽培の経験が幼 児の「植物の成長プロセスの認識」と「植物の生命認識」
にどのような影響をもたらすのかを検討することであっ た。この目的についての考察に入る前に,エダマメにつ いて子どもたちがどのような経験をもち,幼稚園でのエ ダマメ栽培にどのような意識でかかわったのかを大まか に見ておくことにしようと思う。
まず,調査I−aの結果によって示されたように,エ ダマメ栽培にかかわった幼児の約9割はエダマメを食べ た経験はあったが,エダマメが畑で作られることを知っ ている者は全体の3割だけで,それを実際に見たことが あるのは全体の約1/5にすぎなかった。こうした幼児た ちに対して,幼稚園において5月の畑作りから始まって,
種まき,根,発芽,双葉の観察,植え替え,葉茎の観察,
草取り,雷と花,結実の観察,そしてエダマメの収穫に 至るまでの約3か月にわたる保育実践が展開され,それ
と並行して4種類の面接調査が実施された。
調査I−bの結果からわかるように,栽培前の子ども たちの楽しみは種をまくことや育てること,世話をする こと,そしてエダマメが成長することであるが,実際やっ てみて楽しかったことは,水をやる,草を取るといった 具体的な作業やエダマメの成長観察・測定であり,それ らのうちいくつかは子どもにとってはそのまま大変なこ ととしても感じられたようである。また,エダマメの実 がなったことも楽しかったことの中に多く入っている。
さらに,気をつけることして,種のまき方や植え方,水 やりなどの栽培技術に関することだけでなく,種や芽,
葉を踏まない,抜かない,倒さないといったことも多く 挙げられていた。
さて,こうしたエダマメの栽培経験は,幼児の「エダ マメの成長のプロセスの認識」にどのような影響を及ぼ
したのだろうか。まず,エダマメ栽培前における幼児の この認識を見てみると,エダマメの成長プロセスを1〜
3つの成長段階(要素)によって表現する者が9割近く を占め,根と雷や花の成長段階があまり描かれず,雷・
花一実の系列が少なく,棒状の茎を描く者が2割近く見 られた。
こうした傾向は,中間調査(Ⅳ−aとⅣ−b)の結果 にもそのまま現れている。たとえば,35名の子どもが根 の発生に気づいても,それが何かわからなかったり(20 名),芽や葉,木と言ったりする子どももいて(14名),
それを根と言ったのは1名だけであった。また,同じく 35名の幼児が雷を発見しても雷とわかったのは8名にす ぎなかった。さらに,次の成長の予測でも,根や双葉,
または雷から直接エダマメの実を予想する子どもが多く,
次の段階を正しく予想する者は少なかった。これらの結 果は,幼児にとってエダマメの成長プロセスの個々の段 階,とくに花の段階を表象することがむずかしいことを 示していると思われる。
栽培経験後の子どもの絵を見てみると,まず,全体と して子どもの描く要素数が増加した。その中でも葉と花 を描く者がいずれも6割以上も増加し,根と善を描く者 もそれぞれ約3割,約2割多くなった。さらに,表現様 式について見ると,事前では葉や花または実だけ描く単 純な局部的表現が約3/4を占め,数多くの葉とともに雷・
花や実を描く複雑な表現をする幼児は2名だけであった (残りはその中間型であった)が,事後になると複雑な表 現の絵を描く幼児は約半数にまで増加し,単純な表現は 全体のl/4以下に減少した。
以上のように,子どもが描いたエダマメの成長段階(要 素)の数にも,またそれぞれの成長段階についての描画 の表現様式にも,事前から事後にかけて上記のような変 化が見られたことから,幼児の「エダマメの成長プロセ スの認識」に対して,とりわけ葉と花の成長段階を表象 することに対してエダマメ栽培の経験がかなりの効果を もったと考えられる。
次に,エダマメの栽培経験がエダマメやその他の植物
(ヒマワリ,草,木)についての「生命認識」にどのよう な影響を与えたのかを考察することにしたい。本研究で は,YL判断,つまり栄養摂取や呼吸などの物質交代と 発 生 ・ 成 長 ・ 死 の 論 拠 に 基 づ き 植 物 が 生 き て い る と す る 判断に注目した。Table5とTable7に示すように,エダ マメ,ヒマワリ,草,木についてのYL判断者数は,事 前ではそれぞれ7名,12名,8名,13名であったものが,
事後では32名,24名,13名,24名に増加しており,エダ マ メ だ け で な く ( 草 を 除 い て ) ヒ マ ワ リ と 木 に つ い て も YL判断をする子どもが増えていることが明らかになっ た。ただし,事前,事後いずれにおいても,非L論拠(動 く,揺れる,土に埋まっている,目・顔がある,など)
204 発 達 心 理 学 研 究 第 8 巻 第 3 号
によってY判断をする者が相当数いるので,幼児たちが 必ずしも生命やその活動にかかわる手がかりによって植 物が生きていると考えているわけではないことにも注意
しなければならない。
YL判断への変化には,N(?を含む)判断からYL 判断への移行と,(非L論拠による)Y判断からYL判断 への移行の2種類があるが,Table7に示すように,前者 のケースは,エダマメ,ヒマワリ,草,木について13名,
7名,4名,6名であり,後者のケースは,13名,8名,
3名,9名であった。これらを合計すると,(59名中の)
26名(約44%),15名(約25%),7名(約12%),15名(約 25%)となる。
そこで次に,上記のようなYL判断への変化がエダマ メの成長のどの段階の観察後に起こったのか,が問題と なる。まず,エダマメについて見ると,Table9に示すよ うに,栽培経験後にYL判断をするようになった子ども 26名のうち10名については根の観察後に,8名について は双葉の観察後にこうした判断の変化が起こっている。
そのうちとくに[N(?)→YL]型の変化を示した子ど も13名について見ると,このうち11名(約85%)が根ま たは双葉の観察後にYL判断へと移行している。そうし た移行のいわば契機となったL論拠とは,Table8に示す ように,そのほとんどが「発生」(根や芽が出てくるから,
など)と「成長」(伸びるから,大きくなるから)であっ た。ただし,エダマメ以外の3つの植物については,根 と双葉という初期の段階にYL判断への変化がとくに多 く見られるという傾向は認められなかった。
上述のように,エダマメの栽培経験をした幼児59名の うち26名が「発生」や「成長」を手がかりとしてエダマ メは生きていると判断するようになったことから,エダ マメの栽培経験が4割強の子どもの「エダマメの生命認 識」の変化を促したことがわかる。とりわけ,エダマメ は生きていないと考えていた子どもに対して,エダマメ の成長のとくに比較的初期の段階,つまり根や双葉の発 生・成長の観察がインパクトを与えたように思われる。
なお,こうした「エダマメの生命認識」の成立にあたっ ては,Table8に示すように,ほとんどの子どもの場合いっ た ん Y L 判 断 が 形 成 さ れ る と , そ れ 以 後 は 安 定 ・ 持 続 す るが,その過程で「YL判断からY判断へ」あるいは「Y 判断からN(?)判断へ」といった一時的な逆戻りや揺れ が約1/4の子どもに見られたことを記しておきたい。ま た,保育実践の中ではエダマメや他の植物が生きている との直接の教示・説明はおこなわなかったが,もし積極 的な教示をおこなえばもっと多くの幼児の「植物の生命 認 識 」 の 変 化 を 引 き 起 こ す こ と が で き た か も し れ な い 。 ところで,「植物の生命認識」の変化は,エダマメ栽培 の期間中にエダマメだけでなく他の植物,とくにヒマワ リと木についても生じた。幼稚園内にヒマワリや木,草
があったが,エダマメと同様,保育において幼児に対し て生きているかどうかの教示はおこなわなかった。これ については,もちろん家庭で親やきょうだいなどが教示 や示唆をしたなどの可能性を完全に排除することはでき ないが,ヒマワリ,草,木で変化の生じている子どもの うち約3/4はエダマメでもそうした変化が生じているこ と,さらにエダマメの栽培中に自発的にヒマワリや他の 花類の成長に目を向ける子どもが数名観察されたことな どを考えると,これらの「生命認識」の変化の多くは,
エダマメの栽培経験による直接的な効果とはいえないま でも,それが契機となって生じた可能性が大きいのでは ないかと推測される。
なお,草についてヒマワリや木のような変化が生じな かったことについては,子どもがヒマワリや木に比べて 草の発生や成長あるいは花に気づきにくいことが考えら れる。しかし,幼児が草とヒマワリや木とをどのように 区別して見ているかは今後の課題である。
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